北穂高岳へのアプローチ
10月初旬
一週間前、悪天候により撤退した北穂高のリベンジに行ってきました。
撤退はしましたが、先週の涸沢でのテント泊はとても勉強になりました。
・北穂高岳 登頂のための基本の「き」
槍ヶ岳、西穂高の次にチャレンジするのは北穂高岳です。
先週の涸沢テン泊~北穂高岳撤退の反省点から、3つの作戦を立てました。
テント泊(小屋泊)登山の場合、全日程、天気が良いということはなかなか無く、長期縦走となると尚更です。
今後、読売新道や、裏銀座の三俣山荘~烏帽子小屋間などのロングルートにチャレンジするにあたって、悪天候時に無理して登る(下る)のではなく、好天のタイミングで、いかに早く先に進むかということが、安全に登山するポイントになるのではないでしょうか。
そこで、作戦を3つ立ててみました。
・北穂高 登頂作戦 その①
当然ですが、筋力と心肺機能です。
先週下山したその日から、トレーニングを開始しました。
まずは筋力アップのために、毎日スクワットとランジ。
これは一週間で筋力アップするというのではなく、筋力が落ちないように維持する意味もあります。
そして、心肺機能の強化には、タバタプロトコルを毎日行いました。
私の場合は、しゃがんで両腕を床に着く→そのまま両足を後ろに伸ばす(腕立て伏せの格好)→両足を戻す→両腕を上げてジャンプ
これを20秒やって10秒休むを8セット繰り返します。
取り組んで5日目には、息も上がらなくなり、身体が軽く感じるようになりました。
たった一週間で改善するのはなかなか難しいかもしれませんが、日頃からできる範囲で続けていこうと思います。
・北穂高 登頂作戦 その②
前回バテバテだったのは、筋力と心肺機能の問題が一番大きい。
ペースを落とせば良いのでしょうけど、天気の都合によっては、初日に北穂にアタックすることも考慮すると、スピードが大事になってきます。
一週間のトレーニングだけでは効果がどの程度出るのか怪しい為、荷物の軽量化もしました。
涸沢ヒュッテはテン泊でも夕食が頼めますし、お弁当も予約できます。
売店も充実しているため、食事関係は行動食を除き、全て現地調達にしました。
また、いつも歩荷トレの為にザックに詰めていた大量のお菓子や、余分な着替え、タオルはもちろん、折りたたみ式の椅子や、無駄に小分けにしていたスタッフバッグを廃止する等、「塵も積もれば・・・」の装備を減らしました。
基本的な装備はこちらで解説しています↓YouTubeにもアップしました。
・北穂高 登頂作戦 その③
その②でも触れたように、どうなるか分からない天気の合間を縫って安全に登頂するためには、晴れ間のチャンスが大事になってきます。
初日に天候が良ければ、涸沢にテントを設営し、そのままピークアタックする予定を立てました。
雨なら翌日に登ればいいし、いずれにしてもチャンスは多いに越したことはありません。
涸沢ヒュッテから北穂山頂まで往復6時間・・・私の脚だと頑張って5時間+山頂を満喫したら5時間半。
逆算すると涸沢のテン場に10時半には到着したいところです。
ルート上のどの区間ならタイムを巻けるのか。
まず上高地~横尾の平坦な道なら、危険もなくスピードアップできそうです。
そのために編み出した作戦は、休憩を取らないことです。
休憩をすると、せっかく出たアルブミンがゼロになってしまい、逆にダルくなってしまいます。
横尾~涸沢も同じく、休憩は取りません。
そして、定期的にアミノ酸ゼリーと大福でエネルギーを補給する作戦です。
さあ、結果やいかに。
・涸沢カールへのアプローチの様子
深夜0時
さわんど駐車場到着。
明日に備え、毛布にくるまってしっかり仮眠します。
いつも通り、5時30分 上高地バスターミナル出発です。
ヘッデンを付けたら・・・
北穂高 いざゆかん!!
最初の15分、身体が温まるまでは我慢のゆっくりペースです。
だんだん明るくなってきました。
天気は曇りかなぁ。
明神館
作戦通りに休憩はせずパスします。
途中からパラパラと雨が降ってきましたが、樹林帯ですのでほとんど濡れません。
徳澤園で雨が強くなってきましたので、シェルを羽織ります。
すぐに出発。
7:30 横尾到着。
かなりハイペースでしたが2時間で到着しました!
作戦に従い、座らず立ったまま、コーラと大福、アミノ酸ゼリーを補給します。
すると・・・!!!
涸沢ヒュッテの社長、山口さんを発見!
北アルプス南部地区山岳遭難救助隊長の歩き方ってどんななんだろう?
どんなスピードで登るのかなぁ?
ワクワクで胸が一杯です。
涸沢に帰るようでしたので、すぐにザックを背負い、着いていかせてもらいました。
山口さんの歩き方は・・・普通です。
それでもめちゃくちゃ早い!どんな道でもペースが変わりません!
しかも、登山道の石を足でどかしたり、枝をどかしたり、整備しながら進んでいきます。
勾配のないところはなんとか着いていけましたが、すこしでも勾配になると、キツイ!
それでも社長は涼しい顔で、おしゃべりしながら全くスピードが落ちません。
それもそのはず。後で知ったのですが、社長さんは歩荷時代に涸沢から横尾までを往復4時間で移動していたそうです。
私は、ハンガーノックにならないギリギリのスピードで、呼吸方を意識したり、足がパンプしない限界のスピードでなんとか食らいつきます。
本谷橋
横尾から40分でした。
沢の水で顔を洗います。
するとすぐに社長が出発してしまいました。
すぐに後を追いますが、少しづつ離されていきます。
絶対に離れるもんか!と、気合で登ります。
呼吸を意識して、鼻で2回吸ってから「ふぅ~」とローソクを消すように吐く。
ランニングと同じで、これが一番酸素を多く取り込めるようです。
くねくねの登山道で、先を行く社長の姿が見え隠れします。
真っ直ぐに見通せるようになると先の方に社長の姿が!
例の「落石注意」のガレ場の整備をしていました。
本当に凄い!
スーパーマンみたい!
「危ないから止まらいで通ってね~。○印のところね。」と優しくみんなに声をかけていました。
ここでなんとか追い抜き逃げ切る作戦に切り替え、どんどん進みます。
ガンバガンバ!
ヒュッテの吹流しが見え、ヒュッテへの分岐を左に進んだころ、ビニール傘をさした社長に抜かれました。
「早いねぇ~」と涼しい顔で通り過ぎていきます。
それでもガンガン進みます。
スピードを緩めることなく涸沢ヒュッテに到着!
時計を見ると、9:54。
上高地から4時間30分を切ることができました。
※注意
スピードを意識して登りましたが、自分の体力や技術に合わせたペースで登らないと、バテたり、焦りで事故につながりますので、十分気をつけた方が良いですね。
長野県警によりますと、今年頭にも横尾本谷で60代の女性が疲労により行動不能になり救助要請。
翌日には30代女性が同じルート間で下山中に転倒、負傷し救助要請となりました。
ヒュッテ本館に入ると、玄関で靴を脱いでいる社長さんの姿が。
かっこいい♪
忙しいのに終始笑顔で話をしてもらえて、本当に嬉しかったです。
テン場に着くと雨が強くなってきました。
急いでテントを設営しましたが、カッパを着なかったせいで、身体が冷えてしまいました。
汗をかいていても、行動しないときや、雨が降ってきたらかならずカッパを着ないと、低体温症の危険がありますね。反省です。
時間的にも体力的にも十分北穂高にアタックできたのですが、あいにくの天気ですので、明日アタックすることにしました。
濡れた服を着替え、本館受付に夕食と朝のお弁当を注文し、またテントに戻ります。
風がだいぶ強くなってきましたので、テントのガイラインを貼り直します。
夕食は本館食堂で。
メニューも豪華!
小屋泊の人達はいつもこんなに美味しい食事だったのか!?とびっくりです。
配膳やご飯のおかわりは、山岳警備隊の人達も手伝っています。
なんだか恐縮です。
お弁当を受け取ったら歯磨きをして、明日に備えてシュラフに潜り込みます。
外の気温は10・8℃。
ナンガのダウンパンツ
パタゴニアのナノパフジャケット
モンベルのバロウバッグ#3
で寒くなく快適でした。
が・・・
風が大変なことに!
『どっどど どどうど どどう青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ』
と、宮沢賢治の風の又三郎の一節を思い出します。
風はどんどん強くなり、一晩中ゴーゴーと吹き荒れ、バコーンとテントを歪め、ポールが折れるんじゃないかという程の強風です。
テントの四隅を手足で抑え、それにも疲れ果て諦めてウトウトしたころ朝になりました。
二日目につづく。