妙義山 登山の難易度
11月下旬、アルプスの峰々は徐々に積雪し、登山には難しい時期です。
こんな時期は、あまり積雪しない山で、いろいろ訓練するチャンスですね。
ということで、今回は妙義山に行ってきました。
・妙義山の難易度
妙義山は、日本三大奇景の一つで、ギザギザの奇岩が立ち並ぶ山容の、まるでフィッツロイのような佇まいに、多くの登山者が一目置く山ではないでしょうか。
「妙義山」という山は、単独では存在していなくて、相馬岳や金洞山など、いくつものピークが連なっている総称です。標高は、主峰の相馬岳でも1,103メートルと低いですが、連続する鎖場に、デイサイド岩や安山岩のいやらしいルートが続く上級者向けのコースがあります。
この表妙義の縦走路では、毎年事故が起きているようで、山と高原地図の難易度分類では、初級、中級、上級の分類の中で、分類外の最上級になっています。地図を見るとルートは破線になっています。
明治時代にはウォルター・ウエストンが妙義山で日本人に岩場でのロープワークを教えた歴史があり、日本近代登山発祥の山とされています。
・妙義山 登山コース
妙義山は初心者向けのハイキングコース「中間道コース」と、上級者向けの「表妙義縦走コース」があります。
表妙義コースは、駐車場に戻ってくるならば、最短コースは妙義神社から相馬岳を踏み、バラ尾根を下って中間道から戻る馬蹄形ルートが便利だと思います。
※現在は中間道のタルワキ沢から第二見晴らしの間で落石による登山道の崩落で通行止めになっています。最新の登山情報を確認してから出発してください。
魅力的なのは、妙義神社~相馬岳~金洞山~中之岳神社まで縦走し、タクシーで妙義神社の駐車場に戻るのがおすすめです。
色々分岐したルートがあるので、道迷いに注意し、各ルートで落石やハシゴの修理などで時々通行止めがあるそうですので、登山前に最新情報を入手すると良いと思います。
今回は、「道の駅みょうぎ」で前夜泊し、妙義神社からスタートします。
相馬岳は踏まずに、各所でロープワークの訓練をしながら登り、相馬岳手前からタルワキ沢を下り、満月に照らされた中間道を夜間歩行しながら中之岳神社にゴールして、タクシーで駐車場に戻る予定です。
※中間道も立派な登山道です。ナイトハイクは非推奨です!!
・妙義山 駐車場
駐車場は妙義神社側の「道の駅みょうぎ」に登山者用の無料駐車場があります。
24時間入出場でき、トイレも自販機もあります。
中之岳神社側にも登山者用駐車場があります。トイレも自販機もあり、400台駐車できます。
・表妙義縦走コース コースタイム
妙義神社(60分)→ 辻(40分)→見晴(80分)→天狗岳(40分)→天狗岳(40分)→相馬岳(85分)→ホッキリ(65分)→鷹戻しの頭(65分)→東岳(30分)→中ノ岳(30分)→石門分岐(25分)→石門入口(35分)→ 大人場(40分)→ 妙義神社
・登山装備
今回は、ロープワークを練習しますので、いつもの装備に加え、
30メートルのロープ(シングル)、ハーネス、環付きビナ・120cmハーネス3セット、確保器を使います。
また、ナイトハイクも予定にしていますので、パワーのあるヘッデン、予備電池、食料、ビレイヤーパーカー(ダウン)も持参しました。
もちろん、ツェルト、無線、救急セットなど、通常の安全装備も忘れません。
・表妙義縦走コースの詳細
車中泊は、下界の冬の服装に毛布を被っただけで快適でした。
ゆっくり起床し、8時に出発します。
今回はスペシャルゲストをお呼びしました。
ミスター妙義(妙技じゃないよ)!の異名を持ち、ジャンダルムと剱岳をご一緒させていただいたGABOさんファミリーに来てもらいました。
GABOパパさんにロープワークを教えてもらいながら、ママさんのザックに入っているであろうお菓子にハイエナのように群がり、疲れたら荷物をシェルパ君に持ってもらおうという魂胆です(笑)
登攀具は確保器とスリングだけで良いのですが、せっかく行程が短いので、私は多めにぶら下げて負荷をかけます。
<妙技神社から大の字>
準備を整えたら、妙義山、いざゆかん!
駐車場から妙義神社はすぐです。
いきなり階段地獄がお出迎え!
観光で来ていたちびっ子達とデッドヒートを繰り広げ、なんとか本殿に。
今日の安全を祈願して進みます。
登山道入口。
ここで登山届けを提出します。
ここからいきなり本気の登山道になります。
落ち葉が積もっていて、下の岩が見なかったり、片側が切れ落ちていたり。
晩秋の乾いた空気に、落ち葉を踏む音と、ガチャの金属音が吸い込まれていきます。
葉っぱが落ちかけた樹々の間から、陽光が幾筋も差し込み、歩く速度で流れていきます。
すぐにちょいちょい鎖が登場します。
このあたりはまだ鎖を使わなくても登れます。
虫もいないし、涼しいのでこの季節は登りやすいですね。
また鎖。
アルブミンが出始めた頃に大の字の直下に到着です。
神社からゆっくり登って30分ほど。
ここまでは観光のお客さんもちらほら見かけます。
ほぼ垂直の壁。ステップがしっかりありますので安心です。
鎖を登りきると、「大」の看板のところに出ます。
この後、秘密のルートで支点を取り付け、懸垂で下ります。
※指導者のもと行っています。一般登山者もいますので、細かな場所は割愛させていただきます。
<奥の院>
ここでお菓子で休憩をしたら、さらに進みます。
この先から上級者コースとなります。
よじ登ったり、
プッシュしたり、
奥の院はこの洞窟。
鉄のハシゴは棒が細く、溶接部分の腐食がありました。
おまけに固定されていませんので要注意です。
登ってみると、お地蔵さんがいました。
洞窟の天井には穴が空いていて、柔らかい光の筋が差し込んでいます。
蒼白く浮かび上がる空間はどこか神秘的です。
<奥の院から大のぞきまで>
すぐに四連30メートルの鎖が。
鎖に頼り過ぎると腕がパンプして後々困りますので、岩を上手く使って登ります。
ホールドはたくさんありますが、手足の短さに加え、装備の重さが堪えます。
思えば、ジャンダルムも剱も、危険ヶ所は軽いアタックザックでしたので、これはなかなか登りにくいですね。
パパさんはガシガシ正対でスタティックに登っていきます。
シェルパ君はまるでエレベーターのようにするりと登ります。
ママさんも綺麗なムーブですたすた登っていきます。
それに比べて私は絶賛増量中の体重。最近はジムも行かなくなってしまったし、ランニングもやめてしまったので、こういうところで差が出ますね(懺)
トラバース。
また鎖。
ここで稜線に飛び出した後は、アップダウンが続きます。
溶岩特有のボコボコなのにスベスベの岩盤を登る。
見晴らしで休憩です。
丁須ノ頭。そのうちあそこも登らなきゃ!
さぁ、さらに進みます。
岩の割れ目は細い人以外は厳しいかも。。。
私が広げておきました(笑)
進むとすぐに「ビビリ岩」です。
個人的にはここが一番恐かった。
一枚岩の急斜面をトラバースします。
ホールドもステップもないので、鎖をしっかり掴んで、ベタ足で進みます。
ママは楽勝。
背びれ岩。
こういうナイフリッジのところはやっぱり楽しいですね。
振り返るとなかなかの高度感です。でも気持ちいい!
・・・と思ったら、鎖の下り。
足場が見えないときは、思い切って壁から身体を離すと見えます。
ほっとしたら「大のぞき」に到着です。
奥の院から40分ほど。
ここは少しスペースがあるので、ここでゆっくり昼食にします。
風が吹くと寒いのでダウンを羽織ります。
コンビニで調達した海苔巻き、いなり寿司、バナナ、ママさんが淹れてくれたコーヒーとたくさんのお菓子。
山専ボトルは便利ですね。
食べ過ぎ!
行動中にこんなにのんびりワイワイごはんを食べたことが無かったので、山の楽しみ方が増えたようです。
さて、そろそろ良い時間になってきましたので、出発します。
〈大のぞき~タルワキ沢のコル〉
キレットです。
ここが一番危険かもしれません。
10メートル、10メートル、30メートルの長い長い鎖場。
滑り台のような一枚岩です。
慎重に降りれば問題ありません。
この先でもう一度懸垂。
他の登山者の迷惑にならないようにタイミングを見てクライムダウン!
今まではルベルソ4でやっていたので、エイト環の感覚に慣れませんが、なんとかクリア。
※指導者のもと行っています。ブログという性質上、詳細な場所は割愛させていただきます。
天狗岩かな?
タルワキ沢のコルに到着しました。
〈タルワキ沢のコルから中間道出会まで〉
今回は、中間道から妙義神社方面が落石による崩落で通行止めの為か、あまり人が降りた形跡がありません。
はぁ~。また・・・。
落ち葉の量が多くて歩きにくい。
だんだんと陽が落ちて、沢筋に夕闇が訪れようとしています。
中間道の出会まで45分ほどのはずですが、落ち葉で滑るので倍近く時間がかかってしまいますが、焦らずゆっくり。
休憩して秘蔵のスニッカーズを食べます。
ママさんからもらったレモンの皮の砂糖漬けでクエン酸と糖分を補給します。
こんなときにコーラがあれば鬼に金棒なのにっ!(悔)
中間道に到着です。暗いので写真がブレブレですいません。
・夜間登山の注意点
まず、夜間登山は非推奨です(しつこくてすいません)。
最近はナイトハイクというおしゃれな言葉になっていますが、私の場合は夜歩くのが目的ではなく、夜明け前から出発して行動することがありますので、そのための訓練です。
山を始めた頃、谷川岳の西黒尾根で時間がかかりすぎ、下山が夜になってしまったことがありました。想定していない夜間行動で、とても恐い思いをしました。
ベテランのおじさまから、「ヘッデンを点けて、とにかくゆっくり行けば大丈夫だよ」とアドバイスをもらって少し安心したのを覚えています。
逆に新穂高から槍ヶ岳を日帰りしたときは、夜中の2時に出発しましたが、予定していた夜間行動でしたので、落ち着いて行動できました。
それでも視界はヘッデンを点けても昼間の10分の1程度です。
知っているルートでも全く違って見えます。
夜になったらビバークして寝てしまうのが正解です。
一応思いつくままに注意点を羅列すると、
・足下だけではなく、こまめに周囲を見る。目印をロストしないようにする。
・聴力も活用して、沢の音、滝の音で地図と整合させる。
・夜間はタイムを意識しない。コースタイムは大幅にズレます。焦りに繋がらないよう。
・ヘルメットは絶対。頭上の枝、岩にけっこうぶつかります。
・藪、倒木に出たら引き返す。恐らく分岐を見逃している。
・木の根は晴れていても夜になると濡れてくる。
・水分を補給したくても沢には近づかない。落ちます。
・なるべくポールを使う。転倒を防ぎやすくます。
・夜間の登山道の蜘蛛の横糸は天気が良い。
・月の外側に輪っかがあれば天気が崩れる。
・虫が増えたら登山口が近い。
・風が強まれば、尾根筋が近い。
・電池の予備はもちろん、ヘッデンの予備を用意する。
電池の残量も出発前に要チェック!
残量チェッカーがおすすめです。
・ギブアップになる前に寝てしまう。
〈タルワキ沢出会から第四石門〉
ここからはハイキングコースですが、いよいよナイトハイクの始まりです。
ママさんは手慣れた様子でポールを準備しています。さすが四次元ザック!
すると、登りの時に出会ったお兄さんが、リンゴをかじりながら現れました。
地元の方だそうで、毎月妙義に登っているそうです。
この時間帯に人がいることでちょっと安心感を覚えます。
私のヘッデンは、夜明け前からの短時間の行動時はペツルのティカを使っています。
もっとパワーのあるものもありますが、知っているルートや、迷いにくいルートでは十分な明るさに感じます。
小屋泊やテント場で行動する程度でしたらもっと弱い光量のものでも十分だと思います。
※ナイトハイクは十分な経験、知識と装備が必要です。簡単なコースでも何か起きれば大きな事故になりますので、非推奨です。
今、陽が沈もうとしている登山道をヘッデンの列が進みます。
麓の人が見たら怪奇現象だろうな。
本読みの僧
片側が切れ落ちた登山道は、落ち葉で隠れているので踏み抜かないよう要注意です。
先頭のシェルパ君が落ち葉をラッセルしてルートを探し、ママさんが危険箇所を後続に伝えます。
ここまでパーティー(主にポンコツな私)を引っ張ってきたパパさんは、疲れているはずなのに一歩一歩が力強い。
まるで本当の自分のお父さんみたいで、その姿に勇気付けられます。
それに比べ、「降りたらココアを飲んでアメリカンドック食べたいな~」とか「ファイントラックの長袖ってプロっぽくてかっこよくね?」とか呑気な私とパートナー。
しまいには「ビバークも楽しそうだよね~♪」とか。
GABOさんファミリーは怒りを通り越して呆れていたに違いないですね。真面目にやらなければ。(懺)
ふと見上げると満月が樹林帯を優しく照らしています。
麓の街の灯りもこちらに微笑みかけているようです。
さすがに足がきつくなってきました。
膝の痛みが。
こんなときは貧乏ゆすりが一番です。
こうすることで血流が良くなり、むくみが取れて、体温も上がってきます。
よかったらお試しを。
ここで、今年腰を骨折したパパさんを気遣い、シェルパ君がパパさんのザックまで担いでくれました。
自分のザックにパパさんのザックをくくり付けます。
サイズは小さいですが、合わせて約90リットル!
元々大量の水を担いでいたのに、おまけに登攀具が入っているので、重さは歩荷レベルです。
表情ひとつ変えずに、しかも一番ペースが速い!
暗闇にそびえる第四石門。
ヘッデンに照らされると、地獄の入口のように口を開けた蒼白い岩肌が浮かび上がります。
神秘的でかっこいい。
ここまで来ればあと少し。
大砲岩の方も楽しそうですが、夜間なので、安全なルートで進みます。
ママさんの四次元ザックからまたまたお菓子が(笑)
一体どれだけ!?
ありがたくドーピングさせてもらいます。
〈第四石門から中之岳神社まで〉
時々現れる「あと~km」の看板に励まされます。
しめ縄と紙垂が現れたらもう少し。
疲れが限界になる手前でなんとか中之岳神社。
安全登山のお礼をして降ります。
駐車場に到着し、ママさんが買ってくれた温かい飲み物でカンパーイ!
・まとめ
表妙義縦走ルートは、難易度だけで言えば本当に上級者コースだと思います。
アプローチも容易で、行動時間も短いですが、ポイントごとの危険度はかなり高いと感じました。
通常、鎖場と言っても、使わなくても登れてしまうのですが、鎖に頼る場面が多かったです。
とにかく鎖場だらけ。その分腕がパンプすると危険なので、しっかり足が使えるように登る必要があります。
ジャンダルムや剱岳に登る前に、ここで慣らしておくのも良いと思います。
今回は訓練でしたので、相馬岳はやりませんでしたが、相馬岳から金洞山、できれば星穴岳もやってみたいなと思いました。
アルプスのような絶景はありませんが、この西上州一帯の奇岩に囲まれた山々の魅力は他では味わえないと思います。
訓練としてはとても勉強になりましたし、何より楽しい山でした。
妙義山、また来るよ~。
※ロープワーク、夜間登山は指導者のもと、訓練として実施したものですので、通常は大変危険です。この記事のロープワーク、夜間行動の箇所は、くれぐれも参考にしないようお願い致します。