裏銀座をテント泊で縦走~烏帽子岳(2581m)編
・裏銀座テント泊縦走の計画
北アルプスきってのハード縦走コースといえば、「裏銀座」ではないでしょうか?
何より、一日一日の行動時間の長さに自信が無く、これまで躊躇してきました。
それでも魅力は、槍穂の峰々を眺めながら稜線を歩き続けられることです。
今回は、高瀬ダムから入山し、烏帽子岳、水晶岳、黒部五郎岳、鷲羽岳などを縦走して、新穂高に下山するプランとしました。
・駐車場と下山後の問題
縦走の場合、マイカーでアクセスすると、馬蹄形縦走でない限り、どのように車を回収するかが問題となります。
裏銀座の場合は、南安タクシーというタクシー会社が車を預かり、下山口に回送してくれるサービスをしているそうです。
ただし、私の場合、悪天候なら数日間は停滞しますし、疲労の具合によっても日程を増やす可能性もありましたので、新穂高からはバス・電車・タクシーを乗り継いで、駐車した七倉山荘まで戻ることにしました。
詳細は最終日の記事に載せます。
・一日目【高瀬ダムから烏帽子岳へ】
8/10(土)
仕事を終え、8/9金曜深夜に登山口となる七倉山荘に到着し、仮眠をとります。
今日登る「ブナ立尾根」は日本三大急登に数えられています。しかも予定では5日に渡る縦走装備を担ぐので、睡眠はしっかりと。
七倉山荘から高瀬ダムまでのタクシーはマイカー規制のゲートが開く5時30分に合わせてからの運行で、目的の烏帽子小屋のテン場はスペースも狭いそうなので、そこそこハイペースで登る必要がありそうです。
また、運転でほとんど眠らずに登り始めるパートナーの体調も心配です。
もったいないですが前泊として高瀬ダムの橋を渡ったところにある濁沢キャンプ場で一泊刻むことも考えましたが、台風の進路が読めませんので、できるだけ先に進むべく、強行プランとなりました。
4時に起床し、タクシー乗り場に並びます。
上高地のようにじゃんじゃんタクシーが回されるのではなく、限られた台数で高瀬ダムをピストンしています。
一番最初に乗るのは、七倉山荘に泊まったお客さんから。
ですので一番にタクシーに乗りたい場合は、前日に新穂高に車を停め、バス・電車・タクシーで七倉山荘まで来て泊まるプランも良いと思います。
二巡目でタクシーに乗り込み出発します。
<ブナ立尾根から烏帽子小屋>
タクシーを降りたところが、高瀬ダム。
烏帽子岳、いざゆかん!!
ここから、トンネルを抜け、
やけに揺れるつり橋をジャックスパロウのように渡り、
傾いている橋を越え、
濁沢のキャンプ場を抜けると登山口があります。
案内の標識の上に「12」と書かれた札が立っています。
ブナ立尾根は12番から始まり、烏帽子小屋までカウントダウンしてくれますので、
一応の目安になると思います。
岳沢パノラマも、同じく番号が振ってあったのを思い出します。
ここから6時間・・・。
日本三大急登は、これまで、「谷川岳の西黒尾根」
「燕岳の合戦尾根」
と登ってきました。
どちらもかなり疲れたのを思い出します。
暑い!
顔から汗がボタボタと垂れ、ズボンの中の足にも汗が流れるのがわかります。
とにかく暑さとの闘いです。
最初は2番号ごとに休憩をとりました。
水分補給をしないと倒れそうです。
それでも12番から6番までは、次々と番号が現れ、一区間のタイムが15分~30分といったところ。
傾斜はキツイですが、危険個所はありません。
あれ?このペースなら以外とちょろいかも♪
なんて考えは甘かった。。。
6番を過ぎると、なかなか現れない次の番号。
とにかく暑い。
筋肉も心肺も余裕があるのに、暑さで動けなくなります。
「ふん~っ」とポールに頼って、一段一段登ります。
やっと現れた番号で、水分補給をして、気合を入れなおします。
「もしかしたら次の番号までは短いんじゃないかな?」
「みんなの疲労を考慮して、サービスで区間はだんだん短くなるんじゃないかな?」
・・・都合の良い希望が脳裏に過りますが、甘い甘い。
いつもは小屋泊装備の人にも負けないくらいのスピードで登れるのに、今日は全然ダメです。じゃんじゃん追い越されてしまいます。
そんなことをくりかえしてやっと1番!
ゴール!
小屋はどこじゃ~!?
と思ったら、ゴールは0番。もう一個あった。⤵
気を取りなおして、進みます。
1番と0番の間もやっぱり長く、朦朧としながら到着です。
「炭酸飲料はねぇがぁ~?」とまずは小屋でCCレモンを購入します。
<烏帽子小屋について>
烏帽子小屋は、昔ながらの趣きのある作り。
標高は2530mに位置します。
周辺の地面もきれいに整備されていて、とても過ごしやすそうです。
小屋の真ん前にはイワギキョウ?チシマギキョウ?が可憐に咲いていました。
左手は明日超える三ツ岳とその向こうに野口五郎岳が見えます。
遠い!今は考えたくない。
テント場は小屋からさらに数分下ったところに点在しています。
これはトイレの度(旅)に登ってくるのも大変そうだ。
狭い上に混雑しているので、譲り合いながら設営します。
さて設営したら、アタックザックを背負って烏帽子岳に向かいます。
<烏帽子小屋から烏帽子岳>
烏帽子小屋からは、森を抜けると、天空の稜線歩きとなります。
ハイマツの絨毯に引かれた白い登山道。
青空とのコントラストを追いながら進みます。
燕岳のような白い地面が特徴的です。
前烏帽子に着くと、本峰が出迎えます。
名前のとおり、烏帽子のように尖った岩峰が天空に聳えています。
この暑さで半分枯れてしまっていますが、過酷な環境で可憐に咲くコマクサに元気をもらいます。
直下からは鎖場となります。
ここを登った後、トラバースとなります。
クサリは使わなくても三点確保を意識していれば問題ありません。
トラバースも足場がしっかりあります。
最後だけ、岩壁を抱きかかえるようにクリアする箇所があるので、油断しないように。
登頂。
標高は2581m 。
ROCK&GREEN!
これぞ北アの雰囲気ですね。
明日向かう水晶岳が黒い羽根を広げているようです。
雪渓で有名な針ノ木岳も見えます。
山頂は狭いので、短時間でテン場に戻ります。
<昼食>
今回は毎日かなりの時間を歩きますので、荷物はできるだけ軽くしました。
したがって食事は小屋に頼れるところは奮発する予定です。
食事の注文ができる11時になったら、カレーを注文する予定でしたが、朝食用に買ったコンビニのおにぎりや海苔巻きが余っていましてので、それを平らげます。
軽量化したはずが、食料はいつも通り過剰に持ってきてしまい、反省です。
小屋でご褒美のCCレモンを買います。
さらにコーラも。
炭酸を満喫していたら、背後から声が。
振り返ると、一昨年、昨年と、ジャンダルム、剣岳の山行がご一緒だっらGABOさんファミリーの姿が!
三年連続で山でお会いできるなんて、凄い運命ですね。
GABOさんファミリーはいつもご馳走を担いでいるので、今回も軽量化に協力しなきゃ(涎)
<夕食>
夕食もコンビニで買った余りのサンドイッチで済ませます。
ちょっと物足りないなぁ、と思っていたら、GABO父さんから「お雑煮食べる?」とお誘いが♪
返事するより先に箸を持って突撃します。
鶏肉とほうれん草のシンプルなお雑煮に群がるハイエナのような私とパートナー。
パートナーはお母さんの作るお雑煮が大好物。お母さんを早くに亡くしたので、お母さんと同じ味付けに涙ぐんでいます。
明日は深夜2:00に出発します。
この山行で一番ハードなロングコースとなりますので、満点の星が黒い稜線を浮かび上がらせる頃、山と一緒に眠りにつきます。
・コースタイム
・高瀬ダム→烏帽子岳登山口・・・0:25
・登山口→烏帽子小屋・・・5:20
・烏帽子小屋→烏帽子岳・・・1:00
・烏帽子岳→烏帽子小屋・・・0:40
※休憩を含む
・まとめ
<暑さ>
とにかく暑さとの闘いでした。
したがって、水分補給がバテ防止のカギとなります。
こまめな水分補給と休憩が必要です。
塩分も汗と一緒に失いますので、塩タブレットも持っていきました。
<アミノ酸・クエン酸>
行動中にアミノ酸を補給し、就寝前にクエン酸を飲みました。
おかげで翌日は筋肉痛が全く現れませんでした。
<トレッキングポール>
それと、翌日以降も大活躍したのが、トレッキングポールです。
普段は使いませんが、今回は大活躍でした。
道中、カーボン製のポールが折れてしまった方を見かけました。
それくらい体重をかける場面が多くありました。
軽量化という意味では、ポールはレディースモデルがおすすめです。女性用でも、ある程度の身長まで対応していますし、男性でも十分です。高価なカーボンモデルも良いですが、アルミの女性モデルで少しでも軽量化するのもアリですね。
<ヘルメットは?>
他の山では、烏帽子岳直下のようなところでは、「ヘルメット推奨」といった看板を見かけるのですが、今回はありませんでした。
翌日以降も、落石の危険のある個所が多かったので、個人的には必要だと思いました。
無くてもなんとかなるかもしれませんし、逆に軽量化による素早い行動の方が安全面としてはメリットが大きいのか・・・。
ちょと結論が出ませんでした。
<アブ・ブヨ対策>
ブナ立は、アブに襲われるという情報が多いようですが、今回は大丈夫でした。
登る途中途中で、自作のハッカスプレーを身体に吹きかけました。
虫よけだけではなく、清涼感もあり、さらに汗臭さも消すことができたので、必須アイテムでした。
・裏銀座 縦走 二日目へつづく