週末が近づくにつれて、読みにくい梅雨の天気をチェックしています。頭の中は山のことばかりが山積しています(山だけに)。
さて、今日は常念岳をやろうと先々週から狙っていましたが、常念岳は天気の良いときに絶景を見たいと思うから、宝剣岳をやることに。
私なりの答えは、岩峰登山は曇りや悪天候でもテンションが上がるし、技術が身に付くと勝手に思っています。
あ、もちろん自分の身の丈に合った山に行きますが。
宝剣岳日帰り登山
2016年7月2日(土)
天気:曇り(ガス)、強風
ルート
千畳敷~乗越浄土~宝剣岳ピストン~伊那前岳ピストン~木曽駒ヶ岳~千畳敷
ここは何度来たことでしょう。
本当に大好きな中央アルプスの主峰♪
厳冬期も真夏も、どんな季節にきても暖かい表情で私を迎えてくれます。
特に積雪期のモルゲンロートの美しさは「生きてて良かった~」と思わせてくれます。
早速バスに並びます。
登山シーズン前ですので、まだ5時からの便はありません。
7時が始発でしたので、お隣に並んだおじさまと情報交換をしたり、うとうとしたり。
例によってなかなかの行列ができています。
千畳敷に到着!
ん!
あれ!?
外が真っ白です。
山岳警備隊の方からは、稜線は強風なので注意するようアナウンスがありました。
本当は極楽平から宝剣を攻める予定でしたが、視界不良のため、安全を優先し歩き慣れている乗越浄土から行くことにしました。
千畳敷カール
雪の無い千畳敷。
今日は乳白色の中に薄らお花畑が見えます。メルヘンの世界・・・と言いたいところですが、いささかガスが濃すぎます。
つづら折りなので、雪山よりも時間がかかります。
とはいえ、お花を見たりしながら楽しく登ります。
ハクサンイチゲ
シナノキンバイ
千畳敷に来るといつもそうなのですが、テンションが上がり過ぎて、出だしの緩斜面がかなりハイペースになってしまいます。
そのためちょっと息があがる。
少しペース落としながら、この後に備えます。
おなじみのオットセイ岩が見えてきました。
ここまでくればあと少し。
ガンバガンバ。
雪の下に埋もれていた階段もあります。
乗越浄土に到着です。
真っ白&強風!!
そして寒い~(>_<)
宝剣岳・・・
何もかもガスの中。
とりあえずいきなりですが宝剣山荘でコーヒータイムとなりました。
ストーブもあって暖かい。
コーヒー¥ 400
トイレ¥200 靴のまま入れます。
ヤキモキしながらしばらく外の様子を見ていたところ、宝剣から降りてきたらしきご夫婦(ヘルメットを被っていた)から情報をもらい、岩もそんなに滑らず、何より貸切状態とのこと!
よしっ!
おNewのヘルメットを被り、
スリングで簡易ハーネスを作り、
宝剣岳、いざゆかん!
実際はハーネスでセルフビレイを取りながら登っていたら渋滞になってしまいますし、怖く感じてしまう場合はやめておいた方が良いと思います。
あくまでいざという時用です。
ちなもに私がいつも持参するのは定番のロックエンパイアの20mm幅の120センチスリングです。
ダイニーマ細いやつは身体に食い込むので、20mm幅が使いやすいです。
※宝剣岳は中ア遭対協のヘルメット着用推奨山域です。
宝剣岳
最初は緩やかな岩稜帯です。
雪山登攀の技術と装備の無い方は禁止とのこと。注意の看板がありました。
それでも軽装備、あるいは荷物をデポして手ぶらの方も登る姿を見かけます。
初心者でも恐怖心がなければ、この北側のルートはそこそこ登れるでしょう。
ところがここは上級者コースとなっています。
南側の極楽平を通るルートはルートそのものも難易度が高くなりますし、南稜をクライマーの真似事をするには技術とガチャ類が必須でしょう。
この北側でも油断は危ないです。
これは、例えば視界不良になり、ルートをミスって難しい方へ出てしまったら。
普段からクサリを頼る登り方をしていて、雨が降りだして、クサリがツルツルに滑ったら。
足場も滑りやすかったら。
あるいは足を挫いて歩行がおぼつかなくなったら。
こんなことを想定すると、私はゾッとしますし、実際これまでいくつか怖い経験をしました。
「魔が悪い」とそういうことが起きます。
おそらくそういう意味で上級者コースなんですよね。
つまり対応力、応用力が求められます。
以前、外国の方が雨の日に10メートル程滑落し、命を落とす事故もありました。
充分気をつけなければいけません。
あれれ?
登っていたつもりが、スタート地点の宝剣山荘が見えてきました。
ん?
んん??
コンパスで確認すると向かうべき方角は真逆です。
やれやれ、リングワンダリングだ。こんなに狭くて短い距離で!?
やっぱりだだっ広い所はガスると怖いですね。
昔は狐狸に化かされたと考えられていたやつです。
視界不良のときに、人間の利き脚の癖で偏って、方向が修正され続けることで起きる、道迷い遭難のパターンです。
お恥ずかしい。
やはり視界不良は怖いです。
昔のマタギさんは、魔除けの意味でここで一服したんでしょう。
煙草とお酒は山の魔除けになるらしいですね。
確かに落ち着いて考えられるようになりますね。
私は厳冬期のホワイトアウトで何度か経験していますので、慣れていますが、念のためGPSも起動しておきます。
仕切り直しです。
ルートは合っているようです。
クサリ場の登場です。
落ちたら死ぬ系。
クサリも濡れてツルツルです。
強風に煽られながら慎重に進みます。
緊張です。
集中!と自分に言い聞かせます。
まるでヤモリになったように、しっかりホールドを探しながら、進みます。
基本は足をキメること。
数ヶ所落ちたら死ぬだろう箇所がありますが、三点支持でクリアしていきます。
意識しなくても、自然と三点支持になります。
ホールディングや、フットワーク、ムーブと、ボルダリングの技術が大活躍です。
そんなこんなで登頂です!!
無事を感謝し、祠に手を合わせます。
すると、瞬間ガスが晴れてました♪
思わず「ひょ~」と歓喜の声が漏れます。
そこにパイネのガッシャブルムを背負ったパーティーが極楽平側から登頂してきました。
聞くと、大学の山岳部だそうです。
ガッシャで揃えてテン泊、男らしい!そして羨ましい。
極楽平側の記事はこちら↓
一瞬、「ツェルトで泊まっちゃいなよ」と悪魔の囁きが聞こえました。
星空を見たり、風でばたつくツェルトの音を聞きながら寝たらどんなに素敵だろうな、と思いました。
いかんいかん。
近々私もテン泊してやるぞ!と心に誓い、そろそろ下山です。
下山の時は少しずつガスが晴れてきたので、下が見える分、高度感がありますが、基本のムーブを意識して慎重に。
ここは緊張しました(汗)
ガンバ!
時々ガスの切れ間を狙って写真を撮るのに、念のためクサリやロープに確保しました。
強風で体が壁から剥がされそうです。
あ、本来の確保はこんなことしちゃダメですね(汗)
クサリは確保に使うものではありませんので、必ず強度を確かめて、ヌンチャクや短いスリングやデイジーチェーンを使い繋げるといいのかな?
しかもこれは植物保護の為のロープです。写真を載せるために使いました。実際は掴むと切れたりすっぽ抜けたりしますので要注意です!
いよいよ怖い箇所をクリアしてフゥ~と一休み。汗はかきませんが、水分補給をしておきます。
宝剣山荘まで降りてくると、ガスが晴れて絶景です♪
降りてきてから晴れるなんてタイミングが悪いなぁ、と思いつつも、絶景を堪能します。
伊那前岳
中岳。今年は残雪が少ないです。
宝剣岳と天狗岩
ここで風を防げる岩の陰で簡単に食事を済ませ、カフェオレを作ります
すると、ジーパンにクロックスという軽装の人が!
「なんだかなぁ」と思っていると、スカートにパンプスの人まで!
観光でそのまま登ってきちゃったようです。
「危ないなぁ~」「怪我をしないといいな」
ここで引き返してくれることを祈ります。
伊那前岳
遠く西の空から、もくもくと嫌な雲が見えます。
早くしないと来るので、伊那前をやっつけます。
ハイマツの間に引かれた白砂の登山道。
早い雲の動きや、尾根から巻き返すガス。
風の動きが目で見えます。
なかなか素朴な、のほほんとした雰囲気の稜線歩きです。
石碑があったり、昔むかしの山岳信仰の匂いが残る登山道。
振り返ると宝剣が。
木曽駒から続く馬の背
西駒山荘の見える将棋頭山。
ここは聖職の碑の舞台となった所です。
下には千畳敷。
観光ポスターのお馴染みのカットですね。
ゆっくり稜線散歩を楽しみます。
あっという間に登頂です。
三角点は少し先にあります。
西の空を気にしながら下山します。
乗越まで戻ると強風で身体が浮き上がりそうです。
「よし、木曽駒ヶ岳」と思ったのですが、またまた視界不良になりましたので、泣く泣くここで下山します。
下るにつれて日差しも強くなり、気温も上がります。
雪で尻セードだったらどんなに楽ちんだろうなぁ。
積雪期の木曽駒はこちら↓
千畳敷に戻ってきました。
名残惜しいですが、最後にもう一度乗越を見上げ、バイバイです。
まとめ
初心者が登れてたとしも、上級者コースは、イレギュラーへの対応力の意味でも上級者コースなんですね。
ポイントポイントで見ればジャンダルムや一ノ倉沢だって同じことですね。
ただし、トータルの時間も長く、対応力や天候を読んだり、様々な要素が加わると、山は怖いですね。
私ももっと勉強したいなと思いました。
それから岩峰登山の身体の使い方はボルダリングが良い練習になりました。
(ボルダリングは下手なんですが・・・)
ボルダリングの記事↓
今回は体幹の弱さを確認するため、あえてポールを使いませんでした。やっぱり身体が左右にブレていましたので、基本的な歩き方をマスターしなければいけませんね。
それから、なんといっても天候には勝てませんね。