燕岳の帰り道、心地よい疲労感の中、目に飛び込んできた大きな山容。
気になり調べてみると、常念岳。
なかなか天候に恵まれませんでしたが、やっと行ってきました。
7月23日(土)
常念岳 一ノ沢ルート 日帰り 5つのポイント
登山口の標高1323メートから山頂2857メートルを目指します。
①駐車場の確保
事前に調べたところ、気になるのは駐車場の確保でした。
前日金曜日、仕事を終え急いで帰宅し20時に東京を出発します。
一ノ沢ルートはヒエ平登山口の駐車場は登山口から1 キロ程下に第一駐車場、さらに800メートル程下に第二駐車場があり、それぞれ30台程のスペースがあります。
第一駐車場から登山口までの路肩にも待避スペースがあり、違法駐車がかなり目立ちました。
連休は駐車場が混むらしく、急いで出発するという運びとなりました。
さて、夜中12時頃到着すると、第一駐車場は8割は埋まっていましたが、第二駐車場はまだガラガラでしたので、そんなに急がなくてもよかったかな?
常念岳は山と高原地図によると、休憩抜きの時間だけでも、登り5時間30分、下り3時間と長めになっています。
今回始めて登る山ということもあり、焦らないよう、安全のため早めに出発します。
とはいえ4時に起床し、5時に出発となりました。
もっと早く行動すればよかったかな?
ヒエ平登山口まで約一キロ。丁度よいウォーミングアップになります。
焼け始める前のアスファルト。
蝉の声。
寝起きかつ寝不足の身体。
筋肉の動きをひとつひとつ確認しながら歩きます。
登山口には、比較的立派な休憩所とトレイがあります。
登山届を提出しようとすると、遭対協のおじさまが。
なんと80歳になるそうで、この道50年!
毎朝3時に起きて、登山口で皆のお世話をしてくださっているそうです。
休憩所には味噌ときゅうり、リンゴ、すもも、お茶などが用意されていて、このおじさまが自宅から持ってきてくださっているそうです。
皿に盛られた色とりどりの夏の恵み。
有難いですね。
「これ持ってきな」とリンゴまで頂き、いよいよ出発します。
常念岳、いざゆかん!
常念岳はキレイなピラミッド形の大きな山容です。つまりアップダウンは少なく、登りはずっと登り続けます。
このパターンは、下山時の筋肉疲労が心配です。
常念乗越までは沢沿いの樹林帯を進みます。
※曇りのためシャッタースピードが遅く、写真がぶれています。すみません。
山の神
古池
ゴーゴーという沢の音を左に聞きながら歩きます。
草が薫る登山道。
②あったらいいなアイテム
一の沢ルートはその名の通り、沢沿いを歩くルートです。
所々水の中を歩きます。水位はせいぜい足首程度で、ゴアテックスの登山靴なら問題ありませんが、水はねでパンツの裾が汚れます。
やれやれ、ゲイター(スパッツ)を持ってくればよかった。
こんなときはソフトシェル素材のゲイターが通気性とストレッチ性があって快適ですね。
私のおすすめはアウトドアリサーチのエンデュランスゲイター。
残雪期や無雪期にもってこいのライトな使い心地です。
帰ったらパンツの裾をツマミ洗いすれば良いか、と気持ちを切り替えます。
急な雨で水位が上がっても3時間程で下がってくるそうです。
途中何度か一ノ沢の支流?にかかった丸太橋を慎重に渡ります。
例によってトレーニングを兼ねていますので、無駄にザックが重たいので橋の上でふらつかないように(汗)
吹き出した汗が顎から落ち、吐く息で飛ばされていきます。
冷たい沢の水を両手ですくい、顔を洗ってさっぱりします。
気持ちよくて、「っぱ~、あ~」と声が漏れます。
そして一ノ沢の水は飲み放題。
むかし丹沢の水でお腹を下したことを思いだしましたが、ここは大丈夫みたいです。
というか美味しいですよ!
(注:責任は持てません)
大滝ベンチ
歩みを止めると、涼しい沢の風が頬を撫でます。
背中を反らせ、ザックとの隙間にも風を送ります。
マイナスイオンたっぷり。
烏帽子沢を越えたあたりで、岩の間から何がチョロチョロと出入りしています。
!
オコジョだぁ~♪
人なつこくて、逃げません。
昔飼っていたフェレットを思い出します。
「コジョ次郎」と名付け、しばらく観察しながら話しかけていたのですが、名前が気に入らなかったのか、どこかへ行ってしまったので、ここで小休止します。
川面を吹く風が、身体の熱気をさらっていきます。
昔むかしのマタギは、オコジョを山の神の使いと信じていたようです。
オコジョを見たら怪我をするからその日は下山する。
オコジョを見たらその日の猟は何も取れない。
といったように、不吉の象徴だったらしいです。
そのくらい遭遇する確率が低くめずらしいということですね。
ラッキーでした。
③休憩のポイント
さぁ、まだまだ先は長いので出発します。
ここで大失敗!
休憩のせいで、ヘモグロビンまで休憩してしまったようで、急激に脚がダルくなってしまいました。
休憩はしないで、ゆっくりペースで登り続けた方が良いですね。
心拍も登山仕様になっていたのに、休憩してしまうと、またウォーミングアップからやり直しになってしまいます。
水分補給や行動食は座らず立ったままが良いですね。
基本的なことですが、再確認できました。
この後もとにかく歩きます。
気持ちの良い沢沿いの登山道に心も弾みます。
笠原
最終水場
地図と照らし合わせながら進むと、こういう看板一つひとつが、自分が着実に山頂に近づいていることを実感させてくれます。
本当に水が美味しくて美味しい(大事なことなので二回言います)
プラティパスに補給します。
胸突八丁
なんだか昔のプロレス技みたいな名前で嫌な予感がします(ワラ)
ぬぉ~!!
やはり・・・。
ここは階段地獄。
乳酸が溜まります。ガンバ!!
所々ベンチが設置されています。
座りたいところですが、かえってバテるので我慢がまん。
看板の「あと~~メートル」に励まされます。
が、「まだかな~?本当かな?」と看板の言葉が信用できなくなります(ワラ)
④滑落注意!
登山道が狭く、谷側は草で覆われているので踏み抜くと落ちてしまうので注意が必用です。
下山時に疲れが溜まって体幹がぶれ出したり、集中力が切れていると危ないかもしれないですね。
薮が深いところで、うっかり落ちて起き上がれないような怪我をしたら誰も見つけてくれません。谷では携帯の電波も届きにくいでしょう。
最低限、笛と救助が来るまで耐えられる食料、ツェルトは持参すると良いと思います。
昨年はここから落ちた人がいたそうですが、他の登山者が気づいて、トレッキングポールを伸ばして助けてくれたそうです。
私も常にザックにツェルトが入っています。
定番のライペン。
気が変わればこのままツェルト泊することもあるのでスーパーライトツェルト2という大きいタイプのものです。
途中、新しい丸太の道が整備されていました。
シーズン前に遭対協とガイド協会の皆さん約20名で1日で登山道すべてを整備したそうです。
私達が安全に登山できるのも、こういった方達のおかげなんですね。本当に有難いことですね。
息を整える回数が増えてきました。
小屋はまだか?病が末期になってきました。
急に視界が開けたと思ったら、ようやく乗越に到着です。
時折ガスが晴れそうになりますが、穂高連山は見えませんでした。
槍様~、槍様~と心の中で叫びましたが想いは届かず。
麓の気温が高いのでしょうね。
ガスがどんどん上がってきます。
一番向こうの雲の中に穂高の山々があるはずなんですが。
常念乗越
常念小屋
赤い屋根と青々とした山の連なり。
高い空には水彩の平筆で掃いたような曇。
その向こうに隠れた槍穂高。
色彩が綺麗ですね。
常念小屋でコーラ(糖分)をゲットして、外のベンチで休憩します。
受付の方はとても親切で、綺麗な小屋でした。
トイレはテン場の脇に仮設トイレが三基ありました。
チップは100円で、思ったよりキレイな方ではないでしょうか?
コーラで糖分を補給したら、いよいよピークアタックです。
荷物をデポしようかと思いましたが、それでは訓練にならない!
山頂へ向け、いざゆかん!
ここから山頂はコースタイムでは1時間の予定です。
ゴロゴロとした岩のルートに、所々砂が混じります。
勾配も急になってきます。
山頂に向かって左側がハイマツ帯ですので、これだけガスっていたら雷鳥に会えるかな?
と、探しながら登りましたが残念でした。
それにしてもキツイ!
息があがります。
太腿の筋肉も少しパンプしてきました。
頂上かと思っていたところに来ると、その先に本当の頂上がみえました(苦)
みんな偽常念にため息が出ます(笑)
呼吸を深くし過ぎないように・・・なんて言ってられません。
心臓の音が耳に響きます。
ガレ場で歩きにくい。
登山客も多いのでタイミングを見てどんどん抜かせてもらいます。
「そもそもピークハントにこだわりはないんだよな」などと、よからぬ考えが浮かび、
心が折れそうになりますが、ただ頑張るしかありません。
こういう時、頑張る理由って確実なものは見つかりませんね。
景色?
風景?
達成感?
よくわかりませんが、進むしかありません。
自己欺瞞と体力との戦いです。
数歩登っては息を整え、の繰り返しになってきました。
それでも回りを見渡すと、
力強い稜線。
谷から吹き上げるガス。
地面を走る雲の影。
なんだかドラマティックで来てよかった。
それにしても見えているピークって、なかなか近づかない気がするのは私だけかな?
全然クライマーズハイにならない。
どうした?私のアルブミン?
ここで必殺の気の抜けたコーラ&大福を発動します。
厳冬期は練乳チューブもオススメですよ。
すこし元気になり、ガンバ ガンバ!
結局1時間30分かかって11時に登頂です。
⑤コースタイムの落とし穴
結果トータルではコースタイムより早く登頂できたわけですが、小屋~山頂は大幅に時間がかかってしまいました。
日帰りの場合、交通機関の時間制限もありますし、疲労でのペースダウンを加味した計画が必要ですね。
山と高原地図のタイムは、登山ブームに合わせ、年配の方向けに長くしているようですが、個人差や、登山道との相性や天候、疲労具合や装備の重さで変わってきますので、要注意です。
ここでガスが晴れるのを待ちながら、カップラーメンの儀を執り行います。
ストーブは定番のイワタニプリムスのP-153。
苦楽を共にしてきた長年の相棒です。
しばらく待ちましたが、ガスが垂れこめてきます。
こんな日は夕方にならないとガスは晴れないでしょうね。
12時下山開始です。
ガレガレの道。視界も悪く、迷いそうになりますが、登山道の岩は茶色く変色していますので、慎重にルートを見つけながら下山します。
逆に登山道ではない岩はコケで灰色ですので、目安になりますね。
常念小屋に戻り、トイレを済ませ再出発です。
長い長い道のりの始まりです。
でも登りに比べ、周りを見る余裕もあるので、
コケから滴る水に癒されたり、
お花に元気づけられながら、
ウサギギグかな?
かなり早いペースでしたが、ぐんぐん抜かせてもらって、
16時ヒエ平登山口まで戻ってきました。
ポールを持った腕が筋肉痛に!
もっと軽いポールが欲しいなぁ。。。
するとなにやらざわざわしています。
聞くと、タクシーで来た方が、帰りのタクシーを呼ぼうとしたらしいのですが、
携帯が圏外とのこと。
タクシー会社の看板にも「ここは圏外です。林道を少し下ってからお電話ください」と書かれていました。
たしかに駐車場も圏外でしたし、登山道もところどころ圏外になっていました。
要注意ですね。
まとめ
常念岳 一の沢ルートのポイントは
①連休など混雑が予想されるときは駐車場に早朝には着くように。
②沢沿いを歩くのでゲイター(スパッツ)があると良い。
③歩行距離が長いので、休憩はできるだけしない。する場合も座らず短時間で。
④道幅が狭く、谷側は草で見えないので滑落に注意。
⑤標準タイムは疲れ具合や個人差で変わる。あくまで参考程度。
と、慣れている人にとっては当たり前のようなことですが、安全登山のために、再確認できました。
観光客が来るような山ではありませんので、何かあっても自分で対処できるだけの知識と装備が必用ですね。
登っている最中よりも、思い返すと楽しかった、というタイプの山でした♪