岩根山荘 アイスクライミング講習
1/13(土)
昨年の赤岳鉱泉のアイスキャンディから約1年振りのアイスクライミングです。
どうでもいいですが、私のカーナビは「今日は○月○日、○○の日です」と教えてくれます。
今日はナビが何も言わなかったので調べてみると、1月13日は若手クライマーで有名な河上紘輝さんと、花村樹さんのお誕生日なんですね。
おめでとうございます♪
アイスクライミングは人工氷壁がある場所がなかなか少ないのですが、岩根山荘はずっと行ってみたいと思っていたところでした。
早朝東京を出発し、約3時間で岩根山荘に。
途中道路の気温計が-9°になっていてびっくりしました。
岩根山荘
岩根山荘は、奥秩父山塊に囲まれた川上村の標高1400メートルに位置します。
道中は狭い道をくねくねと進み、こんなところに人工氷壁があるんだろうか、とハンドルを切り森を抜けると、いきなり氷壁が姿を現します。
駐車場の目の前がアイスツリーという好ロケーションです。
岩根山荘はもちろん宿泊することもでき、フリークライミングのメッカとして有名な廻り目平の屋根岩が全てのお部屋から望めます。
露天風呂もあり、室内ウォールまであります!
保科雅則先生
今回教えていただく先生は、保科雅則先生。
世界中で登攀の記録を残し、日本人として始めてアイスクライミングのワールドカップに出場した経歴があります。
私は、保科先生の書いた「アルパインクライミング」(山と渓谷社)を教科書にしていましたので、「そんな凄い人に教えてもらえるなんて!!」と嬉しさの反面、とても緊張してこの日を迎えました。
集合時間よりだいぶ早く到着してしまいましたが、駐車場には続々と車が滑り込んできます。
埼玉、東京、神奈川の首都圏ナンバーが多く、名古屋のナンバーもありました。
人が増えてくると、アイスツリーの周辺はGreen day、MXPXなんかのBGMが流れ、一段と明るい雰囲気になります。
トイレを済ませ、一通り着替えをしておきます。
10:00、本で見ていた先生が登場です!
私の事前プロファイリングによると、井原剛志似のバリっとした軍曹タイプの人。山をナメている奴の性根を叩き直す人、と勝手に思い込んでいました。
血尿が出そうな程緊張して、両踵を付け、直立姿勢でご挨拶しました。
すると、とても物腰の柔らかい繊細な印象で、一気に緊張が溶けました。
私たちの他にも生徒さんが5名いました。
みなさん良い人そうで安心。
山荘で、アイスツリーの受付をし、登録料を支払います。
早速ハーネス、アイゼン、ヘルメットを付けます。
それにしても人が大勢います。
受付のお姉さんによると、今日はドライ壁がリード可能の日ということもあり、こんなに混むことは珍しいそうです。
お借りした装備はアイゼンと、アックス。
アックスはMIZOのアイスアックス。「MIZO」のロゴがシブイ!(たぶん北斗かな?)
アイゼンは、おなじみCASSINのブレードランナーです。これもオレンジ色でカッコイイ!!
他の人はPETZLのリンクスが多かったです。
step1
まずは靴の確認。
アイゼンのまま、氷の上でぴょんぴょんジャンプします。
これで靴の中で踵が浮くようであれば靴ひもを閉め直します。
靴ひもの締め方も先生が丁寧に教えてくれます。
step2
次は準備体操です。
基本的なストレッチをしますが、まるでスターウォーズのC-3POのように身体が硬くなっています。
でもC-3POのような通訳もできないし、儀礼も備わっていないし・・・もういいか。
しまった。
そりゃそうだよ・・・。
最近はボルダリングも行っていなかったし、体重は絶賛増量キャンペーン中だし(恥)
隣のパートナーからは「イテッ」、「イテテッ」と動くたびに声が。
「一動一痛」と名付けました(笑)
step3
今度は、氷の張った地面に膝を付き、アックスの振り方を練習します。
グリップは下端のストッパー状のところに小指が当たるように。
降るときは、手首のスナップを効かせ、一旦小指側を浮かせ、突く瞬間に握込みます。
まずは利き腕側から地面の狙ったところに何度も打ち込みます。
ちなみに、透明の氷は薄く剥がれやすく、濁った氷は固く頑丈だそうです。
利き腕の打ち方が100%になったら反対の腕でやります。
私は右利きなので、左は力も弱く、難しい。
これでパンプしかかっていたら、もっと難しいだろうなと思いました。
登攀1本目
まずはウェアーのチェックをします。
アックスを打ち込むと砕けた氷がバラバラと降ってきますので、シェルのジッパーは首元まで完全に閉めます。
それからフードも折りたたんでバタつかないようにします。
注意事項
・ツリーの周りは砕けた氷でいっぱいです。
万が一踏んでしまうとつるっと滑るので要注意です。
・また登攀者の下には入らないこと。2~3メートル壁から離れないといけません。
・落氷に注意する
アックスを刺した瞬間に顔を下に向け、落氷をヘルメットで受けます。氷は石と同じで、よく唇なんかがざっくり切れてしまうそうです。
いよいよ登ります。
私は3番目。
赤岳鉱泉のように傾斜しているルートは無く、全部垂直です。
とにかく省エネで行かないとマズいので、しっかりオブザベーションします。
う~ん・・・。わからん。
しかも女性は私一人だから手足の長さも筋力も違うから、前の人の動きは参考にできないしなぁ~・・・。
いよいよ私の番です。
壁に近づきますがいきなりポイントがみつからない。
とりあえず基本の「凹んだところ」を探し、登ってみます。
ついつい腕力に頼ってしまいます。
それにしても氷が硬い。
アックスが狙ったところに定まりません。
できるだけ壁にくっついて楽をしようとしますが、岩の癖で、踵を上げてしまい足が不安定になってしまいます。
アイスは踵を下げないと(水平に)、前爪のサイドの爪が効かないということを忘れていました。
細かく刻みながら、先生に言われたところまではなんとか登れました。
ロワーダウンしてきて、カラビナの安全環を外そうとしたら、力が入りません。
思ったよりパンプしています。
登攀2本目
次は同じルートを終了点まで。
先生からのアドバイス
・アックスは左右をできるだけ狭く。広いと身体がねじれてしまうため。
・両足は同じ高さに。
・蹴り込みは膝を支点に。
・少しずつステップを刻んで登る。
・腕がパンプしたら、アックスを刺したまま、腕を下にぶらぶらして休ませる。
こうすると血流がよくなるそうです。
・前半は省エネ、後半は根性で登る
さっきの反省を活かして、アックスはできるだけ高いポイントに、踵を上げすぎないように登ります。
やっぱり氷が硬い・・・。
当たりを見つけている間にどんどん腕がパンプしてきます。
心の中で自分の右腕と左腕に問いかけながら。
おい!オレの筋肉!やるのかい?やらないのかい?どっちなんだい?
byなかやまきんにくん
「テンション!」
休んでそのまま登ろうか考えますが、腕が限界。
ここでロワーダウンです。
悔しい!!!
登攀3本目
先生のお手本
別の場所に移動します。
シャンデリアのハングから取り付くルートです。
ここを先生が登ります。
いきなり凄いムーブでゆっくり繊細に登っています。
同じ人間とは思えません。まるで手足が伸びているように見えます。
途中氷柱が砕けてもまったく慌てることなく、動きを切らしません。
先生の人柄が現れているような柔らかく繊細なクライミングです。
スルスルと終了点まで。
拍手が沸き起こります。
他の講習会グループの先生が登っている姿も見ましたが、保科先生はほんとに美しい!
カッコイイ!
先生のように自分の決めた、思い描いたラインで登ることができたらどんなに楽しいだろうなと思います。
クライミングは自由な自己表現の場なんですね。
これが見られただけでも来た甲斐があったってもんです!
私たちはこのルートではなくて、南側の氷の柔らかそうなルートを登ります。
ここも全然わかりません。
ついつい目の前から直線に真上だけを見てしまうので、当たりのホールドが見つからないまま、ごまかして登ります。
アックスを引き付けるときに、外に引いてしまい、アックスが抜けてしまいました。
引くときはおへそに向かって引かないといけませんね。
おまけに衝撃でアックスを落としてしまいオーバーパンツに穴が!(泣)
戦意喪失でギブアップです。
がーん!・・・
破れたパンツを見て落ち込む図。
帰ったら修理しなきゃ。
悔しい!
気がつけば13:00
ここで昼食です。
場所は岩根山荘の食堂。
かわいい暖炉があります。
お湯もポットがあって、無料で頂けます。
ちなみに、カレー等の軽食も注文できるそうです。
参加者のパンプ具合を判断して14:30まで休憩です。
登攀4本目
午後一発目は、また最初にやった垂直の壁です。
午前より、氷が柔らかく、他の人が削ったステップがで出来ていますので、登りやすいです。
午前中に覚えた基本動作を意識しながら登ります。
隣のピンクのお姉さんはスクリューを打つ練習をしています。
二等辺三角形の安定した姿勢。参考になりますね。
それでもステップも大きくなり、後半のハングになっているところ手前で腕が限界に。
はぁ~、悔しい!
でも楽しい!
どうも足が効いてないようです。
登攀5本目
今度はドライ壁へ移動します。
隣ではアイスコンペの練習をしている方達がいます。
カッコイイ♪
ここは懸垂力が大事になってきますが、前爪の感覚を掴むには丁度良さそうです。
アックスは先生のPETZLエルゴをお借りします。
傷を付けないように丁寧に使わせていただきましたが、とても使いやすい。
ピックの角度とハンドルの握りやすさ、そして軽さ。
木の板を打ち付けたホールドに引っ掛けて登りますが、オブザベーションをまったくしなかったので、途中で少し降りて登り返すハメに。
むむむ~!!
スタミナ切れで終了。
登攀6本目
絶対トップまで登ってやる!
本当はここで終了だったのですが、もう1本登らせてもらいました。
なるべく遠くにアックスを・・・
腰を引き付けなきゃ!
おりゃ~。
左手を休ませようと思ったら、右足が外れる!
ひ~!!!
やっぱり腕が限界です。
本当に悔しいですね。それでも、もっともっと登りたいし、上手くなりたいという気持ちが湧いてきます。
確保
最後に先生にお願いしてビレイの練習をさせてもらいました。
ベテランそうなクライマーさんに実験台になってもらいます(汗)
色が可愛いというだけで買ったルベルソ4を使います。
ルベルソ4はザイルの出し入れはATCよりやりにくいですが、セカンドのビレイに便利だそうです。
どちらもロープの屈曲を摩擦抵抗に利用した器具です。
基本の動作は5ステップ。
先生の著書「アルパインクライミング」で覚えたやつだ!と、とてもワクワクします。
ビレイはとにかくビレイに徹して集中すること。
アイスの場合は張り気味にするそうです。
上にいるクライマーさんは腰をぴったり壁に付けています。
この姿勢が腕を休ませる基本のようです。
やっぱり実際に教えてもらうと、ちょっとしたコツや、自分の癖を指摘してもらえるので、本当に勉強になります。
まとめ
今回覚えたポイントは、
・アックスは左右をできるだけ狭く。
・引き付けるときは肘をお臍の方向に。
・両足は同じ高さに。
・靴底は水平に。
・蹴り込みは膝を支点に。
・前爪のサイドの爪も効かせる。クライミングシューズで言う「内エッジ・外エッジ」
・少しずつステップを刻んで登る。
・腕がパンプしたら、アックスを刺したまま、腕を下にぶらぶらして休ませる。
・腰を壁に密着させ、腕を伸ばすと楽になる。
・ビレイはアイスの場合張り気味にする。
・ビレイ用インサレーションがあると快適です。
↓先生とおそろいのダスパーカー。現行はハイパーパフです。ダスに比べワンサイズ小さな作りになっていますが、胸の外ポケットがあるので便利そう。
また、続けることが大事だそうです。
こうしてブログを書いている今でも、はやく壁に行きたい!という気持ちでいっぱいです。
この気持ちがあるうちに再チャレンジしようと思います。
それから何より、先生の人柄に触れて、大ファンになりました。
アイスはもちろん、室内も外岩も、また保科先生に教えて頂きたいと思いました。
岩根山荘アイスツリー、また来るよ~!