千畳敷カールでバックカントリースキー入門
先週はゴールデンウィークの連休を利用して唐松岳、木曽駒ケ岳で残雪期の山を堪能してきました。
木曽駒ケ岳の下山時に、雄大な山に囲まれたカールを気持ち良さそうに滑るスキーヤーの姿を見てしまったら・・・。
というわけで5日後、またまた千畳敷に行ってしまいました。
スキーを担いで。
- ・千畳敷がおすすめな理由
- ・バックカントリースキーの装備
- ・板・金具・他の選び方
- ・シールの使い方
- ・ツアービィンディングの使い方
- ・イージースキンセーバーの使い方
- ・いよいよ滑走
- ・スキーをザックに取り付ける方法
- ・まとめ
駐車場やアクセス、この時期の山の状況はこちらをご覧ください↓
駒ケ岳千畳敷カールは、冬は雪崩の巣と言われる程、危険と隣り合わせの場所ですが、融雪が進み、雪崩の危険が少なくなる4月下旬から5月末頃まで、バックカントリーの春スキースポットになり、多くのBCスキーヤーが訪れます。
また、カールの一部はTバーリフトが設置され、スキー場がオープンします。
私はスキーは超超初心者なのですが、スキー装備はバックカントリーのものを使っています。
この春はじめてスキーにチャレンジしたので、あまり参考にならないかもしれませんが、勉強したことを紹介します。
木曽駒ヶ岳には季節を問わずほぼ毎月登っていて、ずいぶん前から大好きな木曽駒ケ岳でスキーが出来るこの時期を待ちに待っていました。
・千畳敷がおすすめな理由
<一部はスキー場としてオープンされていて、立派な高山であること>
安全が担保されたスキー場の隣でシールで登る練習ができること。
でも、もちろんこれはルートによります。
八丁坂をハイクアップして、駒ケ岳から黒川に滑るコース、伊那前岳からの架線沢へ滑るコース、あるいは極楽平から伊那川源流の滝の方へ滑るコースなどありますが、いずれも私のレベルでは危険過ぎます!
私はもっとなだらかなところで短い距離をゆっくり練習しようという魂胆です。
そして何よりも、ビッグマウンテンの雰囲気の中で滑ることができます。
「バックカントリーじゃないじゃん!」と言われれば元も子も無いのですが(汗)
もちろんTバーリフトを利用してのスキーも最高のロケーションです。
<お客さんが少なく、雪面が荒れていないこと>
ゲレンデの春スキーは、朝はガリガリのアイスバーン。次第に豪快なボーダーが削りに削った雪面がまるでモーグルのコースの様になって、飛び出してしまったり、豪快に転んでしまったり、じっくり練習することができません。
千畳敷なら、上手いBCスキーヤーは急斜面に行くので、人気のスポット以外は空いているし、シュプールで荒れることも少ないです。
また、標高が高く、雪がシャバシャバになることも少ない(ゲレンデに比べて)ので、雪面の状況も比較的フラットで滑りやすいです。
・バックカントリースキーの装備
<基本安全装備>
・まずは雪山登山の三種の神器、雪崩対策のスコップ、ゾンデ棒、ビーコンです。
ビーコンの使い方はなかなか難しいので定期的に講習会に参加する必要があります。
・ヘルメット、アイゼン、ピッケルは雪山なので必要ですね。
アイゼン、ピッケルはスキー用の軽いものもありますが、山用で問題なありませんでした。
アイゼンは、ワンタッチのものはスキーブーツには合いにくいので、セミワンタッチか、ベルトタイプなら、スキーと登山どちらでも使用できます。
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・地図とコンパスはもちろん、私はGPSも持ち歩いています。
<服装>
・服装はゴアテックスのシェルで吸水速乾の肌着に、保温層はフリースといったレイヤリングが基本です。
ハイクアップで汗をかくので調整できるものが良いです。私は登山の格好そのままです。
・手袋も予備を持ちます。一度凍った手袋は復活しません。
・靴下は最近の薄いスキー用より、ウールの登山用を使いました。もちろんこちらも予備を持ちます。
今度は薄いやつも試してみようと思います。
・サングラスとゴーグル。
ハイクアップ中は、かなり汗をかきますので、ゴーグルではなくサングラスが良いと思います。ゴーグルは曇ってしまい、その後滑走時に凍って視界が無くなってしまいます。
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<その他>
・無線や救急セット、ツェルトに水分、行動食、非常食も持ちました。
山専ボトルにお湯を入れておけば、コーヒーやカップラーメンを楽しむこともできます。
・日焼け止めは念入りに!
・ザックは40リットル程度で、サイドのコンプレッションのベルトで板が固定できるやつが便利でした。
・板・金具・他の選び方
(注)あくまで初心者レベルの選び方です。
・板は、幅が10cm前後で、長さは身長+10cm程のものが良いと言われています。大きく感じますが、パウダーでの浮力と悪雪を突破するための丁度良い幅で、かつ振り回しやすい長さの両方特徴を持ったサイズの板です。体重があり、荷重コントロールが上手い人は硬め、女性やビギナーは柔らかめ。レベルによって選び方が違うらしいですが、山岳スキーレースをやったり、パウダー専用でないのであれば、気に入ったデザインのもの、そしてハイクアップを考慮して軽いものが良いそうです。
私の使用している板はサロモンのQST LUMEN 92というモデルです。
サロモンの山岳スキーQST(クエスト)シリーズのレディースモデルです。
パウダーから春の悪雪までカバーするオールラウンドなモデルで、軽いのが特徴です。
私のレベルでは良くわからないですが、デザインがかっこよくてテンションが上がります!
・ストックは、登山用の伸縮タイプにスノーバスケットを付けたものを使っています。特に不具合はありません。
・金具はアルペンツーリング(AT)ビンディングという踵がフリーになって、角度が調節できるもの。軽さと可動域がウリで、登りを快適に、そして安心した滑走ができます。
私のはチロリアのアンビション12というモデルです。
特徴はフリーにするレバーが踵側に付いていますので、ブーツを外さなくても操作が可能なところです。
他のモデルは、レバーが足の裏に付いているので、ちょっと面倒らしいです。
TLTには及びませんが、許容範囲の軽さなので、使い勝手、軽さ、値段のバランスはベストだと思います。
最近はテック(TLT)ビンディングといって、超軽量のものが出てきました。足裏の力も直接板に伝わるので、滑りの質も普通のアルペンビンディングと変わりません。しかし、高価で、ブーツも専用の高価なものしか選べないらしいです。
・ブーツは兼用靴といって、ウォークモードと滑走モードが切り替えられるタイプのもの。私は、滑ることを追及するほどのレベルには程遠いですし、単純に山をいろいろなカタチで楽しむツールとしてスキーをやりたかったので、滑走性能にこだわるよりも、シェルが柔らかく、足首の可動域が広いもので選びました。もちろん足に合っていないと激痛地獄が待っていますので、一番妥協できないものですね。
板を担いで登る人はビブラムソールになっているものもありますが、これまた高価。
私のはアルペンソールですが、歩くときはアイゼンやワカンを付けるので、あまり気にしません。羨ましく感じるのは軽さと足首の可動域です。あとは高いやつはデザインもカッコ良く見えます。
私のブーツはテクニカのコーチス75です。初心者向きのものなので、山岳ブーツ並にシェルが柔らかく、珍しい3バックルなので軽量になっています。
ハードに滑る方には物足りないかもしれませんが、スカルパ等の本気の山岳ブーツ寄りのシェル柔らかさと3バックルの軽さが決め手です。
・シール(クライミングスキン)といって、板の裏に貼る滑り止め。
ナイロン等の毛が一定方向に向かって生えているもので、前には進めるけど、後ろには進まないというものです。これを貼って、ツアービンディングで踵をフリーにすることで、スキーで斜面を登ることができます。
シールはブラックダイヤモンドのアセンション ナイロンSTSスキンを使っています。
板がツインチップといって、テール側も反り返っているので、テール側のクリップが付いている条件で選びました。
また、ブラックダイヤモンドのシールは真冬の低温下でも、雪まみれにならなければ、貼り直しが効く信頼性があるそうです。
・イージースキンセーバー。これは滑走時に剥がしたシールを、粘着面に汚れが付かないよう、かつ素早く収納する袋です。
イジースキンセーバーは幅の太い「ファット」タイプが使いやすいです。
・シールの使い方
まずは良さげなポイントまで進みます。
斜面上部の雪庇の有無や、デブリの存在を確認します。
(雪山登山の教科書で何度も勉強しました)
いよいよ板にシールを張ります。
シールの粘着面は水に突くと劣化が早まりますので、手袋で板の水分を拭いてから張ります。
トップに輪っかを引っ掛けて。
板からシールがハミ出したり曲がったりしないように。
慣れるまでなかなか難しい。
ぺたぺた。
シールの収納袋(イージースキンセーバー)は剥がしたら風で飛ばされないようすぐにポケットにしまいます。
テール側のクリップを留めます。
ブーツは上部のバックルを緩め、ウォークモードにします。
これだけでもかなり足首が動いて楽ちんです。
・ツアービィンディングの使い方
ビンディングにブーツを装着したら、ストックを突っ込んで、テコの原理で踵をフリーにします。
そのまま登る場所の斜度に合わせて踵の支えの高さを調整します。
いよいよ登っていきます。
爪先を引きずるように、板を交互に前に滑らせます。
凄い!
登山靴で登るよりもかなり楽で早い!
板が雪に沈むこともなく、後ろに下がることもありません。
スイスイ登っていきます。
登りながら、周囲の状況も確認しておきます。
岩が隠れていないか、ハイマツで浮いていないか。
上部には雪庇や浮石がないか。
デブリを見つけたら、雪崩起きやすいのコースが読めます。
例えばこんな感じです。
はぁ~、息が上がりますが、青空に向かって進んでいると、いつまでも登り進めそうです。
雪から露出した岩峰、尾根を巻く薄い雲。
自然の山をスキーで登っていることが不思議です。
登山とはまた違った気持ち良さがあります。
あぁ、やっぱり私は登りが好きなんだな。
登山を始めた頃感じていた、一歩一歩自分の力で登る気持ちよさを思い出させます。
ブーツのバックルを弛めすぎるとエライ目に合います。
果たしてどのくらい、どの箇所のバックルを弛めるのが正解なのか?
目的地点に着いたら、またストックの先端で踵の高さを戻して、ロックします。
スキーを外したら、スキーが流れないように注意しながらシールを剥がします。
・イージースキンセーバーの使い方
①底面の雪を払ってから、まずシールをテールからビンディングのあたりまで剥がします。
シールの毛の向きに逆らわないように。
だいたいこのあたりまで剥がします。
べりべりっ!
ここがイージースキンセーバーの袋の底にくる起点になります。
②イージースキンセーバーを腕に通し、
先ほど剥がした位置を起点に二つに折ったシールを袋に貼り付けながら収納していきます。
袋を裏返しながら、
ここまでで2/3が収納されました。
③はみ出した残り1/3は袋の外側に貼り付けます。
丸めてザックにしまうか、懐に。
強風や降雪中にもできるように、今日は何度も登降を繰り返して練習します。
・いよいよ滑走
斜面に対し直角にスキーを並べます。
自分はスキーの位置より谷側に立ちます。こうすることでもしスキーが流れても自分の身体でブロックすることができます。
谷側から履いて(違っていたら指摘してください)、次に山側を履きます。
頭で滑走ラインをイメージしたら、(緊張)いざゆかん!
ターンは雪面にストレスを与えないようにするらしいですが、そんな余裕はありません(汗)
気持ちいい!
滑るスピードで視界を流れる景色。
自然の地形が心地よく膝のクッションを要求します。
なんだか山と一体になったような気分です。
真横を低空で岩ヒバリが飛んでいます。
鳥たちはいつもこんな景色を見ているんですね。
結局今日は10本程滑って終了です。
・スキーをザックに取り付ける方法
おまけ編で、スキー板の、ザックへの取り付け方を解説します。
まずザックの両サイドのコンプレッションベルトにスキー板を取り付けます。
ビンディングがベルトに引っかかる位置にします。
両サイド取り付けたら、板のトップをゴムベルトで固定して完成です。
これで、急斜面でもアイゼンを付けて登ることができます。
ちなみに私の愛用ザックはオスプレーのバリアント。雪山には素晴らしく使い勝手が良く、容量も表記よりかなり多く入ります。
・まとめ
バックカントリースキーは、ゲレンデのスキーとは全く別の楽しさがあります。
私は、パウダーをやるとか、ありえない急斜面や樹々の間を滑るとか、そういう難しい課題をクリアするのが楽しいというレベルにはまだまだです。
単純に大好きな山を、景色を見ながらスキーで登って、時には登山で身に付けた知識・技を使ったり、そして絶景の中をゆったり滑るのが好きです。
それからバックカントリーは文字通り自然の山です。冬山登山の知識、技術、経験、装備、全てをフル活用しなければ大きな事故につながってしまうなと思いました。
だって普段は「滑落しちゃいけない!」と思いながら登っている山を敢えて滑るんですから、頭を切り替えるのに時間がかかります。
最初はバックカントリーツアーに参加するのが良いと思いました。最近は普通のゲレンデでも非圧雪のコースとか、林間コースを設定しているスキー場も増えてきたそうです。
斑尾高原は比較的易しいツリーランコースがありますので、そちらもおすすめです。
とにかく安全第一ですね。
はぁ~、上手くなりたい!
おいでなんしょ、千畳敷!