GW・残雪の唐松岳でテント泊
ゴールデンウィークといえば輝く残雪!
前半は北アルプス、唐松岳にテント泊で登ってきました。
・唐松岳の概要
唐松岳は、北アルプス、後立山連峰にある標高2696mの山です。
山頂から東に八方尾根が伸びており、2000m手前までは、八方尾根スキー場からのハイキングコースで始まり、北アルプス入門の山として人気です。
春の残雪期も比較的登りやすく、長野県側は白馬三山や不帰ノ劔を眺めながら登り、富山県側は山頂直下に位置する唐松岳頂上山荘から、剱岳を有する立山連峰の絶景が待っています。
・唐松岳のアクセス
車で東京からのアクセスは、中央道から長野道に入り、安曇野ICで降ります。
さらに八方尾根スキー場まで。
コンビニは八方尾根スキー場近辺にもあるので便利です。
ガソリンスタンドは夜間は閉まっていますので、IC傍での給油が良いと思います。
駐車場は、スキー場の有料駐車場、無料駐車場が近辺に点在しています。
いつもと同様に車中泊ですが、東京の暑さとは打って変わってかなり寒い。
パートナーはコンビニで買った冷やし中華で「季節を先取りだね!」なんて言っていた数時間前を後悔しているようです。
・唐松岳の登山ルートとコースタイム
<八方アルペンライン>
まずは、八方アルペンラインという、ゴンドラとリフトを利用したコースで、1850mの八方池山荘まで楽々ひとっ飛びです。
春スキーを楽しむお客さんもたくさんいます。
ゴンドラ・リフト料金は大人往復で2900円。
始発は7:30です。チケットは7:00から発売します。
ゴンドラの駅は24時間トイレが利用でき、スキー場ならではの着替えスペースがあったり、自動販売機もたくさんあります。
<コースタイム>
コースタイムは昨年よりも時間がかかってしまいまいた。
原因はニ泊分の重たい装備に加え、増量した自分の体重(苦)
ゴンドラ+リフト40分(今年はリフトの点検の為、途中で20分待つことになりました)
八方池山荘→第二ケルン1:00
休憩5分
第二ケルン→丸山ケルン2:10
休憩10分
丸山ケルン→唐松岳頂上山荘1:00
計4時間15分
<ルート詳細>
八方池山荘の裏からスタートです。
唐松岳、いざゆかん!
今年は雪が多く、木道も埋まっています。
まずはトイレのある第二ケルンまで。
4/27は悪天候で、前進が難しいほどだったそうです。残念な事故もあり、撤退した人、ビバークした人もいたそうです。
変わって今日は好天ですが、午後から下り坂の模様です。
融雪の状況によっては、この木道が完全に露出していることもありますが、春山は天気次第で一気に冬山に逆戻りしますので、前爪のあるアイゼンとピッケルは必携ですね。
ケルンを過ぎると、
トイレは、ここ一か所のみ。この先は山荘までありませんので、トイレを済ませます。
腐った雪でなかなか進みませんが、右手側は常に白馬三山が。
見えているのになかなか近づかない次のケルン。
すでに汗だく。
昨年はTシャツ1枚のみで登っても暑かったのですが、今日は曇り空のため、風が吹くと一気に寒くなります。
フリースを羽織って行動します。
このケルンが多少の悪天候でも道標になり、登山者を勇気付けてくれます。
第三ケルンを過ぎると、雄大な景色を眺めながら尾根を進みます。
右前方には八方池が見えるはずですが、まだ雪の下です。
夏場は、前方に聳えるギザギザの不帰ノ剱が湖面に映り、一面のお花畑と相まって天国のような風景が楽しませてくれます。
前方の白樺の林が下の樺です。
下の樺
白樺のトンネルの向こうの空は、鉛色に変わってきました。
アップダウンの尾根を越えると二つ目の白樺ゾーン「上の樺」。
この辺りは、白樺があるからか、「シロヒトリガ」か「カレハガ」の毛虫が雪の上にいます。
他にも、カワゲラ?なんかも雪の上を歩いています。
ピピピピピ、ヒョヨヨッヒョヨヨ、チュチュッっと囀るのは、お馴染のイワヒバリです。
一面雪の銀世界ですが、もう春なんですね。
さらに丸山ケルンまでは、壁のような直登箇所がいくつか現れます。
うんざりしながら、一歩一歩進むしかありません。
コンビニの抽選で当たったミネラルウォーターを4リットルも担いできたことを後悔します。
雪を溶かして飲むのはなんとなく・・・なので、担ぐしかありません。
あ、山荘には500mlのミネラルウォーターが300円で売っています。
でも、悪天候でヘリが飛んでいなかったら大変なので、いつも担ぐようにしています。
ハイマツを傷つけないように慎重に。
丸山ケルン。
天気はゆっくり確実に悪くなってきました。
ここからはずっと尾根を歩きます。
雪庇と滑落に注意しながら、トラバース気味に進む箇所もあります。
明日は天気が崩れるようなので、下山してくるお客さんがたくさん。
途中、このブログの読者の方数人に声をかけて応援してもらい、元気100倍です!
もうちょい!
ヘリポート手前には、狭い尾根がニ箇所あります。
ザックが重たいのでバランスを崩さないように注意しながら。
一番緊張したのは、最後のトラバース。
ずぶずぶと緩んだ急傾斜を進みます。
足元が崩れないように慎重に。
昨年は、岩肌が露出していて、ここまで怖いルートではありませんでした。
※二日後の下山時はここがさらに雪に埋まっていて、とても怖い思いをしました。
なんとか通過して、山荘裏のヘリポートに。
なんと富山側は青空が見えます。
水蒸気の夢の断片のような雲が、風に流れて、扉を開けたような世界が出迎えてくれました。
頑張って登ってきた甲斐がありました。
ここからアイゼンを外して右側に迂回して山荘に向かいます。
受付をすると、木曽駒ケ岳、宝剣山荘のお姉さんが♪
テント場は、昨年とは違って、別館裏の斜面になります。
悪天候のためか、たったの3張りしかありません。
斜面といっても、雪で埋まっていますので、フラットです。
二晩過ごす寝心地の為に、床を馴らして設営します。
設営はポールの繋ぎ目が雪に触れないように気を付けながら。
それでも厳冬期の「一刻も早く設営しなければ凍って死ぬ!」といったこともなく、ゆっくりマイペースで、しかも素手で設営できるのも春山のありがたいところです。
夜の強風に備え、スノーブロックを積み上げます。
唐松岳頂上山荘は西に向かって正面となり、剱岳を眺めながら過ごせる絶景のテン場です。
コンビニで買ったおにぎり、味噌汁でお昼ごはんを済ませ、のんびりします。
どうやら雷鳥の縄張りにテントを張ってしまったようです。
縄張り争いをしている三羽の雷鳥。
お馴染の鳴き真似で参戦するパートナー。
テント場がカオス状態に!
日が暮れ、シュラフに潜り込んだ後も縄張り争いの鳴き声が聞こえていました。
夜中は風が強くなり、雪も降ってきました。
何度かトイレのためテントの外に出てはガイラインの調整と、フライの隙間に積もった雪かきをしました。
外はかなり寒くシェルについた雪でテントの床も濡れてきます。
湿度の高さ。酸素の薄さによる息苦しさ。なかなか過ぎない時間。
これこれ、この感じ♪自分が山にいることを実感します。
<唐松岳二日目>
翌日は、悪天候のため、ピークアタックはあきらめました。
昨年は地面が見えていましたが、今年は長~い雪面のトラバースです。おまけに気温が高く、ずぶずぶと踏み抜くため、危険と判断しました。
登頂の記事はこちらをどうぞ↓
一日のんびりDayに。
結局この日は、テントは私たち1張りだけ。
小屋泊も一人。
昨夜途中でビバークして到着した二人組。
閑散とした小屋周り。
時折ガスが晴れると、圧倒的なオーラを放つ剱岳が。
山荘は水作りで大忙しです。
山荘のお姉さん方の、かっこよく働く姿に触発され、真似して雪切り。
北アルプスの雪は切り出しやすい♪
そして、スノーブロックのリフォームをしたり、
いびつなイグルー作り。
今日も天候が悪いので雷鳥がたくさん。
仁義なき戦いを繰り広げています(笑)
時々見せる劔の雄姿を眺めたり、雷鳥が近くに現れたり、こんなに贅沢に過ごせるテン場はなかなか無いのではないでしょうか。
<三日目>
夢のような時間はあっという間に過ぎていきます。名残惜しいですが下山です。
唐松岳頂上山荘のお姉さん、宝剣山荘のお姉さんと記念にパチリ!
本当にお世話になりました。
また来まっす!!
出発すぐ、いきなり踏み抜く!
ザックが重たいので、慎重に足を置くと・・・
また踏み抜く!ひぃ~!
例の恐怖箇所!先が切れ落ちていて見えませんが、すぐ下を左にトラバースします。
恐怖のトラバース
片足の幅は切ってありますが、数か所派手に踏み抜いた跡があります。
雪はズブズブなので、ピッケルではなくポールを短くしてパスします。
谷川は急傾斜に切れ落ちていますが、岩も露出していませんし、もし滑落しても、最悪手で雪面を抱えれば数十メートルで止まるでしょう。
あ、でもできればピッケルがベストですね。
ブレード付きのポールも便利そうですね。
ただしポールに頼り過ぎると、付いた雪面が緩い場合、バランスを崩すので要注意です。
ポールの長さを戻します。
こんなときも防寒テムレスなら滑らず便利ですね。
そして痩せ尾根
ここまでクリアすれば、一安心です。
緊張で喉がカラカラになります。
また雷鳥!
片側は雪庇なので、注意しながら進みます。
上の樺手前は尾根が分岐しているので、視界不良時は、間違わないように要注意です。
あの先は左に下ります。
上の樺
そして下の樺からは進むルートが見えます。
高度を下げると、みぞれは明るい雨に。
ずんずん降ります。
筋トレのために、トレッキングルートは使わずに、アイゼンを履いたまま八方池側の下ルートを進みます。
雪が腐っていて消耗します。
あっという間に八方池山荘。
・テント泊のポイント~寒さ対策など~
<食事のポイント>
唐松岳のテント泊でポイントになるのは水の確保です。
だいたい気合で担ぎますが、できるだけ水を使わずに調理できるメニューがおすすめです。
メニュー①
今回は、サンドイッチがメインになりました。
色々な種類のパンを持っていきましたが、
ドイツのプンパニッケルという黒パンがオススメです。
写真は撮り忘れました(汗)
味は好みが分かれますが・・・それにかなり噛みごたえがあり、顎の力を試されます。
フランスパンとは違って、水分を多く含んでいるので、もちもちした食感が好きです。
またカラメルを使っているので、他の黒パンと違って、ライ麦独特の酸味が中和されているのもポイントです。
それに普通のパンよりずっと日持ちするのが、登山にぴったりですね。
このパンをスライスして、クリームチーズや、スモークサーモン、ベーコン、コンビーフなどを挟めば、まったく水を使わずに食事ができます。
最近は様々な缶詰がありますので、工夫するのも楽しいです。
山中に潜んだゲリラが、黒パンと塩だけを持って、先進国の軍隊を退けた逸話もあり、ロマンを感じるパンです(笑)
メニュー②
パンだけではさすがに飽きてしまうので、もう一パターン。
お馴染のパスタです。
サラダスパゲティー用の細いパスタを使います。
どのメーカーも、一袋だいたい150g~200gになっていますので、これで二人分になります。
一袋茹でるのに、水は100ccほど。
茹で上がる頃には、丁度水分がなくなってきます。(少し残るくらいが良い)
また、短いので、登山用の小さな調理器具でも茹でやすいです。
そこに、かけるだけのソースをかけて出来上がりです。
ポイントは、ソースがキンキンに冷えていると美味しくないので、パウチのまま服の中に入れて体温で温めることです。
好きなソースを複数持っていけば飽きずにバリエーションを楽しめるのでオススメです。
しかし!
黒パンもパスタも、のどが乾いてたくさん水を飲んでしまいました(苦笑)
がぶ飲みしないように、パーコレーターで淹れたアツアツのコーヒーにしておくと、満足感があると思います。
<防寒対策のポイント>
防寒対策のポイントは、テントの床からの冷えです。
これは、マットの性能が一番有効だと思います。
私の場合は、アルミ蒸着の暗幕シートをテントの外に敷き、内部はサーマレストの片面がアルミ蒸着されたものの下に、使わないスパッツやスタッフバックをぐちゃぐちゃに敷いて、空気の層を作っています。
「寝心地は妥協できない!」という場合は、エアマットはパンクしたら効果がなくなってしまうので、自然に膨らむセミエアのものが良いと思います。
厳冬期にパンクしたら、それはそれは悲惨な目に合います。
それから、下半身がどうしても冷えます。
対策はダウンパンツを履くこと。
これだけで、かなり快適に眠ることができます。
シュラフは、昨年はモンベルのバロウバック♯3、今年はナンガのオーロラDX900を使用しました。
バロウバック♯3でも、中にダウンジャケットを着ることで対処できますし、厳冬期用のナンガでは、ダウンを着なくても温かく眠れました。
担げる重量に合わせてチョイスすると良いと思います。
使い捨てカイロや、ハクキンカイロもかなり暖かいです。
使い捨てカイロの場合は背中に貼ったままずっと仰向けで寝ていると、床の寒さに負けて暖まらなくなってしまうので、時々寝返りをすると暖かさが復活します。
それから、ナルゲンボトルに熱湯を入れて、湯たんぽを作ると、朝まで暖かいです。
<フライ・外張りは?>
「残雪」というと冬用の外張りを使った方が良いのか、あるいは夏用が良いのか迷うかもしれませんが、
ずばり、残雪期は夏用の外張りを使うべし!
冬用の外張りは、雪を想定しているので、撥水性がありません。
春山は、気温によっては、雨やみぞれになることもありますので、夏用でないとびしょ濡れになってしまいます。
もし、季節はずれのドカ雪が降った場合は、外張りと地面の隙間が埋まらないように、夜中に雪かきすれば良いだけです。
埋まってしまうと、最悪窒息してしまいます。
(実際は大丈夫だと思いますが・・・)
装備のポイントをまとめてみました↓
・唐松岳 残雪期の難易度
残雪期の登山の難易度は、雪の具合で大きく左右されます。
一番の核心は、ヘリポート手前の急斜面のトラバースです。
融雪が進んで地面が見えていれば良いのですが、雪で埋まっているとかなり危険です。
特に下山時に恐怖を感じます。
晴天の翌朝など凍っていて、かつトレースが無い場合は、時間をずらしたり、ピッケルで足場を切りながら進む必要があります。
また、雪が緩んでいると、そのまま踏み抜いてバランスを崩し滑落する危険があります。
唐松岳に限らず、春特有の不安定な天気によって、難易度・・・というか危険度が変わってきます。
暖かいと雨になり、雪面が不安定になりますし、翌朝冷えればガチガチのアイスバーンになります。
また、雪の中での濃いガスは、夏とは別物のホワイトアウトになってしまいます。
下界は暑くても、一気に厳冬期の山に逆戻りすることもありますので、天気が微妙な時は要注意です。
前爪のあるアイゼン、ピッケルは必携です。
天候や、登山道のコンディションが悪いと、行動時間も長くなり、体力を消耗して行動不能になることもあります。
日帰りの場合でもビバークできる準備はしておくと良いと思います。
・まとめ
融雪の状況はその年によって違いがあるので、冬の装備と覚悟は必要だと思いました。
今年のGW前半は天候がいまいちで、各地で山の事故がありました。
唐松岳は、グリーンシーズンは北アルプス入門にオススメの山ですが、この時期は体力を消耗しますし、山荘手前は危険個所もあります。
春山の変わりやすい天気にも要注意です。
残雪期のテント泊は慣れてきましたが、同じ山域でも毎年状況が違うので気が抜けません。夏山とも冬山とも違う、独特の難しさをいつも感じます。
知識や技術に加え、判断力を鍛えなければと思いました。
唐松岳&頂上山荘、また来るよ~!