焼岳 上高地から日帰り登山
上高地に来ると、いつも胸がワクワクします。
特に、釜トンネルを抜けて目に飛び込んでくる、荒々しい焼岳の下堀沢。
大正池に影を落とす佇まいも、「これから北アルプスに登るんだ」という気持ちを湧き立たせてくれます。
今回は夏山シーズンに向け、身体慣らしのために登ってきました。
・焼岳の概要
焼岳は、北アルプスの南部、長野県と岐阜県の県境にある標高2455メートルの山です。その名前が示す通り、活火山で、岐阜県側では硫黄岳とも呼ばれていたそうです。
大正池は、この焼岳が大正4年に噴火し、その泥流が梓川を堰き止めたことで一夜にして誕生したそうです。日本百名山にも選出されています。
アクセスがしやすく、日帰り登山が可能なので、人気があります。
・焼岳へのアクセス
焼岳の登山口は二つあり、最短ルートは中の湯登山口から登る「新中の湯ルート」。
ただし、こちらは登山口の駐車場が15台と少なく、すぐに満車になってしまいます。
どうしてもこのルートを行くのであれば、麓の沢渡に車を駐め、タクシーで登山口に向かうと安心だと思います。
今回は、沢渡に駐車し、タクシーで上高地の帝国ホテルに向かい、裏の登山口からアタックしました。
こちらは、行動時間は長くなりますが、上高地特有の巨木に囲まれた明るい森を、鳥の囀りを聞きながら登ることができます。
また、上高地バスターミナルから帝国ホテルの間も、歩いてたったの15分で梓川の遊歩道が整備されているので、上高地を観光する楽しみもあります。
・さわんど駐車場
夜中12時に、駐車場に車を滑り込ませると、ガラ空きです。梅雨の時期はだいたい空いているそうです。
料金は一日600円。
トイレはもちろん、足湯や更衣室まであります。
目の前に自販機もあるので便利ですね。
<タクシーについて>
タクシーは早朝4時半頃には駐車場に並び始まります。沢渡に点在する各駐車場の駐車状況を無線連絡をし合いながら配車しているようです。
料金は、沢渡から上高地まで一律4200円。
相乗りすれば人数で割ることができます。
今回は帝国ホテルで降りますので、バスではなくタクシーを利用しました。
いつものように、釜トンネルを抜け帝国ホテルへ。
トンネルを抜けるといつも真っ先に目に飛び込んでくるのが焼岳です。大正池に映る勇姿は、山に来たことを実感させてくれます。
・焼岳 コースタイム
上高地からのルートは、山と高原地図によると
帝国ホテル→田代橋・・・5分
田代橋→焼岳小屋・・・2時間50分
焼岳小屋→焼岳北峰・・・1時間10分
焼岳北峰→焼岳小屋・・・40分
焼岳小屋→田代橋・・・2時間10分
田代橋→帝国ホテル・・・5分
合計7時間
となります。
実際の私のタイムは、
帝国ホテル→田代橋・・・5分
田代橋→焼岳小屋・・・2時間10分
焼岳小屋→焼岳北峰・・・1時間20分
焼岳北峰→焼岳小屋・・・1時間
焼岳小屋→田代橋・・・1時間10分
田代橋→帝国ホテル・・・5分
合計5時間50分
となり、焼岳小屋から山頂のピストンが歩きにくく、時間がかかってしまいました。
・焼岳 ルートの詳細(上高地ルート)
焼岳、いざゆかん!
<帝国ホテルから焼岳小屋>
まずはホテル裏、梓川沿いの公衆トイレへ。
この先は、焼岳小山までトイレがありませんのでここで済ませます。
田代橋を渡り川沿いを下ります。
西穂高岳の登山口を通り過ぎ、しばらくすると焼岳の登山口です。
火山噴火注意の看板があります。
噴火情報は気象庁をチェック済みです。
7月には熊の目撃情報もあったようです。
念のため熊鈴をぶら下げます。
焼岳は噴火だけではなく、噴火によっての岩質が脆く、落石の危険もあります。
堆積した泥濘が土石流になる危険性もあります。
まずは、上高地らしい緑の明るい森を進みます。
峠沢の押出のあたりから徐々に登山道らしい岩の傾斜が混じるようになってきます。
ここ連日は長雨でしたが、泥濘も少なく歩きやすい。
砂防ダムの堰堤は、苔生して、ラピュタのような雰囲気があります。
樹林帯はリボンの目印が少ないので、登りの時にしっかり道を覚えておかなきゃ。
暑い。
鼻の先、顎の先から汗が滴り落ちます。
視界が開けてきました。左側は峠沢線の崖になっています。
ハシゴが登場しました。
針金で固定しているだけなのでぐらぐら動きます。
お次は桟道。
またハシゴ。
またまたハシゴ。
また。
こんな感じでハシゴがたくさん。
振り返ると大正池と霞沢岳が見えます。
樹林帯を抜け、藪の広場の向こうに長いハシゴが見えます。
高さは8メートル程。
アルミ製のハシゴを2本連結させ、番線で岩に固定してあります。
岩肌とのクリアランスが狭く掴み所が少なく、おまけにアルミがしなるので、揺れて緊張します。
ハシゴをクリアしたらすぐにクサリ場です。
クサリは細く、つるつる滑ります。
岩肌も濡れているので緊張します。
クサリを越えると樹林はなくなり、峠沢を挟んで焼岳を眺めながらの道のり。
クマザサが風に揺らぐ斜面を登って行きます。
お花も咲いています。
焼岳小屋まで121歩の表示が。
実際に数えたら138歩で小屋。足が短いのか・・・(笑)
こじんまりとした、趣きのある可愛らしい小屋です。
<焼岳小屋から焼岳北峰へ>
この先は脆い岩稜を進みますので、ヘルメットを装着します。
10分程で展望台に。
お花もたくさん咲いていて元気をもらいます。
綺麗なコケの生えた石が点在する道をわずかに下ります。
するといよいよ焼岳への登りです。
今日、慣らしで履いてきた新しい登山靴のせいで、つま先が痛くなってしまい、ペースが落ちます。
硫黄分で黄色くなった岩や、鉄分が酸化しピンク色になった岩がごろごろ。
お花の咲き方、コケの色、気候など、北海道の旭岳にとても雰囲気が似ています。
つづら折り進むので、落石しないように慎重に。
噴気が上がっていて迫力があります。
火山ガスで目と喉が痛くなります。
酷いときは、濡らした手ぬぐいで口を塞ぐと良いそうです。
岩を掴んでよじ登るような箇所では、岩が温かい。火山なんですね。
北峰直下は、岩の壁が覆いかぶさるように出迎えます。
もうちょい、ガンバ!
登頂です!
山頂は、中の湯から登ってきたお客さんも合流し、なかなか賑わっています。
ちょうどガスも晴れ、槍ヶ岳、奥穂高、西穂高がきれいに見えます。
このまま西穂高山荘まで縦走してラーメンを食べるのもいいなぁ。
Fyuseで撮りました。
正面に荒々しく聳える南峰は登山禁止となっています。
眼下にはエメラルドグリーンの火口池、正賀池。
おなじみの、かっこいい写真が撮れる岩で。
あれほど暑かったのに、風が冷たく、震えが出ます。ソフトシェルを羽織り、食事にします。
するとパートナーが「うわぁ~!」と奇声を発します。
どうやらガス缶を忘れたようです。
今日は鍋焼きうどんを作ると意気込んで、大型の五徳が付いたストーブに、家庭用の鍋、ネギや油揚げ、カマボコ、伊達巻まで担いできたのに、ただの重りになってしまいました。
結局食べなかった朝ご飯用のおにぎりと、バナナで済ませます。
冷たい伊達巻を齧りながら、パーコレータを握りしめ落ち込むパートナーを励まし、名残惜しいですが下山です。
悲しさの漂うアザミとパートナーが風に吹かれています。
<上高地へ下山>
下山も焼岳小屋までは、崩れやすい岩稜帯なので慎重に。
岩の一段が大きなところもあるので、ポールがあったらよかった。
可愛らしい緑色の屋根の焼岳小屋を目指します。
登り同様、ほとんどのお客さんは中の湯に降りていきますので、ほとんど人がいません。
1時間ほどで焼岳小屋。
登りの時から目をつけておいた、お土産の手ぬぐいを入手します。
最近の山小屋手ぬぐいはデザインも増えてきて、新作が出るとついつい買ってしまいます。
冷えたコーラでエネルギーをチャージします。
無料のレンタルヘルメットもありました。
宿泊者専用かどうかは、未確認です。
さぁ、下山後の温泉を楽しみにぐんぐん進みます。
クサリは下りの方が恐怖感があります。
ハシゴもかなりの高度感と、揺れが恐怖感を煽ります。
「こんなに登ったんだなぁ」と、いつも実感しながらの下山です。
樹林帯では、やはり目印の少なさと、人の踏み跡を辿ってしまったことで、道をロストしてしまった箇所もありました。
約1時間で上高地です。
・まとめ
グリーンシーズン幕開けの、身体慣らしとしては、上高地からのルートは丁度良い負荷になりました。
下山は、新中の湯ルートで降りて40分程歩けばバス停がありますので、そちらに降りるも楽しそうですね。
核心は、樹林帯を抜けてすぐの長いハシゴとクサリ場です。
アルミの揺れるハシゴに、細くて掴みにくいクサリ。クサリはスラブなので要注意です。ホールドを探して登る方が楽かもしれません。
ハシゴは3人が連なって登っている場面もあり、初心者もチャレンジしやすい山の半面、人的な危険度も増すようでした。
また、活火山であることを忘れずに、ヘルメットを持って行って良かったと思いました。
焼岳、また来るよ~♪