裏銀座縦走 四日目~黒部五郎岳へ~
昨日は水晶岳から三俣山荘まで。
連日の疲労が蓄積していますが、今日は今回の裏銀座縦走の目玉のひとつ、黒部五郎岳をピストンします。
・三俣山荘のお弁当
8/13
起床は2:45
外はまだ暗闇の中、昨日注文しておいたお弁当をいただきます。
これがまた美味しい♪
こうして誘惑に負けて、持ってきた食料がなかなか減らないのは、いつものことです。
・三俣山荘から黒部五郎小屋
深夜3:40
アタックザックを背負い、約8時間のピストンに出発します。
ヘッデンの明かりを頼りに、
黒部五郎岳、いざ、ゆかん!
暗闇のテン場を泥棒のように抜け、沢を渡ると登山道です。
雪渓が登場しました。
だいたい25メートル程。
薄っすらと弁柄が付いているので、ルートはここで間違いないはず。
昨日溶けたところが、深夜に凍り、ガチガチのツルツルです。
トレースもはっきりしません。
斜度はあまりありませんので、ポールを使い、べた足で進めば問題ありません。
心配な方はチェーンスパイクがあると良いと思います。
その後は木の根が張り出した樹林帯を抜けます。
歩きにくいですが、ヘッデンのおかげで良く見えます。
三俣蓮華岳方面への分岐。
樹林帯を抜けると、徐々に白んできた山肌をトラバースします。
この辺りは、例年だと残雪がありトラバースとなるので、軽アイゼンが必要です。
今日は笠ヶ岳がずっと視界に入ります。
日の出とともに植物も目を覚まします。
この辺りがチングルマ平。
広いカールなので、視界不良の時は道迷いに要注意ですね。
黒部五郎小屋が見えてきました。
ここから結構長く感じる下りが続きます。
帰りは逆にここを登り返すと思うと気が滅入ります(笑)
なかなかのハイペースで小屋に到着です。
赤い三角屋根が、熊笹の草原に積み木のように佇んでいます。
おこじょが描かれた可愛い看板。
長野側からは本当に遠かった。
ここでテント泊するのも魅力的ですね。
静かな山深いところで、星を眺めながら眠るなんて素敵だろうな。
ここでトイレを済ませ、小休止。
・黒部五郎小屋から山頂へ
序盤は藪と樹林帯を越えます。
森を抜けると、延々と続く石畳状のルート。
今日は荷物が軽いので、昨日までと比べ羽根が生えたように身体が軽いです。
こんなことならダイエットしておけばよかった(悔)
そして、一気に目に飛び込んできたのは、楽園のようなカール!
緑の絨毯に巨岩が散りばめられ、青い空はくっきりと稜線に切り取られています。
この岩達は羊群岩と呼ばれています。
確かに羊の群れのようですね。
これだけのスケールのカールは日本でも他に無く、独特な景観を醸し出しています。
これが日本百名山に選ばれた所以でもあります。
大好きな千畳敷カールを思い出してホームシックになります。
自分が半分は中アの人間になっているんだなぁと感じます。
さあ、ここからはなかなか大変です。
それでも千畳敷で鍛えた「中アの根性」で、さらにペースを上げます。
前の人が先を譲ってくれると、有難いのですが、さらにペースが上がってしまい、休むのも格好がつかず、ハンガーノック寸前です。
心肺が限界にならないギリギリのペースを保ちながら、休むことなく、斜度を増す道を一歩一歩。
振り返ると美しいカールが後押ししてくれます。
岩の芸術を進みます。
北ノ股方面の分岐、黒部五郎の肩。
クライマーズハイ気味なので、休むとだるくなりそうです。このまま最後の急登もガンガン進みます。
空に向かって飛び出せそうな稜線を進みます。
標高2840m 黒部五郎岳、(変なポージングで)登頂しました~!
水晶岳に続き、ここもまた北アルプスの奥のさらに奥。
北側には剣~立山。北アルプスでもっとも美しいと言われる薬師岳。
さらに赤牛、鷲羽、水晶。
そして槍、穂高。
笠の向こうに乗鞍。
周りをぐるりと名峰が目に飛び込んできます。
心地よい風に吹かれ、感嘆の息を飲みます。
眼下には登ってきたカールもあり、大展望が独り占めです。
・黒部五郎小屋から三俣山荘へ
ずっとここに居たいですが、下山もかなり長い道のり。
さらに、タイミングが良ければテントをもっと快適な場所に引っ越ししたいので、泣く泣く下山します。
カールを眺めながら。
ずっと奥には槍がしっかりと見えています。
途中の小川で顔を洗い、こんなに長い距離を登ったのか~、と実感しながら進みます。
やっと小屋が見えてきました。
クマザサの絨毯を風が撫で、葉っぱがキラキラ輝いています。
冷たいビールの誘惑・・・
乾杯したいところですが、まだまだ酔っぱらっている場合ではないので、ポカリスエットを購入して、先に進みます。
山に入ってからずっとポカリスエットで生きているような気が・・・。
身体も疲れがたまっていますが、どこを見てもフォトジェニックな景色に癒されます。
鷲羽岳が見えます。
雪渓も程よく溶けて歩きやすくなっていました。
かなりの歩行時間でしたが、なんとかテン場に到着しました。
昨日まではザックの重さもあり、コースタイムが伸びず、「こんなはずじゃ・・・」と落ち込んでいましたが、今日は大満足の山行でした。
テントの設営場所も無事に引っ越しを終え、ご褒美は沢で冷やしたフルーツ缶!
柑橘の甘酸っぱさと、シロップの甘さで元気100倍です。
沢で顔を洗い、足を浸け、岩に腰掛け三俣からの景色を堪能します。
流れる澄んだ水は、骨に染みるほど冷たい。
雲の流れるスピードと同じく、ゆったり流れる時間 。
夜は三年連続で山でお会いできたgaboさんファミリーと合流し、gabo家の食料に群がります。
パスタ、うどん、ハムステーキ・・・。
みんなで食べるからさらに美味しい。
ここで出会ったYUKAさんも一緒に楽しいひと時を過ごします。
なんと単独で裏銀座に来たそうで、しかも2回目!
途中雷雨が降り出し、自分のテントに避難します。
フライに叩きつける雨音。
入山してからずっと晴天だったので、このくらいの雨も今回の縦走のスパイスになります。
雨が止んだ隙にトイレを済ませ、明日はいよいよ下山だなぁと考えながら眠りにつきます。
・黒部五郎岳 コースタイム
三俣山荘→三俣蓮華岳分岐1:00
三俣蓮華岳分岐→黒部五郎小屋1:00
黒部五郎小屋→黒部五郎岳1:45
黒部五郎岳→黒部五郎小屋1:30
黒部五郎小屋→三俣山荘2:30
合計行動時間7時間45分
・まとめ
とにかく暑さのせいでバテてしまいます。
なるべく涼しい時間帯に行動したいので、深夜出発の計画になりました。
そのぶん、雪渓が凍っていたり、道間違いの危険性もありますので要注意です。
ヘッデンはそこそこパワーのあるものが良いと思います。
チングルマ平はだだっ広く、迷いやすいので200ルーメンは欲しいところです。
この山行では夜間行動が多いので、ブラックダイヤモンドのスポット(200ルーメン)を使用しました。
また、充電式の専用バッテリーのモデルは、長期縦走では不便なので、乾電池が使えるモデルがおすすめです。
行動時間も長く、ここに来るまでの疲労の蓄積もあり、今回もトレッキングポールに助けられました。
膝痛に関しては、ニューハレテープを使用しました。効果は人それぞれかもしれませんが、全く痛みが出ませんでした。
とにかく、言葉では表現しきれない絶景が待っています。
一瞬一瞬の光や風が織りなす黒部五郎の景色を、五感で感じ、またとない人生の瞬間をここで過ごせたことは本当に幸せでした。
・五日目 三俣蓮華岳編につづく