5月 ゴールデンウィーク
まだまだ雪の残る北アルプス 唐松岳
毎年どの山に行こうか悩みますが、今年は何度もリピートしている唐松岳へ、テント泊で登ってきました。
・唐松岳の概要
唐松岳は北アルプスの後立山連峰に位置し、標高は2696m。
日本では数少ない氷河のある山です。
北アルプスの中でも、ゴンドラとリフトを利用し、ルート上の危険個所も比較的少ないので、初心者におすすめと紹介されることも多いです。
グリーンシーズンは、たくさんの高山植物が咲き誇り、整備された木道を八方池まで進むと、湖面には不帰嶮と白馬三山が移り、風光明媚な山岳観光スポットでもあります。
残雪期は、気温も上がり、装備も気持ちも軽やかになりますが、春の天候は一気に悪くなるし、雪崩のリスクもあるので、注意が必要です。
実際にこの時期は事故も多発しています。
・唐松岳のコースタイム
山と高原地図のコースタイムは概ね合っています。
私の場合は、20kgのテント泊装備で・・・
八方池山荘→第二ケルン0:50(休憩10分)
第二ケルン→丸山ケルン2:00(休憩10分)
丸山ケルン→唐松岳頂上山荘50分
計4時間
その年の融雪具合によって、所要時間も変わってきますので、余裕を持った計画が必要です。
・唐松岳へのアクセスと駐車場
アクセスは長野道の安曇野ICを降ります。
そこから長野オリンピックの会場になった八方尾根スキー場まで下道になります。
安曇野ICからはコンビニもいくつかありますが、ガソリンスタンドは夜中は閉まっているところが多いので要注意です。
<駐車場>
駐車場はゴンドラリフトアダムのすぐ横にあります。
一日1000円。
朝方、集金のおじさんが来てくれます。
無料の駐車場はここから白馬駅の方に徒歩5~7分ほど下ったところに、八方第3駐車場、第2駐車場、第5駐車場があります。
夜間はトイレが閉っているので、第2駐車場の公衆トイレまで行くことになります。
<ゴンドラとリフト>
登山の起点、八方池山荘までは、八方アルペンラインという、八方駅から八方池山荘まであるゴンドラとリフトを乗り継ぎます。
料金は往復3300円。3日間有効なので、テント泊や小屋泊でも大丈夫です。
ザックが15kg以上ある場合は、追加で500円がかかります。
始発は8:00~
例年7:45からチケット売り場が開きます。
今年は、雪解けが早く、バックカントリーのお客さんがいなかったので、ほとんど並ばずに購入できました。
リフトからの眺めだけでもすでにワクワク。
ゴンドラとリフト2本を乗り継ぐと、約20分で標高1830mの八方池山荘に到着します。
・唐松岳の登山ルート
トイレを済ませ、支度をしたら、
残雪の唐松岳、いざゆかん!
<八方池山荘から第二ケルン>
第二ケルンまでは、歩くのも比較的容易なハイキングコースが整備されています。
重たいザックと、ソールの固い冬靴で歩きにくいですが、ウォーミングアップには丁度良い距離です。
春の日差しはとても強く雪面に反射し、サングラス、日焼け止めは必須アイテムです。
動くととても暑く、Tシャツ1枚でも汗だくになります。
約一時間で第二ケルンです。
公衆トイレは山荘までここが最後ですが、冬季は閉鎖しています。
開いていたときもありましたが、今年は閉鎖中。
<第二ケルンから第三ケルン>
ルートの先を見ると、まだまだ夏道の箇所が多いので、アイゼンは装着しません。
八方ケルン到着。
正面右手には、不帰嶮と白馬三山の稜線が青空を切り分けています。
左手は、五竜岳、鹿島槍。
すぐに第三ケルン
雪が解けてきたら、、右下の八方池が姿を現し、その湖面に峰々を移し込む姿は圧巻です。
ここまではハイキングコースとして、人気のルートになります。
ここまでソリを担いできた家族連れや、軽装備の方もいます。
<第三ケルンから丸山ケルン>
さぁ、ここからが本格的な登山道となります。
第三ケルンからは、さらに眺望が広がり、これぞ「八方尾根」といった様相です。
少し進むと、ダケカンバやイタドリの林が現れます。
林の入口あたりが、「下ノ樺」と呼ばれるところ。
林の出口に差し掛かり、先を見上げると、かなり勾配がきつくなっています。
ここでアイゼンを装着します。
雪はズブズブに緩んでいるので、ツボ足でも進めますが、楽に登りたい。
急登は、なかなか前に進まず、このルートで一番キツイ箇所です。
一つ目の急登を過ぎると、二つ目が。
ここを乗り切ると、丸山ケルンに到着です。
<丸山ケルンから頂上山荘>
この先は、瘦せ尾根のてっぺんに夏道が現れています。
ハイマツの根が出ているので、アイゼンやポールで傷つけないように進みます。
雪面をトラバースできそうなところは、なるべく雪面を進みます。
進む尾根の右側に唐松が見えました。
小屋裏の小山の手前は急斜面のトラバースで、毎年怖い思いをするのですが、今年はステップが切られてありました。
小山のてっぺんに出ると正面にどーん!
剱岳がくっきり見えます。
小屋で受付をして、テントを設営します。
<頂上山荘から唐松岳頂上>
テント設営を終え、のんびりしたら、日帰りのお客さんがいなくなった貸し切りの山頂を狙います。
山荘からは15分ほどで到着します。
振り返ると頂上山荘。
ことしは本当に雪が少なく、アイゼンもいらないほどです。
ただし、天候や融雪状況によって難しいルートになりますので、状況判断が大事です。
山頂からは360°の大展望。
剱~立山連峰、戸隠連峰、五竜、鹿島槍、遠くは槍ヶ岳に富士山までくっきり見えます。
山頂から不帰キレット側に雷鳥のカップルがいました。
いや、オスの雷鳥くんは、ちょっと離れたハイマツの陰からこっそり見ています。
ストーカかも!?
日が傾いて、雪面が黄金色に輝いてきたところで、テントに戻ります。
・テント泊の注意点
・設営場所について
テントの設営場所は融雪状況によって変わってきます。
今回は、夏と同じ斜面のテントサイトが指定されました。
・設営アイテム
設営には、雪の斜面をショベルで切り出して整地する必要があります。
おすすめは、軽量で、分解でき、シャフトが伸縮するもの。
形はなるべくフラットで四角いものの方が、使いやすいです。
ショベルを持ってこないと大変ですね。
それから、雪面にはペグが使えませんので、竹ペグを使います。
朝撤収するときに、もち凍って回収できなくても、麻紐を切って残置しても竹なので自然破壊になりません。あ、でもなるべく回収しましょう。
夜は床からの冷えが厳しいので、グランドシートはアルミ蒸着の暗幕シートがおすすめです。
・その他注意点
雪が緩いうちに、トイレまでのルートをつくっておかないと、夕方から朝にはカリカリのアイスバーンになってしまいます。
今回のように、テントサイトが斜面ギリギリの場合は、スリングとカラビナで荷物を固定しておくと安心です。
お隣さんは、ザックが谷底に滑落してしまいました。
・唐松岳頂上山荘について
頂上山荘は、とても綺麗で立派な建物です。
テント泊は1泊1人4000円
近年のコロナによる収容人数制限や、荷揚げヘリの燃料代の高騰。
物価高騰や、他にもトイレの処理にかかる費用などを考えると実費以下なのではないでしょうか。
未来の登山の在り方、山小屋の在り方を私たち登山者がどのように守っていけるのか、今問われているような気がします。
水場が貴重な頂上山荘は天水を主に使用しています。
天候等の条件では十分な量が確保できない場合もあるそうですので節水を心がけましょう。
自販機ではビール、水が売っています。
受付の売店でも飲み物が買えますが、営業時間が限られています。
・今回の夕食
今回は、最近の山ごはんで№1の、絶品ガーリックライスをつくりました。
作り方はまた別の機会に紹介します!
・残雪期のテント泊装備
残雪期は、雪山の装備を基準に、時期やその時の天候、ルート、山行スタイルに合わせて調整します。
<衣>
昼間は晴れていればかなり暑く、上半身はTシャツ1枚で十分なほど。
ただし、夕方から朝方にかけてはダウンジャケット、ダウンパンツが必要でした。
行動中は、天候が良いことがわかりきっていればソフトシェルが守備範囲が広いです。
他、シュラフが薄い場合は、象足があると暖かいです。
この時期は一晩で状況が変わり、同じ時期でもその年によって全然寒さが違うので、基本的には冬装備を持っておくと安心です。
靴は冬靴。
夏靴の方も見かけました。自身の耐寒性や、アイゼンとの相性で決めると良いでしょう。
グローブはお気に入りの、エルエルビーンの
プリマロフト・サーマ・ストレッチ・フリース・グローブ。
色々なメーカーのモデルを試して辿り着いたグローブです。
厚さが丁度良く、幅広い場面で活躍できます。
それから予備のウールグローブとシェル。
<食>
食事は雪上で調理するため、鍋料理など、器具一つで完成するメニューが楽です。
ガスカートリッジはノーマルは低温下では点火しないのでハイパワーガスが必要です。
PRIMUSのウルトラガスは廃版になってしまったので、今はコレを愛用しています。
私はいつも水を担いできますが、雪から作る場合は、大きめの鍋とゴミをろ過するコーヒーフィルターがあるとなんとか飲めるレベルになります。
<住>
テントの外張りは夏用(3シーズン用)です。冬用は防水性がないので雨で濡れると通気しなくなり、一酸化炭素中毒で死んでしまいます。春であれば夏用外張りが良いでしょう。
マットはクローズドセルしか信用していません。
インフレータブルがもしパンクしたら寒くて眠れなくなってしまいます。
シュラフは厳冬期用を使いました。
<他ギア>
残雪期に持っていくものを思いつくままにあげると、
スノーショベル、ビーコン、ゾンデ棒(ビーコン、ブロープはルートの状況で判断)
アイゼン(前爪のあるもの)
ピッケル(今回はほとんど使わず。竹ペグを回収するのに使用したくらいです)
トレッキングポール・・・これが一番のお助けアイテムでした。重たい装備で緩んだ雪を踏み抜くので、バランスを保つのに役立ちます。
サングラス・・・日差しは夏より強いので必須です。
日焼け止め、リップクリーム
竹ペグ、カラビナ、スリング
・まとめ
残雪期は、気温も高く、開放的な気持ちで雪山を堪能できるのが魅力です。
素手でアイゼンが装着できるし、テントの外でのんびり景色を眺め、バッテリーの減りを気にすることなく写真を撮ったり、楽しいことがたくさん。
でも雪崩、アイスバーン、天候の急変といったリスクは常にあります。
歩行技術も雪山と同じ。むしろ緩んだ雪面や夏道が交互に現れ歩きにくいです。
気持ちは軽くなっても、装備と技術はしっかり。色々な状況を徐々に経験しながら安全に登りたいと思います。
・YouTube
YouTubeにもアップしました。さらに詳しい様子や、絶景を動画でご視聴ください。