白馬岳 高山植物、雷鳥、雪の楽園をテント泊で登る
白馬岳は、北アルプス、後立山連峰の一番北側に位置し、標高は2932m。
杓子岳、白馬鑓ヶ岳と合わせ「白馬三山」として大人気の山です。
ルートはいくつかあり、距離は長いけど、整備されたお花畑の中を登る栂池コース。
それから、真夏でも雪面を登る大雪渓コースなどがあります。
今回は、小屋開け初日、まだまだ雪のたっぷり残る大雪渓コースを、テント泊で登ってきました。日本に自生する高山植物の8割にあたる345種類も見られ、日本一の花の名峰です。
・雪渓って初心者でも登れるの?
・本当に落石があるの?
・装備は何を持って行けばよい?
みなさんが気になるポイントを含め、予想よりなかなかハードなルートで、他の注意点もたくさんありますので、紹介します。
・テント泊登山の装備について
装備については、「軽量化」とか「ハイテク」ではなく、信頼性が高く、不足の事態にアイテム同士で機能を補い合えるものを選んでいます。
今回は、夜間の爆風で、テントが壊れてしまった方もいました。
私の装備はこちら↓
・白馬岳 猿倉~大雪渓ルート
猿倉を起点とする大雪渓コースは、登山者憧れのルートとして有名ですが、ひたすら直登が続き、落石も頻発します。
・駐車場について
登山口となる猿倉の駐車場は、猿倉荘に続く道路のちょっと下にあります。
結構広く、200台が駐車可能です。トイレも併設されています。
24時間出入り可能で、満車の場合は、さらに下の方に100台分の臨時駐車場が開設されます。
ただし、駐車場までの道中はかなり道幅が狭く、すれ違いが出来ないような箇所もあるので、運転に自信の無い方は、八方ゴンドラ第五駐車場から、バスやタクシーを利用すると安心です。
6月下旬 AM5:00
昨夜から降り続いた雨が、止もうとしている頃、駐車場に長野県警山岳警備隊の方が、注意喚起で来てくれました。
この時期の雪渓は、まだまだ前爪のあるアイゼンとピッケル、ヘルメットが必携だそうです。
先週も落石や落雪の事故があったそうです。
登山届をお渡しして、
白馬岳、いざゆかん!
<猿倉~白馬尻>
駐車場からすぐに村営猿倉荘です。
トイレも水場もあり、登山届もここで提出できます。
猿倉荘の真ん前の駐車場は、登山者用ではないので駐められません。
山荘脇から登山道が始まります。
すぐに砂利の防砂工事専用道路になります。
平坦な砂利道は、上高地から横尾のようなイメージで、ここがウォームアップ区間になりそうです。
白馬沢の沢音を聞きながら、そよ風に吹かれて歩いきます。
この時、この後始まる地獄の急登とは予想だにしませんでした(恐)
丸太橋を渡り、1時間ほどで白馬尻に到着しました。
白馬尻小屋はまだ建っていません。
真夏は、もう少し先から大雪渓が始まりますが、この時期は、ここから雪渓となります。
前爪のあるアイゼンを装着して、いよいよ大雪渓に取付きます。
<白馬尻~葱平>
この先は、どんどん勾配が増していきます。
落石は、冗談抜きに多発しますので、葱平までの2時間30分は、休憩することなく動き続けなければいけません。
常に上を注意しながら、ヘルメットも必ず装着します。
この、見えている岩すべてが落石です。
この岩も、気温が高くなるにつれて、下の雪が解けて「ズズズッ」と嫌な挙動をするので、ヒヤヒヤしました。
白馬山荘のスタッフさんが、ベンガラで赤いラインを引いてくれていますので、沿って登ると比較的安心です。
大袈裟ではなく10分間隔で、落石が発生しています。
杓子尾根側は、岸壁が露出しているので、「パカン、パカン」と音がするのですが、2号雪渓、3号雪渓からの落石は、無音で転がってくるので、本当に恐怖です。
雪渓上は、平らなところが無く、ずっと爪先上がりなので、足もパンプしてきました。
数歩登っては休み、左右の足を入れ替えたり、とにかく葱平まではひたすら登るしかありません。
勾配がきつくなって、ピッケルのスピッツェが刺さる程度の角度になったら、葱平の岩稜帯の取付きに到着しました。
このまま岩稜帯の脇の雪面を登っても良いのですが、ふくらはぎがパンパンなので、夏ルートを登ります。
白馬の岩は、他の山に比べて滑りやすいように感じます。
蛇紋岩という緑色の岩が特に滑りやすいです。
白馬は、花崗岩や玄武岩、蛇紋岩が入り混じっていることで、高山植物の生息数が日本一になっていますが、滑りやすい岩が急に現れるし、濡れいていると見分けがつかないのでやっかいです。
今回は、転倒がパートナーと合わせて1回ずつ、腰までの踏み抜きが1回ありました(恥)
最初は雪解けで濡れているせいかな?靴のソールの相性かな?とも思いましたが、白馬山荘で働くお友達も同じことを言っていましたので、間違いなさそう。歩きにくい。
岩稜取付きからちょっと進むと葱平です。
コースタイム2時間30分のはずが、2時間50分かかってしまいました。
<葱平~村営白馬頂上宿舎>
ここでアクシデント発生!
パートナーの足が激しく痛むそうです。
原因は、踵にできた巨大なマメ。
靴を脱いでみると、靴下が血で張り付き、剥がすとマグロの赤身にように!
一歩一歩ごとに焼けるような痛みになるそうです。
冬靴に夏靴下を履いてきてしまったせいで、隙間が大きくて、擦れてしまったようです。
ガーゼとテーピングで処置し、先に進みます。
このあとテーピングが傷に張り付いて、剥がすときにはテン場に悲鳴が響き渡っていました!!(ホラー)
この岩稜帯を左に巻くと、小雪渓のトラバース起点なのですが、雪面の状態も良いので直登します。
振り返るとなかなかの高度感です。
白馬山荘のスタッフさんが切ってくれたステップに合流します。
後ろは天空に突き刺さる天狗菱の雄姿が見えます。
小屋開け初日でベンガラが全部ひかれていないので、ルートがわかりにくいですが、切り出したステップの終点から左に折れて登ると避難小屋です。
この辺りから頂上宿舎までは、風が集まるポイントのようで、強風が吹いています。
まだまだ雪が多く、夏道よりも、雪面を進む方が楽そうです。
頂上宿舎への階段手前からはアイゼンを外します。
頂上宿舎が見えてきました。
目的地が見えてからが遠いのが、登山あるある。
疲れがピークですが、風に揺れる可憐なお花畑に元気をもらいます。
雪解けの水で濡れた階段を一歩一歩登ります。
葱平の岩稜帯で、アイゼンを外さなかったため、歩きにくくペースが落ちてしまい、この区間でもコースタイムをオーバーして、村営白馬岳頂上宿舎に到着しました。
・白馬岳頂上宿舎テント場について
テント場は小屋の裏。
幕営可能数は100張程です。
トイレが正面にあり、なかなかきれいに掃除されています。
水場もすぐ近くにあります。
注意点は、トイレが風を避けると思いきや、風の通り道になっていることです。
それからスマホの電波は、ありません。
頂上宿舎の受付周辺まで行くと電波が入ります。
今日は、テン泊一番乗り。
今夜も雨、風の予報なので、ペグダウンではなく、岩でしっかり固定して、水の溜まらない地形に幕営します。
このまま頂上を踏んでも良かったのですが、太ももが限界。
アタックは明日に。
気温も快適で、夏用シュラフにダウンパンツで過ごします。
夜半から暴風になり、後から来たテント泊の方は、テントが壊れそうで、一晩中悲鳴が聞こえていました。
見てみると、フレームが「H」の字に組み立てる有名な山岳テント。
軽量で人気がありますが、強風のときには注意が必要みたいです。
やはりテントは、フレームを「X」の字に組み立てる自立式が信頼性◎ですね。
ライペンのエアライズ(私のやつ)や、モンベルのステラリッジがおすすめです。
暗闇のテント内。「ボワンッ」と強風でテントがゆがむのを、時々手で押さえながら、一日目が終わりました。
・白馬岳頂上宿舎~白馬岳のルート
早朝、雨の音で目が覚めました。
今回は、贅沢に頂上宿舎の朝食を予約してみました。
バイキング形式で、地元の食材を使ったメニューが楽しめます。
朝食を終えた頃、雨もあがりましたので、山頂にアタックします。
まずは、白馬岳山荘まで20分、そこから山頂が15分。
お花畑のなかの広い稜線を登っていきます。
雨はあがったけど、ガスが濃く景色は残念。
天気は悪くても楽しめるのが白馬岳。
乳白色に包まれた稜線の足元には、ウルップソウやハクサンイチゲが咲き誇り、とても幻想的。
そして、こんな天気の日は雷鳥に会える確率もあがります。わくわく♪
呼吸が乱れることもなく、白馬山荘へ。
小屋で働くお友達に挨拶をして、小屋の中を見学させてもらいました。
「大規模」で有名ですが、大きいだけではなく、支配人さんの手作りの看板があったり、レンガを掘って作った表札もあります。
広々とした乾燥室や自炊室。
白馬岳の歴史を展示している歴史資料室も公開されています。
日本の登山史を牽引し支えてきた白馬山荘。
手作りの温もりと、安心で快適な設備。
今度来るときは是非小屋に泊まりたいなと思いました。
さて、ここから山頂はあと少し。
ちょっと進むと、白馬山荘を建てた松沢定逸氏のレリーフがあります。
松沢氏は、日本初の営業小屋を開業しただけではなく、様々な事業を興し、白馬村の発展に寄与した人物でもあります。
さらに進むと、山頂が見えてきました。
標識に三角点、方位版があります。
景色は残念ながら見えませんが、山頂に立った嬉しさは格別です。
昨日の大雪渓の登りが大変だったぶん、いつもより達成感を感じて、下山します。
白馬山荘への途中、、!!
雷鳥だ!
登山道の両脇に三羽もいます。
みんな朝ごはん中のようです。
反対側はカップルのようですね。
動画の撮影にも成功しましたので、是非YouTubeをご覧ください。
白馬山荘は、ほんとうに最高のロケーションに建っていますね。
あっという間に頂上宿舎のテント場に到着です。
・頂上宿舎~猿倉までの下山ルートと注意点
さて、雨で濡れて乾ききらない重たいテントを撤収して、いよいよ下山です。
下山のポイントを先に言っちゃうと
・白馬の岩は滑りやすい
・小雪渓はステップを通ること!
・大雪渓は下りでも時間がかかる
・ガスっているときはベンガラのルートが見つけにくい
・ポールに助けられた!
頂上宿舎から小雪渓までは、岩と角材の階段が多いですが、雪解けの水が流れていて、おまけに岩が滑りやすいです。
バランスを崩して地味に転倒してしまいました。
テン泊装備の場合はポールがあるとバランスがとりやすいです。
そして小雪渓。
それなりの高度感。
パートナーは小雪渓を真っすぐ下りましたが、私は怖いのでステップを利用しました。
この時期は凍ることは少なく、アイゼンも効きますが、カリカリの箇所とズブズブの箇所が入り混じっていて、見分けがつきにくいので、歩きにくく、バランスを崩して転倒してしまうと滑落します。
ちなみに途中からステップから外れて、斜面をトラバースしてみたのですが、ちょっと怖かたです。真っすぐ下る方が安心でした。
小雪渓を通過すると、葱平のある岩陵帯です。
素直にアイゼンを外して進みます。
パートナーは踵の靴擦れが痛むらしく、爪先下がりの方が痛くないといって、岩陵帯脇の雪面を降りていました。
岩は本当に滑るし、崩れやすい。
雪渓の岩の周りはこんなシュルンドがあるので注意が必要です。
大雪渓に差し掛かる頃には、下界からガスが湧いてきました。
大雪渓は午後ガスが発生しやすく、14時以降は立ち入り禁止になります。
ガスのせいで、ベンガラの赤いルートが見えません。
杓子尾根寄りに下っていきます。
ガスの晴れ間でベンガラを発見しましたが、思っていたより尾根側に来てしまっていました。
落石の危険があるため、ルートファインディングはしっかりする必要があります。
登りのときにGPSでログを取り、下山時はそれを見ながらベンガラを探せば良かったと思います。
疲労が蓄積し、コースタイムを巻くはずが、コースタイム通りの時間で白馬尻に到着です。
なかなか時間がかかりました。
登りはずっと爪先が上向きで、スネの横の筋肉がパンプ。
そして下山もずっと爪先が下に伸びたままなので、膝上の筋肉がパンプします。
白馬尻から先は、防砂工事用の砂利道に出るまでは、岩の上が滑りやすいのでポールに助けられます。
普段はポールを持参しても、滅多に使うことはないのですが、ここ近年で一番ポールが役立った山行でした。
下山後の温泉や、グルメのことを考えながら、やっと猿倉に戻ってきました。
ちなみに白馬村には、スノーピークやパタゴニアアウトレット、ノースフェースもあり、長閑な風景の中でショッピング、温泉、グルメも楽しむことができます!
・白馬岳 大雪渓ルートのコースタイム
<一日目>
猿倉~1:00~白馬尻~2:50~葱平~2:10~白馬岳頂上宿舎
合計6時間(休憩含む)
<二日目>
白馬岳頂上宿舎~0:20~白馬山荘~0:15~白馬岳頂上
白馬岳頂上~0:10~白馬山荘~0:15~白馬岳頂上宿舎
白馬岳頂上宿舎~1:00~葱平~1:30~白馬尻~1:00~猿倉
合4時間30分(休憩含む)
・白馬岳登山のポイント
大雪渓をテント泊で登るときのポイントは
①大雪渓は本当に落石が多い。
②大雪渓は休憩箇所が無く、疲労で体幹がブレるのでポールが役立つ。
③ガスっていると、ベンガラの印が見えない。
④意外と岩も滑る。
と、いったところが、注意点になります。
「雪渓」にこだわるのでなければ、少し時間はかかりますが、お花もたくさんあり、登山道も歩きやすい「白馬大池」から登るのがおすすめです!
おもしろかったけど、本当に疲れました~!
おいでなんしょ!白馬岳!
・YouTube
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危険個所の様子や、雷鳥の可愛い姿など、是非ご覧ください。
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