昨日は、気持ちのよい横尾までのハイクと、大曲を過ぎてからの、きついきつい登りを乗り越え、最高のロケーションに幕営できました。
2016年8月13日(土)
槍ヶ岳 登山 テント泊 二日目
お花摘みに行きたくなり、5:00起床。
清々しい空気を胸いっぱいに吸い込むと、まるで充電されているみたいです。
すでに山頂を目指していく人がけっこういます。
私は心地よい筋肉痛が出ています。
槍に朝日が反射して神々しさを感じます。
雲海に覆われた槍沢のU字谷。
さて、恒例のトイレレポートですが、殺生ヒュッテのトイレは、まぁ、そういうトイレです。
トイレまで距離がありますので、到着したら、まず息を整えてから入らないと、全部吸い込むことになります。
テントに戻り、朝食です。
メニューは無印良品のユッケジャンクッパ。
汁気が多いので、朝でも食べやすいです。
寒いので、ダウンを着たまま食事です。
ダウンは、正確にはダウンではなくて、パタゴニアのナノパフジャケットです。
プリマロフトですね。
多少濡れても保温しますし、コンパクトになりますので、気に入っています。
暖かすぎず、少し寒いくらいで、通年で出番は多いです。
ヒュッテ大槍のあたりから朝日が顔を覗かせると、一気にテント場が柔らかな光に包まれます。
7:00
山頂目指し、いざゆかん!
ピークアッタック
装備
装備はおニューのアタックザック、
オスプレーのウルトラライトスタッフバッグです。
今まで使っていたシートゥーサミットのウルトラシルDRYデイパックは口をくるくる織り込むので防水で良いのですが、意外と不便でしたので、このオスプレーはジッパーでアクセスが早く使い勝手は良いです。
中身は、救急セット、水、カッパ、カラビナ2枚、スリング2本、ツェルト、ヘッデン、おやつ、カメラ、無線ぐらいです。
たいした距離ではありませんが念のため。
ヘルメットを装着します。
東鎌尾根
ピークアタックは、見るからに尾根歩きが面白そうな東鎌尾根から行くことにしました。
完全な岩場歩きで、尾根に出ると絶景です。
やっぱり岩場は楽しいな♪
目の前に槍。
眼下には殺生ヒュッテのテン場がミニュチュアのように見えます。
こんなところを歩けるなんて。
本当に気持ちがいい!
登頂したいけど、この過程を楽しみたいので、ときどき休みながら。
ナイフリッジの天辺を歩くような、危険な所はありませんが、気を抜くと危険です。
パートナーはすれ違う人を避けようとよろめいて、危ないところでした。
ここは落ちたらヤバイ(汗)
澄みきった空に向かって切っ先を伸ばしている、あの頂に立ちたい!
穂先の真下からは、槍ヶ岳山荘側に行きます。
そしていよいよアタック開始!
ほとんどよじ登るような傾斜に見えますが、ホールドもしっかりしているので、足さえ固めてしまえば、手は補助的に使うだけでぐんぐん登れます。
自分があの穂先に登っているなんて・・・
岩はまだひんやり冷たいです。
クサリもありますが、使わずにいけます。
パートナーは素手でクラックの真似事をしたせいで、手の甲を擦りむいて笑っていました。
それを見て私も笑ってしまいました。
別にそんなに面白くないことでも、笑ってしまうのも山の力でしょうか。
注意点
注意しなければいけないのは、落石です。
自分が落とす可能性もあります。
拳くらいのラクがあり、私達は避けたのですが、下にいた人は、スレスレで、「マジか」と驚いていました。
小学生の子が落としてしまったらしく「ラク」の合図もできなかったようです。
もっと上から降ってきたら小さな石でもヘルメットごと頭蓋骨に穴が開くし、肩とかでも簡単に骨折してしまいます。
小石が岩を巻き込んで、それが砕けながらさらに岩を巻き込んで、本当に危険です。
目の前で落石を目撃した山行記事はこちら↓
ヘルメットは必須です。
後で知ったのですが、ヘルメットは槍ヶ岳山荘でもレンタルできるようです。
所々ガレていますので、慎重に安定した岩を確認しながら登ります。
いよいよ例のハシゴです。
ちょっとどきどきしましたが、手が鉄臭くなったくらいで、しっかり登れました。
ただ、自分が登りきったら、下の人に「どうぞ」と声をかけてあげると良いなと思いました。
ハシゴを登り終えると、思わず「やったー」と声が出ます。
自分があのてっぺんに立っているなんて。
遠くから、天気の良い日にしか見えなかった槍ヶ岳。
天空を鋭く突くあの穂先に立っているんだ!
写真集や、カレンダーで見ては「いいなぁ~」と想っていた念願の頂。
登頂した実感は後から後から、このブログを書いている今でもどんどん強くなっています。
登ったことがある人から見たら、簡単なルートだし、体力さえあれば登れてしまうような山でしょうけど、私にとっては一つの夢が叶った瞬間です。
よく見るあの祠。
これまで生きてきたいろいろなことを感謝したくなります。
みんな並んで、写真の順番待ちです。前の人を撮ってあげます。
あの看板を手に、みんな嬉しそう。
そんなに混雑していなかったので、しばらく地球の出っ張りを堪能します。
ぐるぐる周りを見ては「あぁ~」と感嘆の声が漏れるだけです。
穂高 連山
ちょこんと飛び出ているのが涸沢槍かな?
常念
尾根や谷がまるで地球のシワのようです。
山頂を中心に四方に谷が伸びています。
すごいなぁ。
ずっとずっと向こうの、ごちゃごちゃした東京で、細かなことにイライラしたり、悩んだりしながら普段暮らしているんだな。
小っちゃなアリんこのように、ここまで汗かいて登ってきたんだ。
今日の為にいろいろ準備して、毎日スクワットもして、山に登る度に勉強もしてきた。
こういった準備に救われてきた部分も多々あります。
例えば仕事で嫌なことがあったときとか。
山のことを考えて乗り越えたり、耐えたり。
あれ?三角点が固定されていません。
嬉しすぎて折ってしまったか!!と焦ります。
焦って騒いでいると、もともと固定されていなくて、紛失扱いになっているとベテラン登山者が教えてくれました。
ほっ。
後ろからガチャの音がすると思ったら、子槍からバリエーションを攻めてきた3人パーティが。
いいなぁ、かっこいいなぁ。
よし、いつかこのルートに挑戦しよう!
裏側から槍を見ながら歩き続けられる裏銀座もいいなぁ。
本当に本当に名残惜しいですが、混んできましたので、そろそろ下山です。
はっ!
ハシゴの下り、確かに高度感がすごい!
それでも、谷川や宝剣で経験したおかげで落ち着いて降りれました。
ボルダリングでの身体の使い方もかなり役立ちました。
ただし下りもやはりラクに注意ですね。
見えないところに足をかけるので、慎重に。
下山はあっという間です。
ちょっと早いお昼ごはんは、槍ヶ岳山荘で。
槍ヶ岳の植物
10時半から食事の受付なので、しばらくテラスでうっとり景色を眺めます。
昨日は必死で周りを見る余裕もあまりありませんでしたが、たくさんのお花が咲いています。
一年の半分を雪で閉ざされてしまうこの山に、わざわざ夏の間だけ敢えて生息する植物達。
そしてその恵を求め遥々こんなところまでやってくる動物達。
逆境を好機に変え、逞しく生きる力を美しい景色として私たちを楽しませてくれます。
いや、それは人間が勝手に感じているだけで、やっぱり自然界では人間は破壊者であり異質な存在なのかもしれません。
お邪魔させていただいているという謙虚な気持ちになります。
世界がまだ氷河期だったころからここに生きていて、歩けない植物達。
どんな状況でもそれを受け入れ可憐に咲く。
一見、ただ綺麗に咲いているだけですが、その裏で凄い努力と工夫をしているんですね。
病気や障害、悩みなど、私たちも逃げられない状況ってたくさんありますね。
今回はその強く生きる生物達の姿に多くのことを学ばせてもらいました。
ミヤマシシウド
これはなんだろう?誰か教えてください。
ヨツバシオガマ
イワツメグサ
槍ヶ岳山荘のテン場はそんなに広くなく、すぐに埋まってしまうようです。
3000メートルを超えるテン場もいいなぁ。
いつか西穂から縦走してここに泊まりたいなと思いました。
槍ヶ岳山荘おすすめメニュー
10時半になったので食堂へ。カウンターのお姉さんに聞くと、焼き鳥丼とカレーライスがおすすめとのこと。
こういうときは聞くのが一番。
美味しいと言われるとそんな気がするものです。
お姉さんの笑顔は素敵だし、
美味しくなくてもそれはそれ、と、
焼き鳥丼を注文しました。
美味しい!
隣のご夫婦はラーメンと生ビールを注文していました。
ラーメンも具沢山で美味しそうでした。
食べ終わってもまだまだ11時前。
今日は一日槍を満喫する予定で二泊にしましたので、再びテラスでChill outします。
ずっと見ていても飽ることのない佇まい。
刻々と雲の流れが山肌の表情を変えるし、谷から上がってきたガスが巻いていたり。
風で揺れる可憐な草花達。
イワヒバリがけっこう生息しています。
売店でパピコを買って食べたり、CCレモンを買ったり。
ダラダラしているのはいつものこと。
いつもと違うのは常に槍ヶ岳が見えていること。
幸せなひと時を過ごします。
ストーブとパーコレーターを持ってくれば自分でコーヒーを入れられたのに、と次回への課題に。
私がいつも使っているのはチヌークのパーコレーターです。
3カップ用ですが、実際はカップ2杯分くらい。
ステンレス製で溶接の継ぎ目がないので頑丈だと先輩山屋さんのおすすめで買いました。
混んできたので、ゆっくり殺生ヒュッテに戻ります。
帰りは天狗原にむかうガレ場の谷をつづれ折りに下ります。
何度も何度も穂先を振り返り、「あぁ~」、「いいなぁ」と独り言が出てしまいます。
テントに戻り、マットを外に出して、また穂先を眺めながらウトウトします。
寒くなってきました。
まだ明るいのに月が出ています。
17:00夕食の準備です。
今日のメニューはアマノフーズ限定のチキンカツの卵とじ
この日の為に半年前に東京駅のアマノフーズで買っておいたものです。
本当にお湯だけでできるのか?と半信半疑。
ところが、なんと!
美味しい!
これはアマノフーズ歴代No1じゃないかな!
「山で揚げ物」という私の夢と希望を実現した商品です!
アマノフーズさん、ガンバ!
さて食後は自作のハッカ水で身体を拭いてさっぱりします。
着替えたら、防寒対策をして、刻々と迫る夕暮れを眺めながらのコーヒータイムです。
濃深縹色の空に、山の全き姿が浮かびます。
槍ヶ岳山荘の灯りが、なんだか幸せそうに見えます。
明日は下山かぁ・・・
もう一日、予備日もあるしなぁ・・・
と、感傷的になってしまいました。
次はいつ来られるかな?
もう来られないかな?
いや、また来られるように、毎日頑張ろう!
そして絶対また来よう!と心に誓い、シュラフに潜り込むのでした。
眠りに就く間際、「来て良かった」というパートナーの言葉が印象的でした。
三日目につづく。