8月11日 朝から山のことでそわそわしています。
パートナーが仕事を終え、21:00、上高地に向けて出発。
ハード&タイトな出発プランで申し訳ないけど、私には何もすることができない。
頑張って眠らないように、せめて楽しいドライブにしようと思いました。
運転中も主に山の話と音楽の話で盛り上がります。
はじめての槍ヶ岳
念願の槍ヶ岳。
始めて見たときから絶対に登りたいと思い続けてきました。
楽しみな一方で、距離と時間の長さが不安でもあります。
何度も地図を見て、頭の中でルートをイメージしてきました。
上高地までのアクセス
24:00過ぎ、沢渡駐車場に到着。
仮眠をとります。
大きな車だったら後ろをベッドにできるのになぁと思います。
3:30起床。寝たのかどうかわからない程度の仮眠でした。
身支度を整え、4:30、1番でタクシー乗り場に並びます。
今日の行動時間が一番長く、テン場の確保の心配もあるため、とにかく早く行動したかったのです。
すぐにタクシーが来て、後ろに並んでいたカップルと合い乗りできたため、
安くなりました。
1台4200円
1人1050円
くねくねした山道をベテランの運転手さんが飛ばします。
カーブの度に身体が左右に振られます。
東京だったら「運転荒いなぁ」と思うところですが、今日は「私のために急いでくている」と都合よく解釈し、運転手さんを勝手にジェイソン・ステイサム似(トランスポーター)と想像します(ワラ)
釜トンネルは5:00にならないと開かないため、入口で並びます。
新穂高に向かうときもいつも通過するトンネル。
冬期は封鎖されていて、「地獄の釜」を連想したことを思い出します。
「上高地」はマイカー規制もあり、またこの釜トンネルの通行時間帯も限らているので、なんとなく敷居が高い聖地のように感じていました。
何かの儀式のような気持ちでトンネルを通過します。
5:10上高地バスターミナルに到着。
登山届けを提出し、靴ひもを締めたりトイレに行っている間にも続々とタクシーそしてバスが到着し、登山者を吐き出します。
東京の通勤の風景に似ています。違うのはみんな笑顔なこと。
ついついテン泊装備の登山者の数を確認してしまいます。
今回は贅沢に1泊追加して、一日はのんびりテント場で過ごすプランなので、良いテン場の確保が大事になってくるからです。
でも私は慌てませんでした。
平日の出発だったし、なんとなく皆同じことを考えているだろうなと想像していたからです。
逆に言えば私もだいたい人と同じことを考えています。
違うのは365日のんびりしているせいか、慌てないこと。
でもこの性格のおかげで危険を回避できたり、落ち着いて行動できるのだと、最近よく考えます。
運転疲れ&寝不足で、ナン(インドの)のような顔のパートナー。
一服しながらストレッチという身体に良いのか悪いのかわからないことをしているので、元気付けようと、適当な山を指差し「あれが穂高だ」といいかげんなことを教えてあげました。
でも「そうなの!?」と目を輝かせていました。
横尾までのアプローチ
2016年8月12日(金)
5:30いよいよ出発です。
槍ヶ岳、いざゆかん!
まずは、横尾までの約3時間。
途中に1/3ごとに明神館、徳澤ロッジがありますので、小休止に丁度良いです。
横尾まではほぼフラットな道で、スニーカーでも歩けるほど整備されています。
おなじみの
かっぱ橋
明神館
しばらく梓川沿いを歩くので、風と沢の音が心地よいです。
木々の間から明神岳を見ながら
徳澤園
ここは「氷壁」の舞台になった場所です。
芝生の綺麗なテントサイト。
今度はここでのんびり一泊するのもいいな。
芝生の上でコーヒを飲んだり、りんごを食べたり、木陰でお昼寝するのもいいな。
ここはお風呂もあるので、長い休みが取れたら絶対来よう。
さあ、どんどんいきます!
横尾
ついついペースも上がり、肩の痛みが限界に達した頃、7:50横尾に到着です。
さすがに肩が痛くなってきました。
吊り橋の向こうには屏風ノ頭
長野県警山岳警備隊の方とお話させていただき、コーラを飲みながら気を引き締めます。
だんだん登山道らしくなってきましたが、歩きやすいです。
傾斜も少し出てきました。
小滝の上を涼しい風が通り抜けます。
8:40
一ノ俣に到着
沢で顔を洗います。
冷たくて気持ちいい。
川底が透けて見えます。
風光明媚とは正にこのことですね。
畏敬の対象だったヤマが、経済成長でしょうがなく開発を後回しにされ、
現在は「特別名勝」、「特別天然記念物」に指定され、ずっと変わらないままここにあります。
「しょうがなく」自然が守られたことになりました。
そう考えると「しょうがない」という言葉もなかなか素敵なものだなと思います。
健康な地球のことを考えると、もっと自然とか環境とかについて勉強しなきゃなと思います。
極論ですが、山に人が入るだけで自然破壊なのだから。
勉強すれば環境を守らなきゃと思うだろうけど、面倒だから勉強しないというのは、「悪意」になりますね。
「無知」は学ぶことで解消されますが、「悪意」はどうにもできません。
でもここに来れば、「悪意」も解消されそうな気がします。
そんなことを考えながら・・・
9:30
槍沢ロッジに到着
顎から汗が滴り落ちます。
なんとここでも自動販売機があるんですね。
またまたコーラで糖分を補給します。
ヘリポートの横に望遠鏡が設置されています。
ここからはさらに傾斜も出てきます。
道も岩が増えてきました
10:40
ババ平 1987メートル
ここでテント泊する計画の人も多いようです。
ネットでは狭いとのことでしたが、ちょっと離れた沢側にも幕営できますので、
時間や体力次第ではここでも良いかもしれません。
トイレが新しくなったそうです。
それでも槍の近くで幕営したいので先に進みます。
11:20
大曲に到着 2094メートル
さすがに息が上がります。
今までで一番きついかもしれません。
すでに体力は使い果たしています。
ここでパートナーが遅れてしまいます。
「自分のペースで行くから先にどうぞ」とのことだったので、
先行します。
姿が見えなくなったので、目印になりそうなポイントで無線で知らせます。
とはいえ、「木が倒れているところを通過しました」とか、「ちょっと垂直に登るところがあります」などと、いい加減な内容。
後から聞いたのですが、相手は結構励みになるそうです。
無線って便利ですね。
ガンバ!
ついに槍が見えてきました。
殺生ヒュッテも
ここからがきつい。
体力が限界を超えると、自律神経が活躍するようです。
自然に、自動的に身体が動きます。
脚は振り子で前へ出すだけ。
前脚のみで登る正しい登り方になります。
膝がブレないように、体幹の筋肉が活躍します。
呼吸もロウソクを吹き消すように「ふぅ~」と心肺が一番楽な呼吸法になります。
一歩一歩自分の身体の状態を把握したり、
ペースが落ちるぶんまわりが見えたり「気づき」が出てきます。
よく「自然に勝つ」とか聞きますが「自然に受け入れてもらう」といった方が正しい気がします。
こんな大きな山に勝てる訳ないですね。
「危険」と「困難」は違いますもんね。
植物を踏まないように、ポールで刺さないように。
そして足を乗せやすい安定した岩を探して歩く。
風が吹いてきたら汗を乾かしてもらう。
そうすると、必然的に登りやすくなります。
こういった自然を受け入れることで乗り越えられる局面は、
きっと実社会の様々な困難を受け入れて乗り越えるヒントになるのかなと思います。
それにしても・・・見えているのに
太腿はパンプ、5歩登ると息を整え・・・の繰り返しです。
14:10
坊主の岩小屋 2692メートル
別名「播隆窟」
ここは槍ヶ岳を開山したお坊さん、播隆上人がベースキャンプにしていたところだそうです。
中は以外と広かったです。
もう少し!ガンバ!
14:40
殺生ヒュッテ到着
受付でカードに記入したいのですが、汗と息切れで朦朧としてしまい、
漢字が書けなくなってしまいました。
受付のお姉さんはとっても優しくて、「ひらがなでいいですよ」と笑顔。
ありがとうございます。
テン場は3人用テント、エアライズ3が設営できそうなスペースは小屋の近くはあまり空きがなく、
結局小屋から一番離れた、でも槍に一番近い上の方に。
この移動だけでも肩の痛みで泣きっ面です。
あいにくガスで槍は隠れてしまいましたが、しばらく休んでいると・・・
あぁ~・・・
うわ~・・・
ここまで頑張って登ってきて、
しかも小屋から一番遠い場所に幕営したおかげで、
テントの出入り口はもちろん!!
「最高だね!」
この台詞たぶん一兆回くらい言ってるはずです(笑)
設営を終えたら、水を買いに小屋へ。
靴ひもを緩めているので岩場は歩きにくい。
水は天水が1リットル200円です。
プラティパスとナルゲンボトルに満タンにします。
飲食には煮沸が必要です。
落ち着くと寒くなってきましたので、ソフトシェルを羽織ります。
荷物の軽量化を考えたらカッパでもよかったのでしょうけど、ソフトシェルの快適さには敵いませんね。
しばらく今日の行程を振り返り、丁度良い岩のベッドにマットを敷いて、槍を眺めていました。
17:00夕食
あちこちのテントが色とりどり、ランプの灯りで夕暮れに浮かびます。
ストーブのボ~という音。
コッヘルのぶつかるカチャカチャという音。
にんにくを炒めている美味しそうな匂い。
みんなの控えめな楽しそうな笑い声。
全てが夕闇に包まれはじめると、より五感が強くなります。
この時間帯がとても好きです。
今晩のメニューは木曽駒でデビューした、例の無印良品の魯肉飯。
やっぱり美味しい♪
せめて味噌汁くらい持ってくれば良かったとすこし後悔します。
食後はまた槍を眺めてコーヒータイム。
パーコレーターのポコポコいう音も趣があります。
森林限界を越えると、日も長いです。
夕日を見た人たちでしょうか、ヘッデンの列が穂先から降りてきます。
山の夕暮れって素敵ですね。
天国にいるようです。
明日に備え、シュラフにもぐり込みます。
シュラフはモンベルのバロウバッグ#3
今回は連泊ですが、化繊だし、天気も良いので、カバーは持ってきませんでした。
逆に、汗臭くなると嫌なので、シュラフシーツを使いました。
テント内は約10℃で、Tシャツにユニクロのリラコ、フリースで快適に眠れました。
夜中に何度か目覚め、外に出ると、満天の星空に槍の稜線が浮かびます。
※画像が荒くてすみません。
本当に来てよかった。
明日は一日槍ヶ岳を満喫します♪
二日目につづく