奥穂高岳 テント泊 登山 8月
今回は、登山者憧れの穂高連峰、奥穂高岳からジャンダルムをピストンする計画です。
一昨日、涸沢に到着しテント泊。昨日アタックの予定でしたが、天気が微妙でしたので、のんびり停滞しました。
涸沢の様子はこちら↓
chi-sk8.hatenablog.com
そしていよいよ・・・。
奥穂高岳 登山ルート
涸沢から奥穂高への一般的な登山ルートは、ザイテングラートの岩尾根を登って、白出乗越に出ます。
その後穂高岳山荘を通過し、登頂となります。
白出乗越まで2時間、さらに山頂まで1時間の合計3時間で、涸沢からは短いコースですが、岩場歩きと、涸沢までのアプローチでの疲労蓄積等、危険要素もたくさんあります。
記事後半に注意箇所に触れていますので参考にしてください。奥穂高岳は、富士山、南アの北岳に次ぐ日本第三位の標高で、北アルプスでは一番の標高です。
標高は3190mです。
早朝3:00起床。
いつもそうするように、キーホルダー型の温度計で確認すると、気温は10℃程。この時期としては平均的な気温です。
Tシャツ、ユニクロのステテコという、家でリラックスしているときと同じ格好に、
シュラフはmont-bellのバロウバッグ♯3。
日付が変わる頃から寒くなり「薄着すぎたかな」と微睡の中で後悔します。
シュラフを出て着るものを追加するのも面倒だなと、しばらくモゾモゾしながら悩みましたが、
隣のパートナーも寒さに耐えかねたらしくインサレーションを着込んでいます。
私もあきらめて途中でパタゴニアのマイクロパフを着込みました。
おかげでその後は快適に眠れましたが、足元の寒さが増したことに、朝の気配を感じるのは、テント泊ならではの感覚です。
まわりのテントからも、静かにジッパーを開けるジーっという音やビニール袋のガサゴソという音聞こえ始め、
私も鳴る前のスマホのアラームを解除します。
外に出るのは寒くて嫌だな、という小学生の頃の毎朝の葛藤を思い出しながら、
気合を入れてシュラフから飛び出し、行動着に着替えます。
暗いなかヘッデンの明かりを頼りに涸沢ヒュッテのテン泊者用トイレに向かうと、同じく亡霊のように暗闇を往来する登山者とすれ違います。
用を足したら、昨夜準備しておいたアタックザックを背負い、出発です。
朝食は行動食で済ませる予定で、まずは歩き出しの分のエネルギーを、コンビニのレジ横で買った小さな羊羹で補給します。
さて、
奥穂高岳、いざゆかん!
アタックザックの中身
ちなみにアタックザックの中身は、
カッパ
ツェルト
マイクロパフ(化繊の薄手のインサレーション)
救急セット
水1リットル(穂高岳山荘で追加補給します)
無線
GPS
ヘッデン
120センチスリング2本
カラビナ2枚
行動食多め
など。
今回は念には念を入れて、穂高岳山荘でツェルト泊になっても良いよう、慎重な装備になりました。
涸沢テント場~ザイテン取付
ルートは奥穂に向かってカールを右に巻き、テン場から涸沢小屋を経由します。
左回りのパノラマコースもあるのですが、雪渓のトラバースは早朝は凍っていることが多く、軽アイゼンを履くのも面倒だったので、こちらから。
ヘッデンはブラックダイヤモンドのギズモです。
やや光量が弱いので、現在はブラックダイヤモンドのスポットを愛用しています。
夜間の行動にも使える、そこそこの光量があり、コスパも高く、ナイトハイクでも活躍します。
ちなみにペツルのヘッデンも性能は良いのですが、同じ光量表記でも暗く感じます。
代理店の方に聞いたところ、ペツルの表記の方が正しいから控えめなのだとか・・・。
同じルーメン数でもブラックダイヤモンドの方が明るく感じます。
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辺りはまだまだ暗く、星の名残が散らばる空に、涸沢槍から奥穂高の稜線が黒く切り取っています。
北アルプスの真ん中で、夜明け前に歩いていることに実感がなく、自分が霧になってこの画の中に留まっているようです。
岩に描かれているはずの目印も、暗くてほとんど見えません。
離れたところに、ルートを外している人のヘッデンがチラチラ光っています。
前の人に付いていかず、自分で確認しながら進むことが大事です。
私は前日に散歩がてら下見しておいたので、ロストすることなくルート通りに登ることができました。
岩を積み上げて作った立派なテラスの涸沢小屋からは樹林ゾーンの中を抜けます。
小さな森を抜けるここは、道がそこしかないので間違える心配がありません。
樹林ゾーンを抜けると、だだっ広い、石のゴロゴロしたところに出ます。
よく見ると石に「○」とか「→」が書いてありますが、暗い中、ザイテンの盛り上がりの影だけを見ていると、ルートから外れてしまいます。
他に、赤いリボンの付いた棒も。
目印同士のの間隔が長いときは、白っぽくなった、苔の付いていない岩のところを進むと間違えにくいと思います。
ルートを外れても合流できるのですが、人が歩いていないということは、浮石が多く、捻挫したり落石の危険があります。
しばらく進んでいるうちに、段々とカール全体が明るくなってきました。
ヒュッテの社長、山口さんに教えてもらったモルゲンロートの時間は04:55。
自分の手の平を見ると、周りの景色と同じオレンジ色。
モルゲンロートの中を歩いていることが、まだ夢の名残にいるようです。
ザイテングラートの取付きに到着です。
事故の頻発するルート。
ヘルメットのあご紐を締めて、靴ひものチェックと水分補給。
気を引き締めます。
ザイテングラートの難易度
ここは、落石、滑落と、毎年事故が多く発生しています。
ハイマツの間の岩登りからスタートです。
朝日を浴びるお花に元気をもらいます。
ハイマツ帯を越えると、クサリのトラバース。
下りのときは、足場が見えにくいので、登りのときに足場を覚えておくと安心です。
短いハシゴもありますが、高度感も無く難しくありません。
正直、登りではそんなに危険に感じません。そんなところが逆に油断を誘うのかもしれません。
油断して景色を楽しみすぎてルートから外れてしまい、浮石を踏んで落石、みたいな図式。
特に下山時は、疲労でふらついたり、登頂した達成感からの気の緩みもあるかもしれません。
さらに登山者が多く渋滞で時間が押して焦ってしまったり、天候が悪化してしまえば難易度が上がってしまいますね。
最後は草付きの緩い斜面を登ります。
自分が空に近づいているような錯覚。
見えた!涸沢に来る度にちょこんと見えていた建物。
下から見上げていたときは小さなマッチ箱のように見えていたのに、
立派な建物です。
穂高岳山荘に到着です!
穂高岳山荘~奥穂高岳
すぐに二つハシゴが現れます。
50メートル程を垂直に登りますので高度感があります。
山荘に宿泊したお客さんがご来光を見て下山してくる時間と重なってしまい、渋滞になります。
お互い声を掛け合って、譲り合って進みます。
この後右に巻くクサリが2箇所あります。
前後に人がいると、ちょっと緊張します。
足さばきが崩れないように三転確保を意識します。
その後も浮石に注意しながら緩い稜線を登ります。
錆びたピッケルの道標
「標高3190m。北アの主峰。」
日本第三位、祠の上は第二位の標高。
「目指す頂はもうすぐだ。」そう思うと、登り切ってしまうことに寂しさを覚えます。
一歩一歩をしっかり感じながら、大切に登ります。
ジャンダルムが見えました。
ブロッケン現象も。
そしてついに・・・!
山頂です。
嬉しいというより、ほっとします。
達成感というより、日常生活の結果の一つのような感覚。
何故か特別な感じがしません。
不思議な気持ちです。
下界では「あぁ、もう全部嫌だなぁ」と思いながら働いて、厭世的になることもあります。
そんなときは、「山のため!」と思い頑張っています。
でも、「山のため」なんて、楽しみのために嫌なことを頑張るのはきっと間違いでなんですね。
純粋に100%山を楽しみたいと思いました。
じゃないと下界が嫌になってしまうから。
私のは無責任な借り物の哲学で、「○○のために頑張ろう」というのは、「家族のため」とか「好きな人のため」って方が正しいんじゃないかなと思います。
だから登頂したのに、いつもと違う感覚なのかもしれません。
こういう考え方ができたのは、今回の山行の収穫です。
山頂ではみんなが笑顔。
写真を撮る人。
おにぎりを食べている人。
標高3000メートルを超える過酷な環境なのに、時間はゆっくり流れ、
訪れた人、一人ひとりの頂があるように見えました。
奥穂高岳 安全登山のポイント
ポイント① ゆっくり登ること
理由は、浮石を確認しながら登ることと、急いで岩に無理な力が加わると動いてしまうからです。
いずれも落石を起こさないためです。
ルートも丁寧に確認しながら登らなければ、外れて滑落になるケースが多いようです。
なのでガシガシ登らず、ゆっくり、ゆっくり。
周囲の音や、自分の前後の登山者との距離に敏感になります。
ポイント② トレッキングポールは使わない
トレッキングポールは使ってもザイテンの取付きまでです。
昨年秋は、浮石にポールを着いた方がバランスを崩し滑落してしまいまいました。
滑落後、怪我により行動不能となり、低体温症で亡くなってしまいました。
警備隊の基地でもポールを使わないよう呼びかけています。
ポイント③ ヘルメットの着用
滑落、落石の危険を考えれば、絶対必要です。
私はこの後、ジャンダルムで恐怖の現場を目の当たりにしました。
昨日もザイテンから滑落がありました。
遭難者のヘルメットの状況。
後頭部からばっくり割れ、滑落の衝撃がわかりますね。
このヘルメットの持ち主は手足に怪我を負ったものの、頭部に深刻な損傷は無かったそうです。
※長野県警HPより
ヘルメットは必須です。
ポイント④ 行列
頂上直下は、行列が出来ていました。
登る人、降りる人で声を掛け合っています。
日陰で待ち時間ができるため、汗が冷えて寒くなります。
ソフトシェルを着ておいて正解でした。
こういった渋滞でロスする時間も考慮して、余裕をもった計画が必要です。
この後は、なんと!このままジャンダルム編につづきます!
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