アイゼンのメンテナンス 研ぎ方マニュアル!
雪山登山の大切な装備のひとつ、アイゼン(クランポン)の研ぎ方ってどうするの?
諸先輩に教えていただいた知識の、良いところを網羅して、裏技も交えて紹介します。
では早速やってみよう!
アイゼンを研ぐ道具
用意するものは、
①鉄鋼用の棒ヤスリ(平ヤスリ)
②段差をつくるための板
③いらなくなった雑誌や木の板
④激落ちくんスポンジ(錆びがひどい場合)
⑤真鍮のワイヤーブラシ(錆がかなりひどい場合)
⑥油性マジック。
⑦養生テープ
アイゼン ヤスリ
私の場合は、ヤスリはこれを使います。
北岡ヤスリという会社の、その名も「アイゼンヤスリ」
ニコルソンの万能ヤスリも使い安いです。
私のは短いタイプですが、慣れるまでは長いものがおすすめです。
片側が中目、反対側が仕上げ用の細目になっています。
再度の細い面や、先端の山切りの部分にも目があるので便利です。
木の板(雑誌)は直接床やテーブルにアイゼンを置くとキズを付けてしまうので、作業するときに下に敷くものです。
激落ちくんスポンジとワイヤーブラシは錆を落とすために使います。
場合によってはシリコンオイルでサビを浮かせて、ウエスでふき取ります。
<注意!>
市販のサビ取り材は、石油系の溶剤が入っているので、アイゼンの樹脂パーツを劣化させてしまうので、使わないようにします。
日頃のメンテナンス
日頃は使い終わったら、水気をふき取り、シリコンオイル(ホームセンターで売っています)をしみ込ませた雑巾で拭き上げます。
摩耗の具合
爪はあまり減っていないように見えても、1ミリ~2ミリ摩耗しているだけでも、雪面への食い込みは全然違います。アイスバーンになっていたり、強風に煽られると、最悪致命的なことになってしまいます。
指先で触ってみて、食い込まないようでしたら、爪を研ぐ必要があります。
アイゼンを研ぐ手順
私がメインで使っているアイゼンはモンベルのLXT-C10という10本爪のものです。
足のサイズが小さいので12本爪だと土踏まずの部分に4本が集中して、雪に刺さりにくくなってしまうからです。
フォークと爪楊枝でそれぞれリンゴを刺すと、フォークの方が刺さりにくいのと同じ原理です。
前爪がちょっと短いですが、グリベルの10本爪も使いやすかった(歩きやすかった)です。
まずジョイントプレートを外します。
戻し方がわからなくなるといけないので、片足のみ外します。
終わったら組み立てて、反対側を研ぎます。
面倒な場合は、ヤスリが当たりそうな箇所を養生テープで保護します。
アンチスノープレートも外します。
これがキズだらけだったり、劣化して硬くなっていたら新品に交換します。傷が多いと、雪団子ができやすくなります。
外してみると・・・
少し錆びがありますが、思っていたより綺麗です。
ついでに各箇所の劣化も点検しておきます。
樹脂パーツ、ストラップ、バックル、テープ、ハトメなどなど。
岩にこすったりするので、キズが(泣)
錆びがひどい場合は、シリコンオイルを染み込ませた雑巾で拭きます。
それでもダメなら激落くんスポンジで拭きます。
拭いても取れない錆は、真鍮のワイヤーブラシでこすります。
いよいよ研ぎます。
①固定
台の上や、板を重ねた段差、自分の胸にしっかり押し付けるように固定して、棒ヤスリで研ぎます。
慣れてくると、固定があまくても、揺れに合わせてヤスリの角度も自在に変えられるように、手首のスナップで調整できるようになってきます。
場合によっては、椅子に座って、太ももで挟んで固定することもあります。
②研ぎ方のコツーその1
左右が均等になるように、爪の右サイドを10回けずったら、
持ち替えて左サイドを10回。といった風に。
あ、作業用グローブをすると安全ですね。
③研ぎ方のコツーその2
爪の細い側面?の部分を研ぎます。
将棋の駒のようにするのではなく、赤い線のように、元々の爪の形に合わせ、なめらかなラインを意識して研ぎます。
本の形に沿って、かつ、先端を多めに研ぐことで、自然なラインに仕上がります。
広い面は絶対に研がないようにします。
研いだ面は、Λではなく、(刃物ではないので)
赤い線のように、пになるようにエッジ立てるように意識して研ぎます。
樹脂パーツに傷をつけないように気を付けてくださいね。
心配な場合は養生テープなんかで保護すると安心です。
先が尖ればOKなので、少しづつやると良いと思います。
急いでやると削れ過ぎたり、ぶれてしまいますのでゆっくりやるのがコツです。
削るときはバイオリンのように往復させると力の入り具合が変わってしまうので、いつまでたってもエッジが立ちません。
必ず一定の方向から削ります。
動かし始めに力を入れて、ストロークの後半で力を抜くようにすると、先端が鋭角に仕上がります。
このぐらいかな?
Before
まだまだ大丈夫そうですが・・・。
④研ぎ方のコツーその3
After
シャキーン!
このくらいに留めておきます。
指で押すと食い込むぐらいの尖り具合。
尖らせすぎると、摩耗しやすくなってしまいます。
雪山登山に慣れてきたら、たとえばアイスバーン急傾斜は前爪と二番目の爪を尖ら気味にする、とか、春先のミックスルートはあまり尖らせないとか、季節や山域に合わせて、加減してみても良いと思います。
だいたい両足分研いで30~40分。
⑤仕上げの裏技!錆び予防には油性マジック
アイゼンの錆び予防には研いだ後、塗膜が剥がれて金属がむき出しになったところを、油性マジックで塗ります。
普通の油性マジックでもOKですが、私はレジストペンを使っています。
レジストペンは耐酸性の水や酸に強いものです。
(一度履いてしまえばどうせ剥がれてしまうのですが・・・)
組み立てたら完成です!
念のため、靴と合わせてサイズが変わってしまっていないかチェックします。
現場で-15℃にもなる中、爆風を浴びながら調整するのは面倒です(汗)
まとめ
では、研ぎ方のポイントを再確認すると、
・固定が大事
・往復させずに、一定の方向のみに動かす
・尖らせすぎない
・サビ予防は油性マジック
ガチガチに凍ったところでは先の丸くなったアイゼンでは不安です。
なんでもない緩い斜面でも、転んだだけで、あれよあれよという間に滑落してしまいますので、メンテは大事ですね。
あ、もちろんしっかり爪を効かせる歩き方が大前提ですけど(汗)
「自分の命を預ける道具の扱い方が、そのまま登り方にも現れる」、と先輩の山屋さんに言われたことを思い出します。
何より自分でメンテすると愛着も湧きますし、不具合を早期に発見できるので、事故を未然に防げますね。
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よーし、これでアイスバーンを攻略できるように頑張りたいと思います。