青空と光り輝く残雪を踏んで
今回は、中央アルプスの主峰、標高2956mの木曽駒ヶ岳。
春の日差しに光輝く雪山を楽しむぞー!エイエイオー!!
ということで、2泊の計画で登ります。
木曽駒ケ岳は、初心者向けと言われていますが、残雪期の場合はどうなのか?そのあたりのことを記事にしようと思います。
- ・木曽駒ヶ岳の概要
- ・木曽駒ケ岳のアプローチ・・・駐車場、バス、ロープウェイについて
- ・木曽駒ケ岳 残雪期登山の装備
- ・木曽駒ケ岳の登山ルート
- ・宝剣山荘の紹介
- ・残雪期に注意すべきポイント3つ
- ・まとめ
- ・YouTube
・木曽駒ヶ岳の概要
木曽駒ケ岳は標高2,956m
中央アルプス(木曽山脈)の最高峰で100名山にも数えられています。
登山の起点、「千畳敷カール」は、散策路が整備されていて、登山者の他にも沢山の観光客が訪れます。
夏は高山植物の群生する「お花畑」に目を見張り、冬は風雪に包まれる厳しくも美しい山容に、感嘆の息を飲みます。
四季を通じて何度訪れても、サイコーの景観を見せてくれ私の大好きな山です。
中央アルプスは急峻ですが、ロープウェイを利用することで、比較的短時間で登頂できるところが、良くも悪くも特徴です。
というのは、軽装備の方や、慣れていない方が登ってきてしまうこともあり、事故も頻発していますので、注意が必要です。
ちなみに、最近では、環境省による雷鳥の保護・繁殖活動により、雷鳥に出会うこともできます。
・木曽駒ケ岳のアプローチ・・・駐車場、バス、ロープウェイについて
木曽駒ケ岳へのアクセスは、中央自動車道駒ケ根インターから数分の「菅の台バスセンター」に駐車場があり、バスとロープウェーを利用して登山口の千畳敷に向かいます。
駐車料金は一日(24時間)800円
駐車場は24時間入出庫可能で、トイレや自販機があります。
トイレは洗面台から温水が出ます!
駐車場の隣に隣接する「駒ケ根ファームス」にはお土産がたくさん売っていて、その場で食べられる美味しいものもあるので、「駒ケ根ソースかつ丼」や、温泉に加えて、下山後の楽しみの一つです。
バスの始発時刻よりちょっと前に、チケット売り場が開きます。
バスとロープウェイのセットチケットは、
往復で大人1名4200円。
料金は時々変わります。
菅の台バスセンターからバスで約30分、ロープウェイの始点、しらび平駅に到着します。
駐車場の車中泊で睡眠不足だったので、くねくねの山岳道路でバス酔いするのは毎度のこと⤵
窓の外を流れる樹々を眺めたり・・・なんてできません(悔)
ロープウェイに乗って約7分の空中散歩を楽しんだら、千畳敷駅です。
※バス、ロープウェイの運行は、最新情報をチェックしてください。
雨量規制や、メンテナンスによる運休情報がリアルタイムで発表されます。
このブログに運行会社「中央アルプス観光」さんのリンクが貼ってあります。
・木曽駒ケ岳 残雪期登山の装備
装備はしっかり!
チェーンスパイクで登ってしまい、下山時に恐怖で行動不能になっている人や、ケガをしている人をよく見かけます。
以下に残雪期に必要な装備をリストアップします。
・ピッケル・・・絶対必要です。使い方を練習してから。
・アイゼン・・・前爪のあるもの。チェーンスパイクで登れるのは、雪の下の夏道がほ
ぼ見えてから。
・冬靴・・・アイゼンが装着できるもの。
・極厚ウールソックス・・・天気次第で一気に真冬に逆戻りしてしまいます。予備は必
携です。
・薄手のフリース・・・厚いものは汗をかいて凍ります。
・冬用スパッツ(ゲイター)
・ビレイヤーダウンジャケット・・・日帰りでも緊急用に。
・ネックゲイター・・・寒さに合わせて。
・ニット帽・・・寒さに合わせて。
・ヘルメット・・・残雪期は無音の落石が怖い!
・サングラス・・・基本的に吹雪いた下山時以外ゴーグルはあまり使いません。
・ゴーグル・・・吹雪いた下山時用
・グローブ・・・ウール+シェルまたは防寒テムレスなど。予備は必携です!
春は天気が良いと汗ばむので、行動中は、薄手のウールやフリース手
袋が活躍します。
↓これは本当におすすめ!暑さ、通気性、撥水のバランスが完璧です!
・ビーコン、スコップ、ゾンデ棒・・・雪崩対策!使い方も訓練が必要です。
・ツェルトなどビバーク想定の装備・・・経験上必携です。
・木曽駒ケ岳の登山ルート
<一日目>
一般的なルートを簡単に説明すると、
千畳敷から乗越浄土と呼ばれる鞍部まで、カールを直登。
乗越浄土から、中岳を越え、木曽駒ケ岳本峰に登り返して登頂です。
菅の台バスセンターや千畳敷駅には、遭対協の方がいることが多く、装備のチェックや、相談にも乗ってもらえます。
千畳敷にはホテルが併設され、雪解け水を使ったコーヒーと信州サーモンのサンドイッチがおすすめの「2612カフェ」があります。
装備を整えたら、いよいよ外へ。
木曽駒ヶ岳、いざゆかん!
標高2858mの乗越浄土まで、雪の上を直登します。
上部はガスに覆われていますが、稜線の影も見えるので、雪崩、落石、先行者の滑落に注意しながら進みます。
遭対協のお姉さんと一緒に(ストーキング)登りました。
興味津々で盗み見ると、歩き方一つとっても、本当に勉強になります。
もう、雪崩の心配はそれほどなさそうですが、サギダル尾根を見上げると、デブリの後や、雪面を転がってきた落石が確認できます。
雪の状態は、ズブズブと踏み抜くし、時折強くなる風にザックが煽られ歩きにくいです。例年より一か月ほど早く雪解けが進んでいる印象です。
スネの横の筋肉に心地よい疲労を感じながら登って、オットセイ岩を超えると、かなりの急勾配になってきます。試しに後ろを振り返ってみて、怖く感じる場合は、無理に登らない方が良いと思います。
オットセイ岩に近づいてみると、足元に深いシュルンドができていました。
落ちたら大変!
乗越の手前は、カリカリに凍ることが多いのですが、今日はズブズブ。
腐った雪のトレースは崩れやすく、歩幅も合わないので、前爪を軽く蹴り込んで登ると楽です。
ボトルネック状の八丁坂はこのあたりから人の密度が増します。
下山の人がアイゼンを付けたまま尻セードしてたり、横並びに複数人で下山してくるパーティーもいますので、ルートが交錯しないように進みます。
やはり雪が少ないですね。夏道が見えています。
ズルして直登します。(もちろん植物を傷つけないように、雪面に注意しながら)
ここが一番風が集まるので、悪天時は吹き飛ばされそうになることもあります。
千畳敷から30分足らずで乗越浄土に飛び出しました。
強風の吹く稜線上は、ほとんど雪が解け、溶けたところがカリカリに凍っています。
周辺はガスに覆われ、いつもなら出迎えてくれる、中岳、伊那前岳、近くにあるはずの宝剣岳も見えなくなっています。
宿泊予定の宝剣山荘はすぐそこですが、ガスに覆われて、青い屋根が幽かに見えるだけ。
宿泊の受付を済ませたら、ゆっくり流れる山の時間を過ごします。
本当なら宝剣岳や伊那前岳をやる予定でしたが、天気はどんどん悪くなっていきます。
暖かいストーブの明かり、発電機の軽油の匂い、本棚には気になる本がたくさん並んでいます。こういう機会じゃないと味わえない時間を過ごして、一日目が終わりました。
<二日目>
翌早朝、4時に外に出てみます。
今日は晴れの予報。
ご来光を見にお散歩します。
マジックアワーのブルーモーメント。
黒い稜線の影に、夜の名残の星がひとつ瞬いています。
昨夜の強風はだいぶ弱くなりましたが、寝起きの体はすぐに冷えてきます。
ご来光だ!
宝剣山荘の美味しい朝食をいただいたら、小屋の周りをお散歩したり、ゆっくりコーヒーを飲んだり。
日帰りのお客さんが下山する頃、山頂にアタックします。
ルートは小屋の裏手を通り、中岳を経由します。
私のお気に入りの巻道は、この時期は通行止めです。
稜線の南斜面はほとんど雪がないですが、様子がわかりませんので、中岳までは様子を見ながらアイゼンを装着して進みます。
標高2925m、中岳を超えると、正面に木曽駒ヶ岳が姿を現します。
中岳からの下りは、風が通りやすく、岩の間で溶けた雪が凍っていますので、注意しながら進みます。
頂上山荘の周囲もほとんど雪がありません。
これなら、ここでテン泊でも良かったなぁ。
今回も、お気に入りの馬の背から迂回して頂上を目指します。
頂上山荘の裏手を、濃が池分岐方面へ登ります。
馬の背分岐を左に折れると、絶景の稜線を歩くことができます。
左手は宝剣岳に三ノ沢岳。
右手には雲に浮かぶ御嶽山。
あまり人が来ないお気に入りのルートです。
気温も上がり、踏み抜く回数がふえてきました。
腰まで埋まり、なかなか抜けない!
もがけばもがくほど雪が締まってくるのは恐怖です。
標高2956m、山頂に到着しました。
周囲は何も遮るものがなく、八ヶ岳から、遠くの北アルプスまで、大展望が広がります。
誰もいない山頂、コーヒーとクッキーでのんびり過ごしたら下山です。
「ただいま~」、宝剣山荘に帰ってきました。
ゆっくり沈む夕日を眺めたり、ネットの状態が不安定なこの時期は、他のお客さんとの会話を楽しんだり。自然の美しさと、人の温もりを感じて、二日目が終わりました。
<三日目>
今日は、下山の日。
できれば、宝剣岳と伊那前岳に登ってから降りたかったのですが、生憎の悪天候。
この時期は、雨交じりの雪が降ると、シェルに張り付いてシャーベット状に氷るので、厳冬期より寒く感じます。
辺りはガスに包まれ、強風が吹いていますが、行動できないほどではありません。
注意しなければいけないのは、まずは八丁坂のオットセイ岩の下まで。
かなりの急勾配で、まるで谷に吸い込まれそうです。
雪は表面だけ凍っている、所謂「モナカ雪」。
アイゼンも効くので、一歩一歩降りていきます。
注意しないといけないのは、下から登ってくる人とラインが重ならないように。
つい尻セードしたくなるかもしれませんが、それは別の場所。トレースの無いところで、登ってくる人がいないところ、もちろんアイゼンを外して、ケガしないように気を付けてください。
今日は標高を下げても、気温が上がりません。うかつにゴーグルを外すとアッという間に凍って見えなくなってしまいます。
今日くらいの風だったら、サングラスの方が良かったかもしれません。
八丁坂のように急斜面では、ゴーグルのフレームが邪魔で足元が見えにくいです。
それからガスが濃いと、カールの底は迷いやすいので、ホワイトアウトの時にも注意が必要です。
楽しい時間はあっという間。
千畳敷に帰ってきました。
・宝剣山荘の紹介
宝剣山荘は、ゴールデンウィーク期間はだいたい営業しています。
要予約なので注意してください。
詳しくはこのブログに宝剣山荘のリンクバナーが貼ってありますので、チェックしてみてください。
宝剣山荘の魅力は、ボリューム満点のおいしいごはん!
いつもテン泊なので、揚げ物や煮魚が食べられるのは天国です♪
窓からは正面に伊那前岳。
南アルプスから登るご来光に、木曽谷に沈む夕日。
中央アルプスの峰々のオールスターに囲まれた、最高のロケーションです。
特徴的な建築様式や、木製の軋む床。
発電機の軽油の匂い。
普段は人見知りの私が、他のお客さんや、あたたかい小屋のスタッフさんとおしゃべりしているのも不思議です。
スタッフさんと話していると(いつも仕事の邪魔してすいません)、今日安全に登ってこられたのはスタッフさんたちのおかげだとわかるし、山の色々な知識を教えてくれる師匠も、小屋のスタッフさんです。
自然の美しさと人の温もり、その両方が詰まっているのが宝剣山荘だと思います。
・残雪期に注意すべきポイント3つ
<落石>
雪解けが進むと落石の危険が増します。
雪面の落石は無音なので、気づかないまま直撃なんてこともあります。
<装備>
朝晩はカリカリのアイスバーンになります。
この時期はまだまだ冬の装備が必要です。
チェーンスパイクでどうにか登ったけれど、下山時の高度感で恐くなり歩けなくなっている方も毎回見かけます。
そして、装備を持っていても正しい使い方が出来ていない方も見かけます。
逆に日中は雪が緩んで、踏み抜きます。
足元を取られて、転倒~滑落も発生しています。
<天気>
ホワイトアウト時は、カール内をぐるぐるリングワンデルングになっている方も見かけます。悪天時は登らず、事前の情報収集、装備の点検を行い、慎重な行動を心がけると安心です。
もちろん、グリーンシーズンに登って、下見をしておくと良いと思います。
それから、雪になったり、雨になったり、変化も激しいです。
特に雨の後は凍りますので注意してください。
麓のバスセンター前にあるアウトドアショップKさんでは、いろいろな訓練イベントを主催しているので、立ち寄ってみてください。
・まとめ
・YouTube
登山はもちろん、下山後は温泉に、グルメ♪
万が一悪天候で撤退しても、
養命酒の工場や、マルスウイスキーの工場見学など、麓でも南ア・中アを眺めながら、素敵な時間を過ごすことができますよ♪
おいでなんしょ!木曽駒ケ岳!