【中央アルプス・伊那前岳】雲海に浮かぶ稜線を駆ける
登山の醍醐味のひとつは絶景の「稜線歩き」だと思います。
今回は、気持ちの良い稜線歩きができるおすすめのルート、中央アルプスの伊那前岳に行ってきました。
標高2883m、雲海に飛び出た静かなルート。
登山道の詳細や、稜線登山の注意点など、詳しく紹介します。
・伊那前岳について
伊那前岳は、中央アルプスの中でも、木曽駒ヶ岳や宝剣岳に多くの登山者が集中する山域の中でも、絶景の長閑な稜線を、静けさのある山歩きができる穴場的ピークです。
麓の北御所登山口から登るのもおすすめですが、
駒ヶ岳ロープウェイを利用することで、短時間で登頂することができます。
せっかくの楽しい稜線歩きなので、時間に余裕を持って写真を撮ったり、食事をしたり、のんびり計画で行ってきました。
・コースタイム
千畳敷~乗越浄土・・・0:40
乗越浄土~伊那前岳・・・0:30
伊那前岳~乗越浄土・・・0:30
乗越浄土~千畳敷・・・0:30
合計2時間10分(休憩含まず)
・伊那前岳の登山ルート
いつも通り、バスとロープウェイを乗り継いで、
標高2612mの千畳敷カールからスタートします。
<バス・ロープウェイについて>
時間については、季節で変わりますので公式ホームページをご覧ください。
運行情報も随時更新されています。
千畳敷の気温は10℃。過ごしやすい気温ですが、運動量はありますので、汗冷えに気をつけなければ。
伊那前岳、いざゆかん!
千畳敷カールの遊歩道も、雪に埋まっていますので、チェーンスパイクを装着します。
私は、スノーライン(マジックマウンテン)のチェーンセンウルトラというものを愛用しています。
チェーンスパイクなのに前爪のあるこのモデルは、前詰めを蹴りこむような使い方はできませんが、前爪があることで、歩くときのトラクションが効くので、ぐんぐん前に進む印象があります。
八丁坂の分岐が登山道の始まりです。
ここからは、本格的な登山道になります。
軽装でも登れてしまうかもしれませんが、それは、絶対に天気が良い場合、絶対に事故が起きない場合ですので、山ではそんなことはあり得ません。(きっぱり!)
しっかりした雪山登山の装備が必要です。
八丁坂はとても急登なので、登ることができても、下山時はかなり高度感があります。
夏道なら整備されていますが、この時期は下山時には雪が凍り、トレースは崩され圧雪されて、滑り台のようになっている箇所もあるので要注意です。
オットセイ岩から先は、谷がボトルネック状に狭くなるため、風が集まりやすく強風ポイントでもあります。
風の強いときは、この手前で身支度を整えると良いと思います。
千畳敷から約40分で、乗越浄土に到着しました。
右手はこれから登る伊那前岳方面。
見えているピークは和合の頭です。
左は宝剣岳。
正面は青い屋根の宝剣山荘と赤い屋根の天狗荘。その奥に中岳と、さらに奥に木曽駒ヶ岳が隠れています。
中央アルプスの魅力がたくさん詰まった大展望が広がります。
いつもは駒ヶ岳を目指すところですが、今日はのんびり伊那前岳に向かいます。
積雪は20cmほどで、南斜面や、強風のところは岩やハイマツが見えています。
まずは正面に見えている和合の頭までは北斜面をトラバースします。
厳冬期はここもガチガチに凍るので滑落に注意が必要です。
トレースの脇には太陽の光を反射するシュカブラ。
和合の頭を過ぎると、稜線散歩のスタートです。
この先は風を避けるポイントがありませんので、強風のときは要注意です。
乗越浄土から伊那前までのちょうど中間、九合目に到着しました。
青空の広がりの底をなだらかに起伏した稜線は、お昼寝をしている牛の背中のようです。
緩やかなアップダウンは汗をかくこともなく、呼吸も楽ちん。
遠景には南アルプスと富士山も見えます。
ところどころ、狭い雪面を通過するので、慎重に進みます。
人影に見えたのは、勒名石。
高遠藩の郡代、坂本天山という人が、70人以上のパーティーで検分したときに、
あまりの絶景に感動し、誌を読み、石工に彫らせたそうです。
勒名石からは、すぐに伊那前岳山頂です。
乗越浄土から30分、登頂です!
三角点は山頂の標識から北御所側に数メートル進むとあります。
宝剣岳、三ノ沢岳、檜尾岳から空木に続く山並みが、粉砂糖のような雪を被り、
中央アルプスの魅力を堪能できます。
天気がよく、風もないので、しばらくのんびり過ごします。
訪れる人も少ないので、焦らず写真が取れます。
なんなら昼寝もできちゃいます(USO)
さて、山頂からの景色を堪能したら・・・
実は、乗越に戻る方も、絶景で、正面に宝剣岳を望みながら歩く時間はとても贅沢です。
ではダイジェスト写真をどうぞ!
・宝剣山荘について
乗越浄土に到着したら、宝剣山荘で休憩します。
日帰りの方でも、温かい飲み物や、軽食を注文することもできます。
宝剣山荘の正面には今登ってきた伊那前岳が、空を切り取り、
ブルーと白のコントラストを楽しませてくれます。
宝剣山荘の位置するこの場所は、乗越まで行けば南アルプスからのご来光、そして小屋の裏手からは、木曽谷に沈む夕日を望むことができます。
泊りで訪れたら、夕暮れのマジックアワーや、満点の星空が待っていますので、是非泊まりで来てください!
・稜線歩きの注意点
強風のとき、稜線上は風を避ける場所がありません。
歩こうと片足を上げただけで、身体が浮き上がる程の強風になることもあります。
やせ尾根では強風=滑落の危険があります。
ハイハイ状態で進んだこともありますし、岩にザイルで体を固定して一晩ビバークしたこともあります。
強風以外にも、稜線は雨も斜面を吹き上げ、まるで下からシャワーをかけられているようになることもあります。
視界は無くなり、足元は濡れて滑りやすく、シェルの内側まで濡れてしまい、低体温症の危険もあります。
また、雷が鳴っているときも、稜線では自ら雷のターゲットになるようなものです。
もし近くで雷が鳴っているときは、姿勢を低くしてやり過ごします。
地面に寝そべってしまうのはNGです。地面は雷の通り道なので危険です。
何より、雷が発生しそうなとき、特に夏の午後は稜線のルートを行かないことです。
伊那前岳は、起点の乗越浄土のすぐそばに宝剣山荘があり、往復の行動時間も短いですが、一般的に稜線上に水場はありません。
水分は事前に確保しておくことが必要です。
・まとめ
ということで、今回は、ゆっくりと伊那前の稜線を散歩してきました。
10月下旬から11月の難しい時期でしたが、ルートのコンディションもよく、天候にも恵まれ、素敵な時間を過ごせました。
雲海の上に飛び出す峰々。
遠くに浮かぶ南アルプス。
まるで空に向かって歩いているような錯覚に陥る稜線は、
自分の力で歩いた形跡を目の前で実感できます。
見渡す限りの絶景は、訪れる人すべてが心を奪われます。
・YouTube
動画もアップしています。ブログでは伝えきれない絶景を是非ご覧ください♪