薬師岳 縦走レポート 三日目
通称ダイヤモンドコースと称される、折立~立山の薬師岳縦走のルートを紹介します。
今回は三日目、スゴ乗越小屋のテン場から出発し、北アルプスの楽園とも称される五色ヶ原まで進みます。
昨日は、薬師峠から薬師岳を踏んで、スゴ乗越まで移動しました。
このルートの核心部といえる薬師~北薬師の痩せ尾根を、爆風の中通過しました。
・ルートについて
まずはスゴ乗越小屋キャンプ場から灌木帯の中を下ります。
立山から登ってきたお姉さんの情報によると、危険個所はほとんど無いが、アップダウンが激しく、結構しんどいらしいです。
とにかくアップダウン!
昨日までの疲労の蓄積が膝にキテいますが、覚悟を決めて!
五色ヶ原、いざゆかん!
三日間の雨で水気をたっぷり含んだ登山道はズルズルと滑ります。
停滞中はずっと狭いテント内にいたため、身体のあちこちがガチガチに固まっています。
私もパートナーも、まるで遭難者のような挙動です(笑)
出発してすぐに怖い箇所が!
谷に向かって大きく崩落した砂地を、握りにくいトラロープを補助に、バックステップで降ります。
ロープはあくまで補助なので、力を加え過ぎずに、身体のバランスを支える程度です。
実際は登山靴のソールが十分グリップしそうですが、雨のズルズル感と、砂地のサラサラ感が混じった絶妙なコンディションで、心臓がバクバクします。
でもパートナーは普通に前向きでスタスタ降りていました。
悔しい~!
でも水分やぐっしょり濡れて重くなったテントは私が持ってるもん(>_<)
コブを越えて、降り立ったところが、スゴ乗越(標高2,180m)です。
続いてスゴの頭まで登り返しです。
序盤は灌木帯の緩やかな斜面。
だんだんと傾斜がきつくなり、灌木とハイマツの急登をジグザグに登ります。
小さなハシゴが。
「スゴの頭」の上部はハイマツの中に大きな岩がゴロゴロしています。
基本の三点確保で登ります。
手足の長さがアレな私には、一段一段がなかなかキツイ!
スゴの頭(標高2,431m)です。
あ、でも実際のスゴの頭は、少し南東にあり、登山道は通っていません。
真正面には、これから向かう越中沢岳。
また登り返しかぁ~。
後ろには金作谷カールを抱いた薬師岳とその隣に荒々しい岩峰の北薬師岳。
薄くちぎれた雲を纏い、独特の色が霊山ならではの雰囲気を醸し出しています。
今度はまた下り。
鞍部までジグザクに100m程下ります。
今日一日は『せっかく登ったのにぃ~。』という台詞が多く飛び出します。
赤茶色のザレた道は、ザックの重さでブレーキが効かず、滑りやすくて歩きにくい。
これまで使わなかったポールを一本出して、バランスの支えにします。
ポールはブラックダイヤモンドのトレイルウーマンです。
軽くて丈夫で、長さの調節がクリップ式なので、積雪期にグローブをしたままでもOKです。
スノーバスケットに交換してBCスキーでも使っています。
実は結構長くなるので、男性でも軽量化を目指すならレディースモデルがおすすめです。
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鞍部は標高2,325m。
ここからいよいよ越中沢岳まで。またまた登り返しです。
!!
上を登っていた方からの落石が!!
小さな石が崩れながら落ちてきた程度ですが、グレープフルーツぐらいの石が足元スレスレを通過しました。
「らくッ」は言ってもらいたかったですが・・・。
越中沢岳の中腹からは、大きな岩がゴロゴロした絶壁スレスレを通過します。
装備が重いとバランスを崩しやすいので注意。
小さなピークを越えると、しばらく西側斜面を進んでいたルートは、東側斜面を巻くようになります。
風避けになるので歩きやすいです。
この岩場は谷側に落ちないようにトラバースします。
スタンスはありすので、三点支持で登ります。
岩登りはやっぱり楽しい♪
続いて赤ザレの急傾斜。写真でみるより結構角度があり、トラロープがぶら下がっていますが、これまた細くて滑ります。
ハイマツ帯を抜けると、やっと緩やかになります。
前が開けると、越中沢岳のピークが見えます。緑の絨毯に白い登山道が伸びています。
越中沢岳山頂。
標高2,591m
こうして、昨日登った薬師岳を反対側から眺められるのも、縦走ならではの体験です。
たおやかな薬師岳と、荒々しい北薬師。
「あそこを歩いたんだ!」と考えると、後から嬉しさが増してきます。登った山は離れて眺めると、一段と綺麗に見えるし、愛着が沸いてきます。
ここからは比較的広く緩やかな斜面を下ります。
越中沢乗越まで、標高差235mを一気に下るので、一歩進むごとに手がパンパンに浮腫みます。
向こうに見える、右に緩く傾斜した平原が五色ヶ原です。
ハイマツの中に木道が現れました。
背の低いシラビソの林を抜けると、越中沢乗越です。
谷側にはまだ雪渓が残っていました。
またまた登り。
標高2,356mの越中沢乗越から、次の鳶山までは260mの登り返し。
似たような景色がどれだけ続いただろうか。
稜線に引かれた登山道を緩くアップダウンします。
ハイマツを分け入る細い稜線を越えたら鳶山です。
鳶山
鳶山を過ぎるとガスに包まれています。
乳白色の世界に広大な草原が広がり、切れ落ちたザラ峠を挟んで、ガスが切れると黒々とした立山連峰が聳えます。
この辺りは池塘が点在して、お花畑に雪渓、地面を撫でるように漂うガスと相まって、本当に異世界のようです。
小屋の向こうに見えるのが、針ノ木岳、ズバリ岳。
写真が上手く撮れませんでした。YouTubeに動画をアップしましたので、是非ご覧ください。
真っすぐ進んできた木道の前、独立して聳える岩峰が鷲岳です。
鷲岳を90°に折れると、五色ヶ原山荘に到着です。
立派な建物の五色ヶ原山荘。
このあたりは標高2,500m
最高のロケーションです。
受付をしたら、とっくに禁断症状が出てきているコーラで到着の祝杯!
これまで水分もあまり摂らずに歩いてきたため、脱水気味の身体に染みわたります。
富山限定デザインで、糖分摂取量とともにテンションもMAXに!
小さい缶なので、パートナーと合わせて2本ずつ買いましたが、お花の写真を撮っている間にパートナーが何食わぬ顔で3本目を飲んで、ゲップまでしています!(怒)
他の水分だって私がずっと歩荷してきたのに~!
一、幕営の後で小屋までの買い出しに行くこと
二、テントで私の足をマッサージすること
三、私に山用靴下をプレゼントすること
以上を言い渡し、これにて一見落着。
新田次郎の「剱岳<点の記>」では、第二章の地形探索で五色ヶ原が登場します。
登山ルートを探るため、柴崎と長次郎、生田の三人で、ザラ峠をベースキャンプとし、雪がまだ多い、ここ五色ヶ原へやってきます。
―――探索を終え、ザラ峠に戻る際に、濃いガスに見舞われ道を見失う長次郎。長次郎に対し疑心暗鬼になる生田。パーティーのリーダーとして落ち着かなければならない柴崎。結果、長次郎が無事に日没前にテントまで導いたことで、長次郎への信頼はさらに厚くなりました。―――
の、場面です。
三人の絆が深まった五色ヶ原で、私とパートナーはコーラ事件により信頼感を失いました(苦笑)
ちなみに映画版の方では、冒頭に雪の五色ヶ原が出てきます。
さて、落ち着いたら、木道をさらに7分程進みます。一段下がった平原にキャンプ場があります。
かなり広く50~100張はイケるそうです。
水場の近くにするか、トイレの近くは嫌だなぁ、とか、ゆっくり悩んで決められる程広大なテント場です。
結局、中心部から少し離れた、ハイマツに囲まれたフラットなところに幕営します。
幕営時のポイントはこの後の文章でまとめました。
・五色ヶ原山荘テント場の攻略法
お花畑に囲まれた天国のような五色ヶ原キャンプ場。幕営の際のポイントを以下にまとめます。
<基本情報>
幕営受付・・・山荘にて。綺麗なお姉さんがいて癒されます。
幕営料・・・700円/人
水場・・・沢水を引いたコンクリ製の水場があります。要煮沸。
涸れることもあるそうですが、今回は豊富に出ていました。
トイレ・・・テン場中央に大きなトイレが設置されています。
夜間は人感センサーライトまで点きます。
ハエがちょっと・・・ですが、テン場のトイレとしては標準的?
売店・・・山荘にて。飲み物、お菓子、カップ麺などがありました。
飲み物は、コーラ、緑茶、スポーツドリンク、ビールなどがあります。
お菓子は、チップスター、チョコレート、大袋の煎餅など。
コンクリの建物がトイレです。そのさらに向こう側が水場です。
<広さについて>
とにかく広いので、張れないということはなかなか無いと思います。
公称は50張りですが、100張りはできるそうです。
それでもせっかくのロケーションなので、明るい時間帯に到着すると、ゆったり過ごせます。
ベンチも設置されていてフラットな箇所もあるので、もし早く到着できたらラッキーです。
<風対策について>
かなり広い平原なので、悪天時は風を避けるものがありません。
ハイマツの脇や、登山道の境界に敷かれた丸太をアンカーにすると良いと思います。
地面はほどほどに柔らかく、ペグもしっかり効きます。
<トイレの最新情報>
2020年時点では、和式から洋式に変わっていました。
汲み取り式です。
個室数もそこそこあるので、大渋滞にはならないはずです。
トイレットペーパーが無いという事前情報でしたが、設置されていました。念のため持参しましょう。
<携帯電波について>
テン場はまったく電波なし。
小屋に向かって木道を登ると入りました。
小屋周辺は不安定でした。
※docomoの場合
<持ってくればよかったもの>
今回の山行では、どのテン場の水も煮沸して飲みました。全行程で寒かったため煮沸でもよかったですが、簡易浄水器があれば、早く安全に飲用水を作れました。
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料理の場合は、煮沸してしまうので良いのですが、飲用は生水はちょっと怖いです。
お腹が下るということは、脱水症にもつながりますので、要注意です。
目に見えるゴミなどが浮いている場合は、コーヒーフィルター を使うのも手ですね。
・コースタイム
今回の私のコースタイムを記しておきます。
スゴ乗越小屋
↓ 1:40
スゴの頭
↓ 1:50
越中沢岳
↓ 2:10
鳶山
↓ 1:00
五色ヶ原山荘
↓ 0:07
五色ヶ原キャンプ場
合計6時間47分 ※休憩含む
・まとめ
スゴ乗越との間のルートはとにかく「アップダウン!」の連続です。危険個所はあまりありませんが、疲労による事故には十分注意が必要です。
お花もたくさん咲いていて、天気が良ければ、絶景の稜線歩きになるので、疲労も吹き飛びそうです。
今回は折立から入山し、あまり天候に恵まれない中到着しましたが、五色ヶ原はお花に草原、池塘に雪渓と、最高のロケーション。室堂ターミナルからであれば標準コースタイムで5時間と、比較的短時間でアクセスできるので、ここ五色ヶ原を目当てに、まったり過ごすのも素敵だなと思いました。
詳しい動画をYouTubeにあげていますので、是非ご覧ください。
↓リンクはこちら
四日目につづく・・・