剱岳 登山の難易度とルートの詳細【Day1】
登山をしない人でも「剱岳」という名前を聞いたことがある人は多いでしょう。
剱岳は、北アルプスの富山側、立山連峰にある標高2999mの山です。
小説・映画「剱岳~点の記」では、登頂の難しさが描かれ、立山信仰では「針山地獄」と称され、登ることが許されない時代があり、現代でも一般登山道では一番難しいとされています。
昨年は悪天と融雪の状況から、撤退してしまったので、今年はなんとかリベンジすべく、行ってきました。
・剱岳 登山ルート
剱岳への一番メジャーな登山ルートは、
室堂→雷鳥沢→(雷鳥坂を登って)→別山乗越(剣御前小屋)
→剱沢(ここでテント泊)→剣山荘(小屋泊はこちら)→別山尾根→剱岳
となります。
・一日目 剱沢までのコースタイム(私の場合)
室堂→雷鳥沢1:10
雷鳥沢→剱御前小舎1:35
剱御前小舎→別山0:35(近いので踏んできました)
別山→剱沢テント場0:50
※写真を取りながら、ゆっくり見物しながらのペースになります。
・剱沢までのアプローチについて
立山登山は、いつも富山側の立山駅から入ります。
長野側からは室堂までの移動時間が長いので、せっかちな私はこちらからです。
逆に時間があれば、扇沢(長野)から行くのも楽しそうですね。
立山駅から美女平までのアクセスはこちらを参考にしてください。
8月12日
立山駅から、まずはケーブルカーで美女平駅へ向かいます。
美女平からはバスに乗り換えます。
ザックはバスの荷室に入れますが、外付のピッケルや水物、壊れ物は車内に持ち込む必要があります。
ブナの森を登り、緩やかな起伏が続く高原の道路を走り抜けます。
7:40室堂着
室堂に到着すると、辺りは強風で、一面が真っ白なガスに包まれています。
バスの荷室からどんどん排出される沢山のザックの中から、自分のものを探し、バス酔いのふらつく足取りでターミナル構内へ。
入口すぐのところで、登山届けを記入し提出します。
するとパートナーを頭痛と吐き気が襲います。
高山病だ。
実は、立山には昨日着いて室堂まで行ったのですが、激しい頭痛と吐き気で、思いつくかぎりの対処法を試したのですが、改善せず、一度立山駅まで戻ってきたのでした。
下界でしっかり休養し(と言っても車中泊なのですが)今日、再びのチャレンジとなったのです。
昨日よりは症状も軽い様子で、鎮痛剤を飲み、1時間程身体を慣らします。
あまり改善しませんが、パートナーの判断で、雷鳥沢までゆっくり標高を下げてみることにしました。
ゆっくり深呼吸しながら歩くことで、筋肉を動かし、血液に取り込んだ酸素を循環させつつ、同時に標高を下げる作戦です。
みくりが池まで標高を下げると、少し症状が良くなってきたようです。
体調を聞き取りながら、さらにゆっくり進みます。
雷鳥荘を越える頃には、すっかり頭痛もなくなったようで、景色を楽しんだり、謎の旋律の鼻歌をうたいながら、カメラのシャッターを切ったりしています。
良かった。ずっと楽しみにしていたから。
眼下にはミニチュアの雷鳥沢。色とりどりのテントが張られています。
その遠景に聳えているはずの、別山乗越はガスに隠れています。
雷鳥沢のテン場は、思っていたよりも空いています。
もう出発して、みんな思い思いの目的地に出立したようです。
ゆっくりした時間が流れる不思議な雰囲気のテン場です。
ここからが、いつもキツイ。
いつも思うのですが、楽に登れたことがありません。
延々とも思える登りが続く雷鳥坂です。
浄土沢の簡易的な橋を渡ると、戦いの始まりです。
剱沢、いざ、ゆかん!
パートナーの高山病の症状が再発したらいけないので、いつもよりペースを落とします。
序盤はハイマツの間に白く引かれた爪先上がりの道を、ゆったりした気持ちで進みます。
振り返ると色とりどりのテントが並んでいる雷鳥沢が、どんどん小さくなっていきます。
火山ガスの噴気がもうもうと立ち昇る地獄谷は、その一帯だけ別世界。
長野側なら焼岳も同じく硫黄の匂いが立ち込めますね。
時折、冷たい風がやってきて、身体の熱気をさらってくれます。
肩に食い込むザックの重さに、気合が入ります。
パートナーの調子を確認すると、グーサイン。
サプライズで隠し持ってきた虎屋の羊羹、夏限定バージョンをパートナーに食べさせて、元気付けます。
明るい乳白色のガスと、緑の絨毯のコントラストがメルヘンな雰囲気を醸しています。
ひ~!きつい!
心肺も、太腿も。
こんな過酷な環境で綺麗な花を咲かせる植物の姿に勇気をもらいます。
アキノキリンソウとチングルマの綿帽子。秋の気配を感じます。
オヤマリンドウ。
顔を伝ってきた汗が、自分の吹く息で飛ばされます。
大きな岩の道になったら、乗越はもうすぐのはず。
剱御前小舎の影が見えてきました。
とどめの階段を登ると剱御前小舎に到着です。
すると小屋の裏側から楽しそうな笑い声が・・・向かってみると・・・
昨年ジャンダルムで出会ってご一緒させていただいたGABOさんファミリーと再会しました。
「好きだねぇ」と、お互いの山好きをからかいます。
みなさん、剱に向かう途中とのことで、今回もご一緒できそうです。
再会の喜びを分かち合い、「ここから剱沢まではずっと下りだから楽ですよ」と教えてあげます。
すると、パパさんから「せっかくだから別山踏んでから行こうよ♪」とお誘いが・・・。
『いや、ガスってるし、別山は積雪期にも何度かやってるので、私たちは先に降りてテン場を確保・・・』と丁重にお断りしようと思ったら、
「ハイッ!行きます!行きましょう!」とパートナーが勝手に快諾しています(泣)
あんた高山病は大丈夫なのかい?
高山病だって言うから水モノ全部私が背負ってるんだから!(怒)
なんて考えながらも、皆で行動できるワクワク感で、気がついたら登り始めていました。
あいにくのガスですが、ゴリゴリした岩の感触を足の裏に感じ、ハイマツが点在する景色の中の尾根歩きは気持ち良い。
剱御前小舎から25分で剱沢方面の分岐のコルです。
映画「剱岳~点の記」のワンシーンではここで撮影されたそうで、本当ならここから見える剱岳がかっこいいんですが、ガスっていて何も見えません。
ここで荷物をデポも、別山まで10分なのですが、短距離なのでそのまま進みます。
あっという間に別山頂上。
ガスが静かに移り動く中に見え隠れする岩や残雪が、夢の断片のようです。
別山を踏んだら、剱沢までは下るのみ。
先ほどの分岐まで戻り、さらに剱沢を目指して下っていきます。
ガレガレの道は、重たい装備では歩きにくいですが、目をやる度に近づいてくるカラフルなテント場の姿が励みになります。
一年振りに剱沢に帰ってきました。
テント場の詳細はこちらも詳しく書いてあります↓
剱岳を目の前に、標高約2500m。周囲を岩峰に囲まれたテント場は、刻々とガスが流れ込み、神秘的な雰囲気。
剱だけ青黒く、彫りの深い表情で鎮座しています。
あんな山、どこにどうやってルートを見出したのだろうか。
幕営のスペースを確保したら管理小屋で受付をします。
我が家はいつものライペンのエアライズ3。
グランドシートはタイベックシートを必要なサイズに切ったものを使っていいます・・・しかーし!!
広げてみると、切れ端の小さい方を持ってきてしまいました。途方に暮れていたらお隣のGABO父さんから予備のグランドシートを貸してもらえました。
目印のタルチョを張ったら完成です!
さて、剱沢のテント場には売店はありません。
水場は、沢水を塩素消毒した飲用可能な水場と、沢水が直接引いてある水場(こちらは要煮沸)があります。
飲み物やカップラーメンは5分程、谷を降りた剱沢小屋まで買いにいきます。
しか~し!
最近悪天候の為、ヘリの荷揚げが出来ず、ウイスキーしかないそうです(泣)
さらに30分程下った剣山荘まで行けばいろいろ買えるそうです。
テントに戻り、悩みますが、あのシュワシュワした黒くて甘くて美味しい飲み物、そう「コーラ」の禁断症状が出てきました(笑)
こりゃもう行くしかない!往復1時間の剣山荘まで、アタックザックを背負い、
いざ、ゆかん!
剣山荘までは、下りです。
ということはまたここを登ってこなければいけないのかぁ、とちょっぴり後悔します。
途中に雪渓を3ヶ所渡ります。
しっかりトレースがありますので、アイゼンは必要ありませんでした。
それでも雪渓の下が雪解けの沢になっていて、岩の周囲は下が空洞なので、踏み抜かいないように注意が必要です。
また朝晩は溶けた雪が凍ってツルツルになっていますので滑らないように。
雪渓はつい足元ばかり見てしまいますが、融雪が進むにつれて落石の危険もありますので、上部も確認しながら進みます。
以外と遠い。
心が折れ始めたとき、岩の間からなにやら出てきました!
オコジョだぁ~♪
こんなに可愛いのに、昔の猟師はオコジョを見ると不吉の前兆と考えていたそうです。
オコジョはオスとメスで倍近く身体の大きさが違います。
このコは大きさ的にたぶんメスかな?
オコジョに励まされ、剣山荘、到着!
入口を開けると、冷蔵庫にコーラ、アクエリアス、お茶、オレンジジュース、牛乳まで!
もちろんビールもあります。
飲み物の宝庫じゃ~!
もちろん念願のコーラをゲット!
まずはその場で1本飲み干します。
あとはテン場でゆっくり楽しむぶんを購入♪
歩いた甲斐がありました。
さて、帰りは登りです。
疲れた足腰にはなかなか堪えますが、コーラパワーで戻ります。
コーラが売っていない!炭酸~!そんなときはコチラ↓
お隣のGABOさんファミリーが持ってきた電気ショックゲームをやったり(なんで腰痛めてるのにこんなモノ持ってきたのか?)、談笑して過ごします。
『せっかく山に来たんだから、ゆっくり歩いて楽しまないと―――』と言ったGABO父さんの言葉がとても印象的でした。
思えば私の登山は、のほほんとしていながらも、テン場の確保を重視したり、やっぱり登頂にこだわっている部分もあり、コースタイムを気にしすぎていつもハイペース。仕事じゃないんだから、楽しまなきゃなと、つくづく思いました。
今回の山行は、天気が微妙な為、予備日を多くとってありますので、そのぶん食料にも「工夫」という名の手抜きが必要です。
今夜は、ミートソースパスタです。
パスタは、サラダ用の細いもの。
理由は少ない水で、短時間で茹でられるからです。
茹で上がったら、温めないでそのまま使えるレトルトのミートソース。
キューピーのコレは、味が濃い目なので、味覚が鈍麻する標高の高い場所にもってこい。
それに、誰が作っても失敗しませんし、食べやすいので、バテて食欲が無いときにもおすすめです。
明日の天気は、午前中に雨が上がる予報です。
Mountain forecast、ヤマテン、てんくら、SCW、どれも同じ。
回復が遅れるようならは、一日停滞しよう。
歯磨き、トイレを済ませ、寝る準備。
歯磨きは環境破壊しないオーラルピースというものを使いました。
・テント泊の装備
シュラフはモンベルのバロウバッグ#3
ダウンに比べ重たいですが、連泊の雨濡れでも保温するので信頼しています。
インサレーションはパタゴニアのナノパフ。こちらもプリマロフトなので濡れても保温します。
翌日そのまま着るTシャツと下着に着替え、ユニクロのリラコ(ステテコ)でシュラフ内のサラサラ感にこだわります。
基本的な装備はこちらの記事をご覧ください↓
汗をかいた身体は自作の重曹スプレーで清拭します。
これで寒いということもなく、快適に眠れました。
明日のアタックルートをイメトレしながら、眠りにつくのでした。
剱岳アタック編につづく