木曽駒ヶ岳 秋のテント泊登山のポイント
10月―——冬の足音が響き始めるアルプスの山々。
今回は、中央アルプス最高峰、木曽駒ヶ岳にテント泊で登ってきました。
・木曽駒ケ岳ってどんな山?
木曽駒ケ岳は、長野県、伊那、駒ケ根のあたりに位置する、中央アルプス(木曽山脈)の主峰、標高は2,956mです。
中央アルプスは急峻なことて有名ですが、駒ケ岳ロープウェイを利用することで日帰りの登頂も可能で、とても人気の高い名峰です。
最近は雷鳥も見られるようになり、檜尾避難小屋は夏季は有人小屋になり、テン場も設置されたことで、その人気に拍車をかけています。
近年、国定公園にも指定されました!
スーパースターの峰々が勢ぞろいの「おもてなし」の明るい北アルプス。
昔と変わらない通好みの「シブさ満点」の南アルプス。
北と南、それぞれの良さを兼ね備えた山域が中央アルプスです。
・木曽駒ケ岳の登山ルート
木曽駒ヶ岳一帯は、比較的狭い範囲に、駒ヶ岳、宝剣岳、伊那前岳、三ノ沢岳など、それぞれに違った魅力のあるピークが密集し、バリエーション豊かなルートで結ばれています。
アプローチは麓の、駒ケ根市の菅野台バスターミナルから、バスとロープウェイを利用して千畳敷カールが一番メジャーな登山起点です。
バスに乗って、清流を渡り、紅葉の森林の中の山岳道路を駆け抜けると、30分でロープウェイ乗り場のある、しらび平駅。
ロープウェイで約7分間の空中散歩を楽しんだら、天空の楽園、千畳敷に到着です。
今日の気温は、なんと!12℃!?
10℃を超えるなんて、ありえない暖かさです。
暖かいとは言っても、時折カールの斜面を這って吹いてくる、冷たく乾いた風に秋を感じます。
中央アルプスの秋は、北や南に比べて、空がとても綺麗。
周囲のいろんな音を吸い込んで、夏より静かに感じるから不思議です。
木曽駒ヶ岳、いざゆかん!
今年は例年よりかなり気温が高い。
信州駒ヶ岳神社の鳥居を潜って進むと、すぐにTシャツ1枚で十分なほど、ぽかぽか陽気。
行く先を壁のように立ちはだかる岩の塊。まるで蟻んこのように小さな人間の影が連なって登っているのが八丁坂。
空に向かって岩の急斜面を登ります。
高まる気持ちと一緒にハイペースで登ると、汗ばんできますが、足を止めると、時折吹いてくる風は冬の匂いがします。
八丁坂の中間地点に鎮座する岩が「オットセイ岩」です。
宝剣岳を見上げるオットセイは今日もイケメン。
ついついハイペースになり、息を切らすこと30分で乗越浄土。
私の大好きな景色・・・360°の大パノラマが広がります。
たおやかな稜線の伊那前岳。
天空に穂先を突き刺す宝剣岳。
正面には木曽駒ヶ岳の前衛峰、中岳。
小さなマッチ箱のように可愛らしい青い屋根の宝剣山荘と赤い屋根の天狗荘。
まずは宝剣山荘で受付。
いつ来ても何度来てもほっとする存在の山小屋です。
「お世話になりまーす!」
宝剣山荘から先は、中岳を越えるルートが景色も良く安全でおすすめです。
私は積雪期以外なら、巻き道を使うことが多いです。
三ノ沢岳や、雲に浮かぶ御嶽山を眺めながら、ちょっとした岩場歩きが楽しめます。
ただし、巻道は、足元が狭く谷に切れ落ち、三点確保が必要な箇所もありますので、要注意。
10月を過ぎると、岩が凍り始めるので、なるべく使わないほうが良いと思います。
山の北面を通る巻道は、日陰が多く、掴んだ岩はひんやりと冷たくなっています。
・秋のテント泊の注意点
巻き道を進むと、視界が開け、木曽駒ヶ岳とその直下に位置する頂上山荘が見えてきました。
「ただいま~」
頂上山荘のテント場は第二の我が家。軽く50回以上はここに幕営しています。
小屋閉めも終わり、黄色く乾燥した空間が、季節を吐き出しているようです。
注意点その1
この時期はもう頂上山荘は閉っています。
つまり水場はありません。
下界から担いでくるか、宝剣山荘で汲んでくるか。
注意点その2
山荘が閉っていますので、トイレもありません。
トイレは、簡易トイレを使うか、宝剣山荘まで往復します。
注意点その3
ガスはノーマルガスは使えない。
ご存じの方も多いと思いますが、ノーマルガスは低温下では使えません。パワーガスが必要です。
その他、冬季のテント泊について説明していますので、こちらをご覧ください。
ブログはこちら
さて、あたりはガスに包まれてきたので、贅沢にお昼寝をして、日帰りのお客さんが下山した頃。何もかもが透き通ってしまいそうなほど静かな時間帯、頂上にアタックします。
お昼寝から目覚めると、ガスは消え、傾いた陽光が山一帯のコントラストが強くなっています。
いざ頂上へ!
頂上までは、テン場から直登するルートが一般的ですが、今回も、私のお気に入りルートで登ります。
一度、西駒方面、馬の背分岐から折り返します。このルートは、遠回りになりますが、人が少なく、お花も多く咲いています。
淡く滲むような長く伸びる日差しの中を進むと、チングルマの綿帽子が風に揺られて出迎えてくれました。
遠くのハイマツの茂みから雷鳥の鳴き声が聞こえてきました。羽は所々白くなり、かすかに夏をつなぎとめているのか、あるいは、冬支度かな?
写真を撮りながらのんびり進むと、二つの御社が建つ、山頂。
標高2,956m
貸し切りの山頂は、今、この時間、自分が一番宇宙に近いところにいるような、不思議な気持ちになります。暖かいものが恋しくなる時間までゆっくり山頂からの景色を堪能します。
山頂からは、中岳越しの宝剣岳と伊那前岳。
雲に浮かぶ御嶽山。
三ノ沢から空木まで伸びる稜線。
遠景に南アルプスも見えます。
夕暮れが迫る山頂では全部ひとり占め。私の宝物。
陽が傾くと同時に、冬の到来を予感させる冷気がやってきました。
・気温と服装はどんな感じ?装備は?
秋の服装は、「かなり寒い」「いつ冬になってもOK!」と思って準備しておいた方が良いと思います。
今年は特別暖かく、日中の行動中はTシャツでも汗ばんでいました。
しかし、日陰になったり、風が吹いたとたんに、「ここは高山!冬はもうすぐそこに!?」という寒さになります。
空がグラデーションになると、一気に冬のような寒さに包まれます。
それでも気温は5℃!
暖かい!この時期なら氷点下になるのが普通なのに。
時折パタパタとフライが音を立てる程度の、穏やかな山の夜。
夜間は完全に下界の冬と同じ。
トイレにいくのも億劫になります。
朝目が覚めたらいきなり雪が降って、辺り一面霜で真っ白なんてこともしばしば。
秋の日帰り装備に加えて、ダウンジャケット、ダウンパンツがあると安心です。
レイヤリングで調整することが基本です。
・今回の服装
<行動中>
半袖Tシャツ
ソフトシェル
秋冬用パンツ
厚手のソックス
<テント場&就寝時>
上記の服装に加え・・・
ダウンジャケット
ダウンパンツ
象足
テント装備は・・・
3シーズンテント
アルミ蒸着マット(サーマレスト)
モンベルバロウバッグ#3
シュラフは夏用でも、中にダウンを着込んだり、ザックに足を突っ込んだり、工夫次第で、十分眠れる程度にはなります。
クライマーさんなんかは、軽量化のため夏用シュラフで、
翌朝「眠れなかった~!」なんて言っています。
モンベルのバロウバッグなら#3以上の暖かさなら、まずまず眠れます。
#5のダウンモデルは寒くてダメでした。
個人差はあると思いますし、着ているものでも違ってきます。
・まとめ
紅葉シーズンも終盤になると、日に日に冬の影が濃さを増していきます。
秋以降、テント泊で木曽駒ヶ岳に登る場合は、やはりネックとなるのが、小屋が閉っていることです。
一番はトイレ問題。中岳を越えて宝剣山荘まで急いでも20分。
夜間の行動はあまりおすすめしません。
ヘッデンも夜間行動に対応した十分な明るさのものが必須です。
水場も同じく宝剣山荘まで行く必要があります。
ロープウェイを利用して、比較的簡単にアプローチできてしまう反面、テン場に着いてから焦らないよう、しっかりした準備と、経験・知識が必要になってくるのが、秋の特徴です。
・YouTube
ご来光の様子や、ブログで書ききれない山の風景やルートの詳細を動画にしました。
是非ご視聴&チャンネル登録、よろしくお願いします