乗鞍岳 残雪期登山
6/2
昨年は季節外れの降雪でバスが運行せず、断念した乗鞍岳に再チャレンジしてきました。
6月の残雪の中で、かつ、雪の溶けた夏道の感覚に身体を戻すことが目的です。
また、出発地点の畳平がすでに標高2,702mなので、心肺のトレーニングにもなるし、何より歩行時間の短いので、途中途中で写真を撮ったり、ゆっくりごはんを食べたりできるのが魅力です。
乗鞍岳の説明
乗鞍岳という山は実は無くて、北アルプス南部の岐阜と長野の境に位置する、剣ヶ峰(標高3,026m)を主峰とする山々の総称を乗鞍岳といいます。
日本では19番目に高い山だそうです。
乗鞍岳のアクセス
乗鞍岳の玄関「畳平」までは、マイカー規制のため、シャトルバスか、タクシーを利用します。
長野側は、乗鞍高原発着で乗鞍エコーラインを通ります。運行会社はアルピコ交通です。
長野側の乗鞍エコーラインは7/1~10/31までの開通になりますので、この時期は岐阜側からしか行くことができません。
岐阜側は、「平湯温泉」、あるいは「ほおのき平」から乗鞍スカイラインを通ります。
運行会社は濃飛バスです。
こちらは5/15~10/31まで開通しています。
ほおのき平バスターミナル駐車場
ということで、深夜2:00ほおのき平駐車場に到着です。
基本的に24時間開放していますので車中泊が可能です。
駐車料金は無料です。
車は少なく10台前後。
トイレ
トイレも24時間利用できます。
自販機
自動販売機もたくさんあって、充実しています。
車の外に出てみると、Tシャツ1枚では結構寒いです。
トイレを済ませたら、仮眠です。
ソフトシェルを羽織り、毛布を被ったら暖かく快適に眠れました。
ほおのき平シャトルバス
バス時刻
バスの時刻表はこちらをご覧下さい。
乗鞍岳バスターミナル | 日本一高いところにあるバスターミナルです
時刻表によると、始発は6:55分。
私は6:00に起床して、朝ごはん。
他の車のドアのバンッ、バムッという開閉音が登山口駐車場ならではの朝の空に響きます。
寝ずに運転してきて、昨夜も寒くてほとんど眠れなかったパートナーは、サンドウィッチを飲み込む戦いでTKOされ、弱ったE.Tのようになっていあます(哀)
缶コーヒーとアリナミンVを与え再起動します。
バスのチケット売り場に人が並び始まったので、購入しに行きます。
料金は大人、往復2300円。
そのままバス停に並びます。
それなりに人がいます。
BCスキーの人も目立ちます。
ここは観光地でもあるので、普段着姿のご家族も。
だんだんと行列が長くなってきたところで、係員の方から臨時便の案内がありました。
私たちは少し早い臨時便に乗り、畳平へ。
バスは観光バスくらいの大きさで、大きな荷物やスキーは下の荷物室に入れることができます。
ゆったりしたシートに座った途端睡魔が。
気がついたら畳平です。
乗鞍岳コースタイム
※残雪期の場合
<登り>
畳平ー富士見岳・・・20分
富士見岳ー肩の小屋・・・20分
肩の小屋ー朝日岳・・・35分
朝日岳ー剣ヶ峰・・・10分
登り合計・・・1時間25分
<下り>
剣ヶ峰ー肩の小屋・・・40分
肩の小屋ー畳平・・・30分
下り合計・・・1時間10分
<合計歩行時間>
2時間35分
※休憩含まず
登山ルート
バスを降りると、いきなり周囲が山、山、山。
トイレを済ませ、登山届を提出したら、
乗鞍岳、いざゆかん!
真後ろには大黒岳、魔王岳があります。階段の整備された登りやすい山です。
目指すは剣ヶ峰。
鶴ヶ池を左手に眺め進みます。
肩の小屋までは整備された遊歩道があるのですが、分岐を左に富士見岳を経由して行きます。
おかしい。息が上がる。それもそのはず、すでに標高2700mを超えてるんですもんね。
岩がごろごろした道を登ります。
暑いのでTシャツ1枚になりました。
20分程で富士見岳。
ここはご来光スポットでもあるそうです。
ここから、摩利支天の分岐まで下ります。
観光目的でちょっと寄る場合は、登山未経験者だとちょっと危ないかもしれません。
右手眼下に不消ヶ池を見ながら。
雪はまだ池の表面に乗ったまま。あと数日で一気に湖底に落ちると、コバルトブルーの池に変身した姿が見えるかもしれませんね。
道を下りきると、摩利支天のコロナ観測所への分岐のところで遊歩道に合流します。
ここまででスタートから30分。
あと少しで肩の小屋です。
が、
雪渓のトラバース箇所です。
先の剣ヶ峰まで、何箇所か雪渓がありそうです。
二箇所目の雪渓。
谷は切れ落ちていて、もし滑落してもぶつかるような岩はありませんが念の為アイゼンを装着します。
もちろんヘルメットも。
他のお客さんもチェーンスパイクや軽アイゼンを履いています。
さすがにヘルメットの人は数人しかいませんでしたが、安全第一です。
斜度はありませんので、ピッケルではなくポールを使用します。
雪面は光の反射が強烈で、足元が見えにくいので、サングラスは必携ですね。
ステップになっていますが、ズブッと崩れることがあるので慎重に進みます。
クリアしたと思ったらまた雪渓が。
ここも慎重に。
コロナ観測所分岐から10分で肩の小屋に到着です。
トイレはこの先には無いそうです。
まだ余裕なのでこのまま進みます。
ここからは小さな石のゴロゴロした登山道を進みます。
一歩一歩進んでも、砂利で歩きにくく、半歩ずり下がってしまいます。
雪山は、アイゼンを履いて直登するのみ!
でも夏道は足の置き場も考えなければいけないし、植物を傷付けないよう登山道をジグザグに登るので、時間もかかるし体幹もブレて疲れ易くなります。
それでもTシャツで登れて、装備も軽い。身も心も軽やかで気持ちよく登れます。
冬から夏に、山も自分の身体も変化する時期ですね。
周囲を見渡すと、ハイマツの緑の絨毯に所々残雪が模様を作っています。
穏やかな稜線の向こうから雲が登って、低空を燕やイワヒバリが踊っています。
眼下にも青い池が点在し、北アルプスの他の山と違った魅力が詰まっています。
また雪渓が現れました。
再度アイゼンを履きます。
先週は積雪の情報があったため、12本爪のアイゼンを持ってきてしまいましたが、軽アイゼンで良かったですね。
おすすめは、マウンテンDAXのやつ。爪の摩耗の強さと、装着のしやすさがポイントです。現在はイワタニが販売しています。
夏でも雪渓のあるルートや、秋口の急な雪や凍結にも、お守りとして持っておくと安心です。
12本爪を持つより軽量化にもなりますし、12本爪の寿命も長くなります。
帰ったらまたアイゼン研がなきゃなぁ。
トラバースも軽い日帰り装備だと安心です。
いつも思うのですが、見えているピークはなかなか近づきませんね。
一歩一歩。息も上がるし汗も吹き出しますが、何故かテンションが上がります。
理由はやっぱり景色の良さかな?
ここからは山頂まで砂利道のようなのでアイゼンを外します。
少し進むと、朝日岳です。
朝日岳の標高は2,975m。
右手眼下には権現池があります。
池の淵に沈んだ雪が青く光っています。
頂上直下の鞍部で荷物をデポする方も見受けられます。
私には大切な食料がございますので、丁重にこのまま担がせて頂きます(笑)
ピークの鳥居が近づいてきます。
鳥居のちょっと左下にあるのが売店です。
所々浮石がありますので注意しながら進みます。
頂上売店は半分雪に埋まって、まだ営業いていません。
もうちょい!
やった~♪登頂です。
朝日岳からは10分。
麓は気温が高いのか、ガスがぐんぐん上がってきます。
汗が冷えると寒いので、ソフトシェルを羽織ります。
お社の裏のスペースでちょっと早い昼食です。
お湯を沸かして、インスタント味噌汁。
熱湯を山専ボトルに入れてくれば良いのですが、家にはハンパな残量のガスがたくさんあるので、日帰り山行の機会に使い切ります。
そして、ゆで卵とのり巻き。
流れる雲や、ガスに見え隠れする摩利支天を眺めて、いつもよりゆっくり過ごします。
肩の小屋から東側の大きな雪渓はBCスキーヤーがたくさんいます。
みんな気持ち良さそうにシュプールを描いています。
いいなぁ。今度はスキーを担いで来たいなぁ。
下山
1時間以上山頂で過ごし、名残惜しいですが下山です。
岩の道は、身体がまだ冬山モードのせいか、膝のクッションが上手く使えません。
それでも摩利支天や大黒岳の姿を見ながら楽しく進みます。
雪渓はアイゼンなしで進んでみますが、気温が上がり雪面がずぶずぶでバランスを崩しやすい。
落石発生
少し進むと「ラーク!」の声が!
咄嗟に上を見上げるとバスケットボール程の石がこちらに転がってきます。
急いで避けながら私たちも「ラーク!」と叫びます。
私たちの真横1m程をかすめて下に。
雪渓の下からはたくさんスキーヤーが登ってきます。
石は雪面に沈むことなくごろごろと回転しながら加速しています。
みんな避けることができ、石は人のいない谷に吸い込まれていきました。
一気に全身の力が抜けます。
雪解けの落石の怖さを目の当たりにしました。
気持ちを引き締めて進みます。
肩の小屋周辺でものんびり休憩しているお客さんがいます。
これだけ行動時間の短いルートでは、ゆっくり山を堪能することができますね。
ここからはあと二箇所雪渓を超えます。
この時間から登ってくる方も結構いますので、雪渓トラバースのすれ違いは慎重に譲り合います。
アイゼンを履いた方が安心ですね。
コロナ観測所の分岐まで戻ってきました。まだ13:00なので、アイゼンを乾かしながらのんびりすることに。
お昼寝するのに丁度良さそうな岩を見つけ、横になります。
そして得意技の短時間熟睡・・・(笑)
目を閉じると、太陽が雲に隠れたり、風が吹いたりするのがわかります。
イワヒバリの綺麗な歌声。
気がつくと魚肉ソーセージをかじりながら不機嫌な表情のパートナー。
勝手に寝てしまった私を見て「やれやれ」とでも言いたそうな感じで両手を上げています。
魚肉ソーセージが葉巻に見える。パートナーの顔がロバート・デ・ニーロに見えます(笑)
きっと怒っているに違いない。
アイゼンが乾いたところで進みます。
雷鳥
少し進むと「ゲケケケケ~」とおなじみの鳴き声が!
声の方に目をやると、3羽の雷鳥が空中戦を繰り広げています。
急いで近づくと、オス2羽、メス1羽。
この時期は縄張り争いが激しくなるので、その場面のようです。
戦いに負けてしまったらしきオス雷鳥。
遊歩道で落ち込んでいます。
「何見てんだよ~!」
すっかり夏毛になっています。
まださっきの2羽が気になるのか、ハイマツの茂みを探索しながら消えてしまいました。
遊歩道にも落石跡がありました。
畳平到着です。
距離も短く、簡単なルートでしたが、かなり満足感の高い楽しい山行でした。
まとめ
雪山から夏道歩きに感覚を戻すのには丁度良い山だと思います。
雪渓歩きに慣れていれば、危険ヶ所も少なく、歩行時間も短いので、はじめて北アルプスに登りたい方や、3,000m峰にはじめてチャレンジしたい方にもおすすめの山です。
それでも山は山。装備は万全にしないと危ないと思います。
ルートは是非、富士見岳を経由するのをおすすめします。
畳平まで戻って余裕があれば大黒岳、魔王岳も30分かからず下りて来られますのでおすすめです。
夏になれば一面のお花畑や、点在する池の水面に映る峰々等、さらに見所の多い素敵な山になると思います。
乗鞍岳、また来るよ~!